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うむ。なるほど。  作者: たなかそう


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第三十二話

それでも、十日以上過ぎると、どうしても気になって覗いてみた。

部屋の外から、泣き声が聞こえない時を狙ってだ。


赤ん坊は、乳母にタオルで巻き巻きして抱かれていた。それが一番落ち着くのだろう。

まだ産まれて一月も経ってないが、目はちゃんと開いていた。

ただ、目が合う感覚は無い。

まだ視力が弱くて人の顔とかは見えてないらしい。

そう言えば、生後十五日ほどでも、視力は0.01未満とかだったな。

俺も産まれたばかりは何も見えなかったな。懐かしい。


って言うか、泣いてないと天使だな。

いや、なんか皮膚がポロポロ落ちてて汚い感じではあるんだけど。これは正常な新陳代謝(しんちんたいしゃ)だしな。汚くても問題は無い。

匂いはやっぱり、臭いとしか言いようがないが。


「へその緒はもう取れたのか?」


この世界ではへその緒が強力な魔術の媒介(ばいかい)になることがあるらしい。流石は異世界。

一昨日、メフィスレスに聞いた。

どれだけ魔力が無くても、へその緒だけは使えるらしい。

だから、魔力なしで生まれたこの子にとっては、魔術を使用できる唯一無二(ゆいいつむに)の方法なのだ。


「ええ、大切に保管しておりますわ。ただ、取れた場所が少し化膿気味で、お医者様にも見て頂いております」


乳母が心配そうに赤ん坊のへそを見せてくれた。確かに、少しジュクジュクしている。

黄色い膿みたいなのも見えてる。これは、俺が消毒してしまって良いのだろうか?


「俺が治癒魔法をかけても良いのかな?」


乳母が正確な知識を持っているとも限らないので、俺はメフィスレスに聞いてみた。

いや、メフィスレスが絶対正しいとも言い難いけど。

でも、伊達に長生きしている訳じゃないからさ。魔法のことはよく知ってるし。


「難しいだろうな。魔力のない赤子は、他者の魔力に心力を削られるものだ。そなたが、一切の魔力を腹の中に入れずに表面だけを消毒する事が出来るというのであれば、あるいは可能かもしれんが。だが、父親であれば、血の契約をしているのと同義だ。いくら魔力を注いでも問題あるまい」


やっぱ、持つべきものは長生きの相棒だな。

ただ、父親か。


ミームは、いまだに一度も赤ん坊に会いに来ていないらしい。

聞けば、リルのいる離宮に籠りっぱなしだとか。

それほどまでにリルの悪阻が酷いのだろうか。


それにしても、この赤ん坊。

未だに名前すらついてないんだよな。

母親が違うだけで、こんなに待遇に差があるって、何か、信じられないよな。

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