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うむ。なるほど。  作者: たなかそう


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第二十九話

そんなこんなで。

とりあえず大人しく勉強を続けていたある日。


「そう言えば、ムレって子供産んだの?全然話題にならないけど」


異母兄弟には教えてくれない感じかな?

ふと不思議に思ってユハに尋ねたら、ユハの顔が悩まし気になった。


「どうやら、なかなか産まれなくて困っているようですよ。実は、一昨日から陣痛が始まったそうですが、あまり痛みも強くならず、長引いてしまっているようです」


微弱陣痛(びじゃくじんつう)というやつだろう。ストレスが強すぎるのだ。

俺でさえムレの予定日を大まかには意識しているのに、ミームはここ最近、ずっと離宮に籠っていて、王宮に帰って来ることさえしていない。

どうも、リルの悪阻が酷いようなのだが、だからと言って、たまには他の人のことも考えるべきだと思う。

リリシアだって、あまり顔には出さないけど、ちょいちょい気持ち悪そうにしてるし。


「俺、ムレの出産に立ち会う」


普通は許されないと思うけど、ここは王子の特権だ。

ユハも特に反対しないので、俺は堂々とムレの部屋に乱入することにした。

俺の魔力がムレや赤ん坊に影響を与えてしまってはいけないので、細心の注意を払って浄化魔法で消毒する。ついでに、ユハとメフィスレスとアイッシェンも消毒完了。


部屋の中では、ムレと周囲の医師達がどうにか産まれるようにと頑張っていた。


「部屋を暖めろ!腰や足を温めるんだ!」

「お湯をもっと持ってこい!」

「下腹部にも布を当てて!」


医師達の指示が飛び交う中、ムレも懸命に(いき)もうとしていた。

ストレスがかかっていても、大丈夫だ。ムレはちゃんと産もうとしている。

それもそうだろう。ミームが見向きもしないと言っても、腹に居るのは王子か王女。王族に違いない。何より、自分の子だ。母親になるのに、絶望なんてしてる場合じゃないよな。

俺は、何とかその混乱を()(くぐ)って、ムレに近付いた。


「ムレ、これを飲んで、胸をマッサージしてみて。陣痛が始まるはずだから」


ムレは、一瞬迷いはしたが、何も言わずに俺の差し出した(うつわ)を飲み干し、俺の言うとおりに胸をマッサージする。

器の中身は、おやつ用に異空間収納していた果汁だ。体力が少しでも回復するだろう。

胸を揉むと、オキシトシンが分泌されて、陣痛が促されるはず。

少しでもムレの体力が持っている間に陣痛が進めばいいが。


これでダメなら、足湯で三陰交(さんいんこう)でも押すか、歩かせるか。

そう思っていたら、ムレを強い陣痛が襲った。

何とかなりそうだ。良かった。


ムレが何度も叫び声を上げながらも頑張って(いき)み続けた結果、ちゃんと赤ちゃんの頭が見えてきた。

ゆっくりと、確実に赤ん坊が外に出てきた。


「産まれます!」


誰かの叫びと共に、赤ん坊が取り上げられ、真っ白なタオルで包まれる。

感動だ。

これはまさに、赤ん坊というにふさわしい。

なんて、真っ赤なんだ。


「……魔力が」


誰かの呟く声が、赤ん坊の泣き叫ぶ声にかき消される。

あ~、そう言えば、俺が産まれる時って、めちゃくちゃ痛くて暴れ回ったな。

懐かしく思いながら赤ん坊を見ると、小さな手を懸命に動かそうとしている。

きっと、めちゃくちゃ痛くて暴れて泣き叫んでるんだろうな。

ムレも赤ん坊も、よく頑張ったもんだ。


別に自分は何もしてないのに、非常に達成感がある。

小さな赤ん坊が、ぐったりしたムレの胸元に連れて行かれて、ムレに抱くよう差し出される。


だが、ムレはその赤ん坊を抱きはしなかった。


「どうして!いや!そんな子、私の子供じゃないわ!」


ムレは、泣き叫んで赤ん坊を叩き落とす勢いで振り払ったのだ。

慌てて渡そうとしていた侍女が抱き締めて、赤ん坊は無事だったが。

さっきまで、ちゃんと産もうとしていたのに。何があったんだ?


全く理解できないでいたら、いつの間にか足元にいたアイッシェンが呟いた。


不味(まず)そうだにゃ」

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