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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
第二.五章 旅立ち前夜編
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【#034《温泉へ迎え!! 前編》】

魅紅・宰・ミイシャの女性陣が温泉を堪能(たんのう)している頃、彼女達に近付く人影があった。


その人影とは、リュウ・ケイ・シンの三名だった。彼らはケイの指揮の元、裏山の入口部分に集合していた。



「声をあまり上げるな。静かに接近するんだ」


「宰は気配の察知に長けているからな……」



ケイの忠告にリュウが同意してきた。



「この作戦(オペレーション)は重要だ。これの合否によっては、今後の闇裂く光とお姫様方の同盟関係に亀裂が走りかねない」


「わかっている。これは決して覗きではない。宰が天塚のお姫様と揉めないか監視する為だ」



リュウとシンの理解に、ケイは頷く。




「何か問題があれば、直ぐに助けに入ると言うことだな」


「二人とも良くわかってるじゃないか。その通りだ!それではオペレーションを開始する!」


『おう!』



この時の三人の心の中はこうである。

ケイ(監視と乗じてお姫様の裸を見る!)

リュウ(宰のあられもない姿を見たい訳じゃない……筈だ?)

シン(ミイシャちゃんも入ってるんだよな~)

である。最早(もはや)、ただの覗きであった。最後のは特に危険な。


ちなみにユウは覗き(オペレーション)に誘われたが、女の裸に興味がないと言う事で参加せず、カイは「……くだらねぇ……」と一別(いちべつ)し、良夜に関しては止められそうと言う事で、誘いすらもなかった。


だが、それが懸命であった。

━━━なぜなら、覗きに行った三人は知らなかったからだ。

なぜ温泉が裏山の中央にあり、そこまでの道が道とは言えない獣道のみなのか━━━と言うことが。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



女性陣が湯船に浸かって5分が立った頃、彼ら覗きチームは、獣道を警戒しながら登っていた。その静かさかつ迅速さは、まさに賞金稼ぎとして(つちか)った熟練の技だった。



「敵の気配は無し、進むぞ」



先頭を走り指示をするケイ。それに従い、列を乱さず進むリュウとシン。順調に中央部へ近付いていた。


その時だった。


シンが足を踏み出した瞬間、いきなり人一人が入るぐらいの魔法陣が浮かび上がる。そこから光の紐が出現し、シンの体を拘束した。



「え?え?なっ……!」



狼狽(うろた)えるシン、驚くリュウ、冷静に分析するケイ。



「設置式捕縛魔法陣……!なぜレジストしなかった!?」



ケイの叱咤(しった)に、シンを焦りを含んだ様子で答える。



「したよ!レジストした上から捕縛されたんだよ……!」


「バカな!レジストごと捕縛だなんて……!」



今度は空に魔法陣が出現した。それも多数だ。



「こ、これは……!」



冷や汗が流れる。空一面に現れた数十に渡る一つ一つの魔法陣から、フライパンが出てきた。

心なしか、そのフライパン全てがシンを狙っているように見える。

当然、この事はケイやリュウは勿論、シンですら気付いている。



『…………』


「な、なあ……俺達……仲間だよな?」


『……』



シンの力を失った言葉に、ケイとリュウは無言で応える。



「なあ……何とか言ってくれよ……仲間だろ!?今まで一緒に死線をくぐり抜けてきた同士だろう!まさか、このまま置いていく何てことはないよな?なあ!伊座波ぃ!倉崎ぃ!」



疑心暗鬼になり、表情が不安と恐怖で崩れたシンに対して、ケイとリュウは優しく微笑む。



「……今思えば、俺達が出会った時もこんな感じだったよな。まだお前が闇裂く光に入る前、メンバーは宰とリュウしか居なかったよな。オレ達三人が紛争地域に任務で出向いていたら、死んだ魚のような眼をしたお前に出会ったんだよな……。あの時のお前は凄かったんだぞ?生気のない目の癖に、殺気だけはむき出しで、ことあるごとにオレ達に攻撃してきて……その度に宰やオレが押さえ付けてたんだよ。それから任務等に無理矢理連れて行って、少しでも鬱憤(うっぷん)を解消してもらおうと戦う現場を与えたり、共に寝食過ごしている内に今ではだいぶ喋るようになったよな……まだ口数も少ないし、不器用なとこもあるけど、お前は良い仲間だよ!」


「……あの……」



シンが口を挟む。



「どうした?」


「その話し一個たりともあってない……つか、俺らの出会いは、客と商人の関係からだから」


「…………」


「…………」



シンとケイの間に、長い沈黙が(おとず)れる。



「………………あ。今の如月との話だ」


「失礼にも程があるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!そぉもそも!今の過去話が俺だったとして、このタイミングで話す事か!?意味合いが理解出来ん!つうか助けろ!!」


「……、……と言う事でお前の死は無駄にはしない!」



シュッとケイは瞬脚で立ち去った。



「どういう事だよ!?ってか、裏切り者ぉぉぉぉぉぉ!」



シンは涙目だった。



「そ、そうだ、倉崎、倉崎は俺を見捨てたりしないよな!?」



と、リュウの方へ振り替えると、そこには誰も居なく、代わりに卵が置いてあった。


ついに涙が溢れてしまった。



「ははは……そうだよな……伊座波が話し出してから、何の反応もしてなかったもんな……で、あの卵はなに?餞別(せんべつ)って事か?フライパンいっぱいあるから料理でもしていろと?」



ついにフライパンは全て、シンに目掛けて射出された。



「だがな!最後に一言言わせて貰うぞ!俺は身動きとれないから、その位置の卵取れねぇんだよ!ちくしょう━━━!」



カン!カカカカカカカカカン!カァ~~~ン……



裏山中に連続で、寂しい音が鳴り響いた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



入浴中の魅紅達の所まで、シンの散り際の音が届いていた。



「何の音?」


「鐘でも叩いているような音だったな」


「鐘なんて無い筈ですけど……」



魅紅・宰・ミイシャは、音が気になりはしたが直ぐにどうでも良くなった。



「にしても気持ち良いわね~」


「うむ。肌荒れ防止にもなりそうだな」


「はい、実際になりますよ~」


「素晴らしい」



三人は穏やかに入浴を楽しみ出した。



『to be continued』

 

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