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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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991 クマさん、イベントに参加する 初日 その1

 湖の上では自由にボートが走る。

 話を聞くと、ボートの先端にある魔石が時間を計るらしい。スタートラインをこえると魔石が反応し、魔石の数字が動き出すとのことだ。そして、ゴールラインをこえると魔石の数字が止まるとのことだ。

 なので一周するたびに係の人に魔石を確認してもらう。

 そして、2回タイムを計り、よかったタイムのほうで本戦に出られるか競う事になるとセレイユが説明してくれる。


「あら、ユナもここにいたのね」


 湖を走るボートを見ていると、子供と言われても勘違いしてしまいそうなマーネさんがやってくる。


「マーネさんも見学?」

「ええ、自分が作ったボートの確認ね。今回は誰かさんのせいで、時間に追われて大変だったからね」


 わたしを見ながら言う。


「誰かさんって、わたしのこと?」

「それ以外、いると思っているの?」


 いないから、反論もできない。

 マーネさんは笑うと、わたしの隣に座る。


「あっ、お姉ちゃんだ」


 シュリが指差すほうを見ると、ボートに乗ったフィナがいた。

 予選はスタートが自由なので、スタートラインから離れた方がスピードが乗っているので、タイムが出やすい。

 簡単に説明すると、スタートのラインを、時速1キロで通過するよりは、時速40キロでスタートラインを通過した方が速いって事だ。

 フィナがスピードを出して、スタートラインを越える。

 そして、ボートは離れていく。

 あとは、戻ってくるのを待つだけだ。


「状況が分からないとつまらないね」


 カメラがボートを追いかけたり、ところどころにカメラが設置してあって、状況が分かるわけでもない。

 戻ってくるのを待つだけだ。

 でも、わたしの言葉にセレイユが答える。


「本戦では実況される予定です」

「実況?」

「学園に高い塔がありますよね」


 わたしは学園のほうを見る。

 一本の高い塔が見える。


「あの塔の上から見て、ボートの状況を説明します」

「あそこから? 見えるの?」

「もちろん、望遠鏡を使いますよ」


 それなら見えるかも。


「でも、状況って、声が届くの?」

「音声拡大器を使います」


 言葉通り、声を大きくする拡声器みたいなものらしい。

 風魔法の応用かな?


「これは、お父様とマーネ様の考えです」

「当時はなにをしているか分からなくて、盛り上がらなかったからね」


 マーネさんはしみじみと言う。


「応援したくても、どこを走っているかも、順位も分からない」


 確かに、そうかも。

 応援している選手がどの順位を走っているかを、観客がわかることは重要だ。

 リアルで映像は見ることはできないけど、ラジオと思えば問題はない。

 わたしはラジオは聞くことはないけど、たまにお爺ちゃんの家にいくと野球を聞いているのを見たことがある。

 あと、動画サイトでもスポーツを実況している人もいた。

 あれも一種のラジオみたいなものだと思う。

 そう考えれば、映像がなくても実況もいいかもしれない。

 この世界にリアルタイムの映像を望むのは無理がある。

 百歩譲って、録画する魔道具ぐらいがせいぜいかも。


 そんなことを考えていると、ノアとミサも出てくる。

 ボートを発進させて、スタートラインを越えて行く。

 3人とも頑張れ!

