第四十七話
因みに、その黒い光に触ってみたら、気持ちいい感じがした。だけだった。
特に、何があるということも無かった。
曲が終わると、メフィスレスは満足そうにいつも通りの姿で戻ってきた。
「久々に気持ちのいい曲を聞いた」
と、満足そうに言って俺の足元に丸まって寝始めた。
さっきまでは寝そべっていても起きている感じだったのに、今は完全に寝る体勢だ。
なんかもう、色んな事が不思議です。
「綺麗な曲だったね」
ゼンツを振り返ってそう言ってみたら、ゼンツはメフィスレスをガン見していた。
穴が開きそうなんだけど。一体どうした。
誰の行動も、俺には予想も分析も出来ないなと諦めた。
俺が大人しくしていたので、たっぷりと余韻を楽しんだ所で、三曲目が始まった。
次の曲は、最初から楽しそうなウキウキした曲だ。
と、今度は、あっちこっちをウロウロしながら勝手に庭を堪能していたアイッシェンがピョンピョン跳ね始めた。
「今度はおいらの曲だにゃ。分かってるにゃ」
アイッシェンの頭に羽根が生えて、彼もまた空に飛びあがった。
まあ、目の前でデカくなられても、鬱陶しいくらい大きいんだろうから、空に行ってくれるのは嬉しいんだけど。
ただ、そんなに二人して見えない所で大きくなられたら、大きい姿がどんなのか気になってくるじゃないか。
まぁ、それは良いとして、今度の曲は本当に陽気だ。
さっきの冥府の曲とは真逆だ。
アイッシェンの曲と言われたら納得だけど。
――そもそも、アイッシェンってどういう召喚獣なんだろう。
メフィスレスは自分で冥府の番人だとかって言っていたけど、アイッシェンは何も言ってなかったな。
猫であることが俺の中の最重要事項だったので、今まで気にしたことが無かった。
楽し気な曲は、最初からずっと楽し気なままだ。
歌を歌うのは、四人の男達。
歌い上げるというよりは、唸るとか叫ぶとかそんな感じ。
何て言うんだろう。部族の踊りっぽい感じ?
なんか、とにかく楽しそうっていう感じ。
歌詞とかは、何を言っているのか全然分からない。
聞こえるのは、ウッとかオッとかそういう掛け声だけ。
「ねぇ、メフィスレス。アイッシェンて、どういう奴なの?冥府の番人みたいな肩書とかあんの?」
寝ているメフィスレスを起こすのは申し訳ないが、どうしても気になって仕方ない。
「ん?あれは太陽の化身だ」
身体も起こさずにメフィスレスから返答があった。
応えてくれてありがとうなんだけど、太陽の化身?それ、凄くない?
え、何か、だいそれた肩書なんだけど、大丈夫?あってる?
でも、空から降ってきた光が、まさに太陽みたいに輝いていて、納得出来てしまった。
白い光が、まるで太陽の赤ちゃんみたいに輝きながら降り注いでいる。
楽団の上からも降って来ていて、歌っている男達がその光で楽しそうに遊ぶ様子も、この曲の演出のように感じられた。
どの曲も、それぞれに良さがあり、楽しめる曲ばかりだった。
本当に、今日は良い演奏会を聴かせてもらって良かったよ。




