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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
第二.五章 旅立ち前夜編
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【#033《ラ・フェイス裏山の温泉》】

良夜にとって三日前より精神的披露を負った今日の夜、魅紅と宰は温泉へ向かっていた。



「でも驚いたわ。温泉まであるなんて」


「確かにな。こう言っては何だが、ラ・フェイスは普通の宿屋に比べたら、かなり小さいから浴室がある程度だと思っていたのだが……」


「ふふ、よく言われます」



魅紅と宰を温泉まで案内しているミイシャが、普通の笑顔で同意した。



「でも、うちの温泉はサイコーですよっ!血液活性・魔力調和・美肌効果等の効能があり、眺めも素晴らしいものですから」


「美肌効果!?」


「魔力調和……だと?」



御三家・天塚一族と名家・園臣家のお嬢様が食い付いた。普通に考えたら、これだけでラ・フェイスは世界的に有名になるのだが、今は失踪した一族と弾圧された名家なので、逆に悪い噂が付いてしまう。



「にしても、随分歩くのね……」


「良い鍛練になるな」


「すいません……宿屋の広さ的に、温泉を作るのは難しくて、こうして離れた位置にある別土地に作るしかなかったんです」


「あ、別に文句を言っている訳じゃないのよ?気を悪くしたらごめんなさい」


「大丈夫です。わかってますっ」


「しかし、先ほどから獣道のような所をひたすら上がっているのだが……その温泉は山頂にでも作ったのか?」



ミイシャの案内は、宿屋を出てから裏にある山を登って来ていた。



「山頂までは行きませんが、山の中央までは登ります……大体10分ぐらいは掛かっちゃいますが」



すると魅紅と宰はある事に気付いた。



「なんか暖かくなって来ていない?」


「ああ、と言うより地面が熱を持っているようだな」


「はい、この山の中央下にはマグマ溜まりが作られていて、その熱が地面に染み込んでいるんです」


「ひょっとして、今から行く温泉って……」


「はい!この地熱で半日かけて暖めたものです!」


「凄いわね……水とか誰が運んでいるの?」


「お母さ━━━女将(おかみ)が魔法で1日2回のペースで補給しています」


「水気のない土地で、水の性質を使うのか……大した魔力量だな」


「ありがとうございます……あ、着きましたよ」



ミイシャがそう言って、道の先を指差して、そっちを見るとそこには絶景な世界が広がっていた。


先程まで林の中だったのに、そこを抜けると直径20m程の平野が広がっていて、周りには竹で作られた壁で囲まれていて、入り口と目の前の山の外だけが吹き抜けになっていた。


絶景なのは、その山の外の光景で、かなり遠くまでの街が見通せて、その街明かりや月等が最高に綺麗な絵を作り出していた。空を見れば満天の星空が広がり、どこを見ても光の芸術が目に焼き付く素晴らしい所だった。


魅紅と宰は胸打たれたかのように、ドキドキと見惚(みと)れていて、ミイシャの言葉通り最高の光景だった。



「凄く良い所だわ……期待以上よ」


「うむ、素晴らしいの一言に尽きるな……」


「ありがとうございます!それではごゆっくりしていって下さい」



ミイシャは挨拶をして宿屋へ戻ろうとした。



「あ、待って」


「はい?」


「貴女も入って行きなさいよ」



一瞬、パァッ♪と嬉しそうにしたミイシャだが、直ぐに本業のことを思い出して首を振った。



「だ、ダメですよっ。私は天塚ご一行様のおもてなしと言うお仕事があるので……」


「まあまあ、固いことを言うな」


「はぅ!いつの間に移動されたのですか!?」



宰の瞬脚(しゅんきゃく)で、ミイシャの後ろへ回り込み、がしっと両肩を掴んで持ち上げている。



「は、放してくださ~い」



両手両足をパタパタさせながら抵抗をしているが、その姿が逆に魅紅の可愛いモノ好きを刺激してしまった。



「ああ~ん、可愛い過ぎよミイシャっ」



魅紅もいつの間にか瞬脚でミイシャの前に移動していて、頬や頭を優しく撫で回しだした。


ミイシャは目をぐるぐるさせながら、為されるがままになってしまい、服を丁寧に脱がされ、そして魅紅と宰も服を脱ぐために、交互にミイシャを捕まえてそのまま温泉へ入って行った。



「これは、気持ち良いなー」


「ホントねー。ミイシャもそう思うでしょ?」


「はい、自慢の温泉ですから……でも、使用人である私が、お客様と一緒にお風呂だなんて……」


「一緒に入るのも、立派なおもてなしよ」



三人は地熱で程よく暖められた、ポカポカの湯船に浸かり、身体も心も暖まっていく。

景色も街の明かりや、夜空の星空や月等を見ていると、精神的にもリラックスしていく。

更には湯船に浮かぶ葉があるのだが、これは落ち葉が入ったのではなく、この山にある特殊な葉で“エレクシアの葉”と言われ、()り潰して作った薬“エレクシア”と言うのを飲むと、(マテリアル・コア)を安定させたり、体内を巡る力を整える効果があると言われている。

ただ、そのエレクシアを作るには、人間の身体の仕組みを把握していて、かつ繊細な作業が必要と言われていて、並みの薬師では作り出すことも出来ないのだ。



「エレクシアの葉が染み込んだ湯船だから、魔力調和の効能があるのね」


「はい!この山にはエレクシアの葉の宝庫ですから、少し贅沢に使わせてもらっています」


「エレクシアの葉って、そんなに高価なのか?」



宰が湯船に浮かぶエレクシアの葉を手に質問してくる。



「希少素材ではあるわね。商品として買ったら、一枚10万ぐらいはするんじゃないかしら」


「そんなにか!?」


「だから、あまり口外しない方が良いわよ?狙う悪人もいるからね」


「そうですね……私もラ・フェイスとこの裏山を悪い人たちに荒らされたくないですし……」


(あれ?でもエレクシア(薬)があれば、良夜の能力も安定するんじゃ……)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



魅紅が良夜の副作用に関して、解決の糸口を見付け出していた頃━━━温泉に近付く複数名の人影があった。



『to be continued』


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