 ちなみに予選を突破した人は学園の校庭に名前が張り出されると言う。

 発表は集計が終わり次第だという。

 レースゲームとかでは、リアルタイムで順位が出るけど、流石にリアルタイムで結果が出るのは難しいみたいだ。


 そして、子供の部が途中だけど、拡声器で一般参加者に集まるように呼びかけが始まる。

 ちなみに、学生の部と強者の部は午後となっている。

 子供たちが湖から消え、一般参加者たちがボートに乗って走り出す。

 そして、しばらくするとフィナたちがやってくる。


「戻りました」

「おかえり」

「疲れました」

「緊張しました」

「どうだった?」

「う~ん、上手に走れたと思いますが、分かりません」

「わたしもです。みんな速度が同じなので、前に走っているボートの距離も縮まりません」

「そうなりますよね」


 セレイユはフィナたちの話を聞いて、考え込む。


「お父様も、その辺りを悩んでいました。一般の部もそうですが、子供の部をこのままにするのか、加速を取り入れるのか。来年の課題と言っていました」


 面白くないと参加者も減るし、見ている人も面白くない。

 だからと言って、子供の部に加速を取り入れるかの問題がある。


「わたしもセレイユ様のお父様に進言しましたが、難しい顔をしていました」


 ノアは自分が加速するボートに乗りたいから、進言したみたいだ。

 子供でも、危険なスポーツをする子はいる。

 スキーのジャンプだって、着地に失敗したら大怪我をする。

 トランポリンや鉄棒などの体操だって、1つ間違えたら怪我をする。

 自転車競技も、転倒すれば怪我をする。

 野球だって、ボールが当たることがある。

 サッカーもぶつかり合う。

 子供だって、危険なスポーツをしている。

 だからと言って、なんでもかんでも危ないからと言って禁止にするのはよくない。

 線引きが難しいところだけど、怪我を恐れたら成長はしない。

 この世界の子供たちだって、冒険者になるために剣やナイフを握る子供もいる。

 フィナとシュリだって、ナイフを持って解体をしている。

 でも、それらの危険なことを行うときは、しっかりした大人が傍にいる。


「いっそうのこと、初心者はお断りにしたら?」


 わたしは少し考えて、口にする。


「断るのですか?」

「誰でも参加させたい気持ちは分かるけど、上手な人と初心者が勝負してもつまらないでしょう」

「そうですが……」

「だから、イベント前にイベント用のボートは自由に乗れるようにして、ランク付けをしたら? 冒険者でも強くなればランクが上がるでしょう。だから、ボートの上達に応じてランク付けをして、Dランク以上が参加ができるとかにするとか? それなら、技量も上手な人が集まって、イベントも面白くなると思うけど」


 初心者や経験不足の人のことを考えるからダメなんだと思う。

 だから、初めから参加を禁止にすればいい。


「えっと、そのランク付けは、どうやって決めるのでしょうか?」

「それは、セレイユたち、イベントを管理する人たちの仕事だよ。コースを回る時間を決めて、その時間内に走れるとか。加速するボタンを扱えるとか。ジャンプ台を使えるとか。渦の上を上手に走れるとか。それらのランクを決めて、一定以上のボート操作ができる人だけを参加させる」


 それを考えるのはイベント主催者の役目だ。


「でも、それでは初心者を見捨てることになりませんか?」

「初心者のための講習会や練習会を開いたりしてあげればいいよ。それに無理にイベントに参加する必要はないと思うよ。それを子供にも適用させれば、子供でも加速付きのイベントを行うことができるでしょう」


