見るよ 2
「この一件から退いても構わない」
デジタルカメラ内に保存された動画を見ると宣言した僕に久瀬は躊躇しつつ、電源を入れ始めた。
「神代は見なくてええんやで。俺が巻き込んだけやし。この件について深追いする必要なんてあらへん」
やめるなら、離れるなら、それは今だと久瀬は僕の意思を確認する。
僕は首を横に振り、「見る」と応えた。
見る、と応えたのは漠然とした罪悪感からだ。
誰に対して、何に対してなのか、様々なことが積み重なって僕の中に巣食う罪悪感を軽くしたかった。
カメラ内に保存されていたデータには古い順に撮った映像が並べられていた。
関係のないものは飛ばし、最新のデータが表示されたページの日付けを確認していく。
「………あった」
内心で削除をされているのではないかと焦ったが、それらしいものを見つけることができた。
「じゃあ、押すよ」
僕が頷くの見て、久瀬は再生ボタンを押した。
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楽しそうに談笑する複数の男女が廃墟の一室に集まっている。
おそらく心霊スポットとして有名な元動物病院の中なのだろう。
暗い室内は待合室で時々照らされるポスターには、犬や猫の予防接種やドッグフードなどボロボロの動物が映った。
カメラが映している中央には数人ほど集まっており、何か準備していた。
室内にあったガタついた棚を起こし、A4くらいの紙を置いた青年は周囲を見回すと口を開いた。
「では、はじめましょうか」
青年の一声にみんな一斉に静まり、虫の声がやたら大きく聞こえた。
「順番に、三人でやりしょう」
青年が二人に声をかけ、棚の周りに輪に立つ人さし指を棚の上に置かれている紙を指すように乗せた。
「くるかな?」「どうなるだろ」「カメラ、ちゃんと撮れてっかな?」などの囁き中で青年逹は呼んだのだ。
「『こっくりさん』、『こっくりさん』……お出でくださいましたら、『はい』へ」
うわぁ、と口から漏れ出していた。
依頼者からこんなことをやっていたなんて聞いていない。
廃虚化した動物病院内を探索をしていただけ……どこがそれだけだ。
しかも、元動物病院でやったのは、『こっくりさん』だとは………。
一瞬、隣に視線を向ける。
デジタルカメラを同じく覗き込んでいる久瀬は不機嫌そうに顔を顰めていた。
「うそ、動いた」「マジかよ…」「誰だぁ?動かしてるやつ」「なに質問する? 誰から?」「じゃ、あたしから~」と他愛のない会話と質問、『こっくりさん』からの回答を繰り返した彼らは、周りに立ち込め始めていく靄に気付かない。
ザザッ…ザザザ…と映像が乱れてく。
ザッ、と激しいノイズと共に映像と音声が途切れ黒くなったと思えば、喧騒と一緒に乱れつつも映像が入ってきた。
先程までの楽しそうな雰囲気とは一転して悲鳴と逃げ惑うような声と外へ出ようとカメラの方へ向かってくる人の陰。
ガシャリと何かとぶつかったカメラは確度を変え風景を映している。
「そんなはずじゃなかったんだ、そんなはずじゃ……」
逃げ遅れた男の後ろ姿、その男が見つめている先には、宙に浮く揺れる二つの細い足とヒラリヒラリとスカートが靡いていた。
男の声がフッと掻き消されたところで動画の再生は終了した。
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
また、それだけではなく作品にポイントやブックマークなどもしてくれてありがとうございます!!
このご時世ですので、時間に余裕があったり、逆に忙しくなったりしているなか、私が書く物語を読んでくれる方がいて、とても嬉しいです。
まだ、物語は続きますので、お付き合いいただければ幸いです。




