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うむ。なるほど。  作者: たなかそう


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第三十一話

それから、俺も部屋で寝た。爆睡した。

言うても俺はまだ四歳。お昼寝だってするし夜もしっかり眠る、よく寝る子だ。

多分、ぐんぐん育つと思う。


翌日、目が覚めて落ち着いてから赤ん坊を見に行ったら、まだ寝てた。


「ずっと寝てるの?」


抱っこしている乳母に聞いたら、今寝た所ですよと小声で教えてくれた。

確かに、既に疲労感が漂っている。もう何度も起きててんやわんやだったのだろう。

部屋の中では、他の乳母らしき人が禍々(まがまが)しい色の排泄物を片付けている。


しかし、赤ん坊というのは何と言うかその、汚いな。

昨日湯につけて洗っていたと思ったが、髪はまだ血が付いてるんじゃないかという感じでへたっているし、身体のあちこちに白いベタベタしたものが付着している。

手の先とかも、何か、紫色してるし、ちゃんと生きてるのか?


「うぎゃ……ふぇ」


まじまじと観察していたら、唐突に動いて、動いたことに自分で驚いたのか泣き始めた。

まだ目が開いたところを見たことが無いので、これで見えるかと覗き込んでみたが、目は閉じたままに見える。まぶたが腫れぼった過ぎではないか?

それほど目が覚めた訳じゃないのか、泣き声は一瞬で治まって、また眠り始めた。


あまり乳母の邪魔をする訳にはいかないので、すぐに自室に戻った。


「ユハ、赤ん坊って、いい匂いするって聞いた事あるんだが。なんか、臭くなかったか?」


どうしても気になったので、部屋に戻ってユハに聞いてみたら、そういうものらしい。

昨日は血が溢れていたから、血の匂いばかりしていても不思議に思わなかったが、何か、脂っぽいと言うか、焦げ臭いと言うか。とにかく、満腹の時には嗅ぎたくない匂いだった。


「いい匂いでしたよ。焼きたてのパンのような。美味しそうな匂いでした」


匂いに対する感想は、人それぞれであるらしい。

まぁ、新生児どころか、赤ん坊すらあまり抱いた事ないからな。

本物の赤ん坊というのは、前世を合わせても初めて見た。


それから数週間。

俺は驚きの連続だ。

まず、思った以上に泣いてる。

ずっと泣いてる。


まぁ、数人の乳母が代わる代わる世話してくれるみたいだから、睡眠不足の問題は無いんだろうけど。

俺がたまに様子を見に行こうとすると、部屋の扉が閉まっているにも拘らず、廊下のだいぶ先から泣き声が聞こえるほどだ。

聞いたところ、2時間周期で起きて泣くらしい。


しかもその泣くというのも、うぇ~んとかじゃない。ギャーだ。

部屋の中で聞いた時には、耳の奥まで響き渡って信じられないほど煩い。

鼓膜の破壊を目的としているとしか思えないほどの攻撃力だ。


あと、ミルクの匂いというのがよく分かった。

赤ん坊は、上手く吸えないから、いっぱい零れるし、よく吐き戻す。

だから、ミルク(まみ)れになっているというのもあるだろう。

正直、数分同じ空間にいたら、臭くて吐き気を催すほどに臭かった。

これを、いい匂いというのは親だからか?大人だからか?全く理解できん。


しかも、吸うのが下手なので、乳母の乳首にガッツリ噛みついていた。

歯も無いのに物凄い力で吸い付くから、乳母の胸からは血まで出ていた。

なんか、戦争だわこりゃ。

これ、母親が一人でとか絶対無理なやつ。マジで信じられない。

嘘でしょ。赤ん坊、恐るべし。


俺は、しばらく、赤ん坊の部屋に近付かないようにしようと決意した。

別に、逃げる訳じゃないぞ。

俺は赤ん坊を可愛がることができる男だ。

ただ、ただな。

子供には勉強が必要だからな。

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