 子供だって、練習さえすれば加速ボートは乗れると思う。


「ただし、練習するときはボートの運転が上手な大人と一緒だよ」

「確かにそうですね。お父様に相談してみます」


 どうするかはセレイユたちが決めることだ。


「そんなアイディアを思いつくなんてユナさんは凄いですね。わたし、セレイユ様のお父様を説得する方法が思い付きませんでした」


 ノアは子供の部でも加速するボートが乗れるようにセレイユの父親に頼んだらしいけど、良い返答は貰えなかったらしい。


「多分、ノアはセレイユと同じように初心者も参加させてあげようとする優しさがあったからだと思うよ」


 わたしと違って、弱者を切り捨てる考えがなかったってことだ。

 なんでも切り捨てるのはよくないけど、別の方法で救ってあげればいい。

 それに、まだセレイユの父親を説得できたわけではない。

 あくまで、セレイユが相談してみるって話だ。


「それじゃ、わたしも参加できる?」


 シュリが尋ねてくる。


「年齢は……」


 わたしはセレイユを見る。


「申し訳ありません。わたしの判断だけでは決めることはできません。ですが、ユナの案を採用すれば、年齢が低くてもボートの扱いが上手なら参加ができるかもしれません」

「本当?」

「お約束はできませんが」


 こればかりはセレイユの一存で決められることではない。


「シュリ、セレイユを困らせちゃダメだよ」

「……うん。ごめんなさい」


 シュリは素直に謝る。


「でも、そんなに慌てなくても、大きくなれば、乗れるようになるんだから、慌てなくてもいいと思うよ」


 寝ていても、遊んでいても、仕事をしていても、なにもしていなくても時間は進む。

 成長したくないと思っても、人は成長をする。

 これは、誰にも止めることはできない。


 そして、午後になり、わたしとセレイユが参加する学生の部の予選が始まる。

 フィナたちに「頑張って」と見送られ、水着に着替え、ボート乗り場に向かう。

 受付を開始したときに番号を受け取り、その順番になる。

 わたしはセレイユに任せていたので、セレイユと番号が繋がっている。


「まずは予選だね」

「そうですね」

「結局のところ、どのくらい集まったの?」

「女子だけなら、50人ほどです。各学年から15人ほどが参加しています」


 学園の人数がわからないので、多いのか少ないのか判断はできないけど。20名は予選落ちになるってことだ。


「ユナ、予選落ちしないでくださいよ」

「約束はできないけど、頑張るよ」


 やるからには負けたくはない。

 わたしとセレイユは番号が呼ばれ、ボートに乗る。

 予選のスタートは自由なので、一番速度が乗った状態でスタートラインを越えるのが一番いい。

 わたしはボートに乗るとスタートラインから離れた位置に移動する。

 セレイユも同様の作戦みたいだ。

 ちなみに、わたしとセレイユは作戦については話し合っていない。

 セレイユは学園の友達と作戦を練り、わたしの打倒を誓っているとか。

 わたしのほうはフィナ、ノア、ミサを交えて、どのようなコース取りをするのか、話し合った。

 断然に有利なのは多くの情報を持っているセレイユだけど、わたしは発案者でゲームやスポーツの知識がある。

 セレイユに情報を共有しましょうか。と尋ねられたけど、丁重に断った。

 相手の作戦を知った戦いほど、つまらないものはない。

 もちろん、負けるのは悔しいけど、相手の作戦に勝つことが一番楽しく、嬉しいことだ。



やっとレースが始まりました。

こんなにダラダラ書くはずではなかったのに。


※投稿日は5日、10日、15日、20日、25日、30日にさせていただきます。31日で1日ずれると、投稿日を忘れそうになるため。

※新作、「殺された魔法少女、異世界に行く」の連載を始めました。

お時間がありましたら、こちらもよろしくお願いします。

くまゆるとくまきゅう、出てきます。(名前が同じだけのクマです)


※無料マンガのピッコマさんで、「くまクマ熊ベアー」のピッコマくじが始まります。フィギュアやぬいぐるみもあります。

初のコミカライズ版のグッズです。

開催予定は2026年11月18日11:00〜です。

※現時点では内容は公開されていませんが、公開されましたら、X(旧Twitter)や活動報告にて、報告させていただきます。


※7月3日にくまクマ熊ベアー外伝~ユナのよりみち手帖~ 5巻が発売しました。

※6月5日にくまクマ熊ベアーのコミカライズ14巻と文庫版13巻が発売しました。

店舗購入特典もあります。詳しいことは活動報告にてお願いします。


PASH! BOOKS 10周年記念 POP UP SHOPにて販売されましたグッズがFuuuuオンラインショップにて販売が開始されました。

気になるグッズがありましたら、よろしくお願いします。

※毎月28日は【ふたばの日クーポン】の日らしく、クーポンコードを入力すると10%になります。

クーポンの配布方法:購読者にメールでクーポンコードを配布するそうです。

くわしくはFuuuuオンラインショップにて、お願いします。


※PRISMA WING様より

くまクマ熊ベアーぱーんちのフィギュアが10月に発売予定です。


※22巻の発売の情報はもう少しお待ちください。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
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リアルのレーシングカートでは魔法がなくいろんな安全制限もある状態でみんなが楽しく遊ぶことができるので、ゲーム機のようなギミックがなくでも楽しくなる方法はあると思います。
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