【#035《温泉へ迎え!! 後編》】
「う~ん……」
「グル?」
良夜はラ・フェイスの屋根に登って、星空と夜風を堪能しながらドラゴンの事を考えていた。
ドラゴンはドラゴンで、良夜の事を見て、きょとんとしている。ドラゴンの大きさは、屋根に登っても尚余りうる巨体で、今後着いて来るとして、その巨体はどい隠す?
速く地球へ帰るためには、情報収集が必要となる。となれば、あらゆる人間や交通機関も利用することになるだろう。
宿泊施設だってそうだ。ラ・フェイスはたまたま受け入れてくれたが、普通なら飼い主共々入店禁止の筈……、それは魅紅が言っていたから間違いないだろう。
聞く限りでは、龍種と言う存在が非常識に入るレベルらしい。非常識な世界から見た非常識とか、もはや普通の世界の普通な一般人な良夜には、荷が重すぎるのだ。
そんな悩みを察しているのか、ドラゴンもどこか不安そうだ。
これも魅紅から聞いた話だが、ドラゴンは知能が非常に高く、その高さは人類に匹敵するとも言われている。
「人間の言葉も分かると言ってたよな……。なあ、お前は俺なんかを認めてくれているようだが、俺はそんな立派な人間じゃないんだぞ?」
「グルル!」
ドラゴンは何かを確信しているかのような表情で鳴くが、良夜にはその言葉が分からない。
「せめて、お前の言葉だけでも解ればな……」
「グル……」
そんな時だった。裏山の方から、小さいが確かに爆発のような音が聞こえた。
「何だ!敵か!?」
「違うよ、早乙女君」
庭からユウが話し掛けてくる。
「風代か……違うって、どういう事だ?」
「覗きだよ。伊座波君達が、宰様達が入っている温泉を覗きに行ったんだよ。さっき渕垣君の気配が消えたから、多分迎撃されたんだね~、我らが宰様か、君のとこのお姫様にね」
「命知らずにも程があるな……」
「それより早乙女君、どうかな?一緒に話しでもしない?互いに別世界の住人何だし、楽しいと思うよ?」
「悪くないな。ちなみに質問に答えられなかったら、罰金な。そして俺が答えられなかったら、慰めとして俺に課金で」
「何で!?それ、どうあっても僕のお金が減るじゃないか!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ユウが早速、良夜に弄られていた頃、ケイとリュウは何故か裏山の山頂まで来ていた。
「ハァ……ハァ……!中央部に行こうとしていたのに、何で天辺まで来ているんだ……!」
「ハァハァ……し、仕方ないだろ……中央辺りに異常なまでのトラップが仕掛けてあったあげく、そのトラップを交わしていったら、いつの間にか山頂まで追い込まれてたんだからなぁ!」
「確かに!と言うより、あの凶悪なトラップは何なんだ!?地面が爆発したり、飛び道具が連射したり、終いには大爆発する飛び道具まで飛んで来たぞ!」
「何らかの武器だろうが、見たことがなかった。相当高価な武器なんだろう!武器は魔力を使わないだけに察知が難しいから厄介だ!」
「仕方ない!能力を使う!」
「!? それじゃお前だけしかたどり着けないだろぉ!」
「……確かに、リュウの能力は回避には不向きだな」
「だろ?」
「それが何だ!」
「えぇぇぇぇえ!?」
「ぶっちゃけ言おう!俺が楽しめれば、それで良い!」
「なぁ━━━!」
「希少能力“閃光光来”発動!さらば!」
ケイは目にも止まらぬ速さで、山の中を駆け抜けた。あらゆるトラップが襲い掛かるが、光速移動をするケイには当たらなかった。
残されたリュウは、一人で危険地帯を歩くのも無理だと思い、山頂に取り残されてしまった。
「ふふふふ!多少の犠牲はあったが、間もなく中央部!至宝の光景は俺が頂く!」
ついに変態は、温泉の入り口へ着いてしまった。
直ぐに気配を消して、暗殺者のような足取りでドアへくっつく。そしてそぉっとドアを開けると、そこには有り得ない光景があった。
「な、何!?」
ついドアを開けて、大声を出してしまうような光景━━━それは、誰も居ないであった。
「まさか……遅かったのか?」
「いや、ちょうど良かった」
ゾクッと後ろから人の気配がする。ケイは恐る恐る、後ろへ振り向くとそこには浴衣を来た魅紅・宰・ミイシャの姿があった。
「浴衣……だと!?」
湯上がりなのだろう。艶々(つやつや)しい髪から湯気が立ち上っていて、浴衣の上下からは僅かに下着ラインが見えていたせいか、ケイはこれはこれで有りだと思った。
「中々賑やかだったぞ。爆発音や鐘のような音は、見事に風情をぶち壊してくれた」
「それが覗きが理由だなんて……中々面白いわ」
「あぅぅ……」
宰と魅紅は笑っていたが、ミイシャは何かに凄く怯えて、ドアの陰へ隠れてしまっていた。
「そんな貴方に、私達から細やかなお礼よ」
魅紅は紫煙の鎌「デュゴス」を、宰は大刀を装備していた。
「あ、お、お礼なんて大丈夫……です!」
『却下』
魅紅は紅炎の刃を、宰は斬撃波を放ち、それが合体して紅炎の斬撃波となってケイを狙う。
「が、合体して━━━って、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
━━━この日、三名の気配が消えた。
『to be continued』




