お隣の国が大変なことに…2
「ジュノ!どこ行っていたの?」
「ジュノ」
アルトとシンシアが駆け寄ってくる。
どうやらやっと貴族達の包囲網から抜け出たらしい。
「いやーちょっと変わったお嬢さんを見つけちゃって」
「ジュノ?」
シンシアちゃんがふくれっつらをして、オレを下から睨みつけている。
いやーこの角度、見えるんだけど、ちょっと露出激しいんじゃない?
けっこう大きめのぷにっとしてそうな双丘が腕を組んでいる事によって強調されて、男なら、いや女だって目が吸い寄せられる。
「お、怒ったシンシアちゃんもか、可愛いね」
「もうっ」
「で、どうしたんだ?」
「いやー、何かはじまっちゃって」
アルトとシンシアの視線の先を追うと、何だか人垣が出来ていている。
貴族の令嬢らしい数人と、それと対峙する一組のカップルがホールの中央に立っていた。
「あれ、第二王子のミケーネ・ハン・ラドトスじゃないか」
アルトが男の方の名前を教えてくれる。
女の方はオレに見覚えがあった。
さっきの自損事故ちゃんじゃん。
王子に張り付いてふるふる震えているふりしてるけどふりっぽいよね。ふりだよね。
ミケーネ王子はそんな彼女を大切そうにぎゅっと抱きしめて言った。
「ダリア・オーラン!お前との婚約は破棄する!」
え? 何がはじまった?
「数々の彼女に対する悪辣なしうち、この俺が気づいていないとでも思ったか」
「私、何のことかわかりませんわ」
いやー 痴話げんかですか?こんな他国の賓客がいる場でやるこっちゃないですよね。
ラドトス王室の恥になっちゃうよね?
「先程もそこの取り巻きを使って、彼女にワインをかけるなどの嫌がらせをした挙句突き飛ばすという暴行を働いただろう」
いやいや先程のって完全に彼女の自損事故だったよ。
事故っていうより当て屋なみに自分でやってたよ!
王子は目を閉じ、そしてキッとした表情で令嬢をねめつけた。
「そのように卑怯な輩、国母に相応しいとは思えぬ。ゆえに今、ただ今をもって婚約を破棄する」
「え?第二王子が王様の後継者なの?」
「いや、あそこ、王様の横で口開けて呆けてるのが第一王子で次の王様のはず」
「いやー。漏れちゃったんだろうね。心の底に仕舞っておかなくちゃいけないような願望が思わず」
「国母の意味を知らないってないよね?」
「あれ、お兄さんの婚約者だとしたら第二王子が勝手に破棄とか出来ないよね」
「ダリア様はミケーネ様ご本人の婚約者です」
「…馬鹿王子で面目ない」
「あー察し」
他の勇者パーティの皆もいつの間にかオレ達の周囲に集まってきていて、第二王子カップルの方を気の毒そうな、残念な者を見る目で見ていた。
「わが兄ながら、毎度毎度…」
その言葉に振り向くとオレ達を船着き場まで迎えにきた方の王子が頭痛をこらえるように頭に手をやって首をふっていた。




