18話 賢者VS盗賊団
……結論から言うと、盗賊団は黒だった。
街に出て、ありとあらゆる情報を精査した結果……
盗賊団がエリクサーを所有しているという事実は、ほぼ揺るぎないものになった。
数日前……
盗賊団は、とある商隊を襲撃。
商人達を皆殺しにするだけではなくて、ありとあらゆる財を奪い尽くした。
その中に、エリクサーが含まれていたという。
街の情報屋に高い金を支払って得た情報だ。
まず間違いないだろう。
……ちなみに、情報料は小遣いを使った。
痛い出費だ。
それはともかく。
盗賊団はとある商人を襲撃して、エリクサーを含む財を手に入れた。
こんなことを放置しておけば、国の威信に関わる。
まず間違いなく、近い内に討伐隊が編成されるだろう。
盗賊団は討伐されるか……
あるいは、遠くへ逃げてしまうか。
どちらにしろ、そうなった場合はエリクサーを手に入れることはできない。
ネコババをするようで申し訳ないが……
今のうちに、盗賊団からエリクサーをちょうだいしておかないと。
「あそこか」
抜け道を使い街を抜け出して……
魔法を使い、徒歩半日ほどの距離を踏破して……
その先に小さな廃村を見つけた。
かなり古い場所だ。
残された家は木々が腐っていて、ところどころ穴が空いている。
また、草木が伸び放題で、あちこちに蔦が絡みついていた。
一見すると、誰もいないように見えるのだけど……
あちらこちらから人の気配がした。
それに、じっと目を凝らしてみると、家に空いた穴からわずかに人影が見える。
ここが、例の盗賊団のアジトで間違いないだろう。
街から遠く離れたところにある、捨てられた廃村を利用するとは、なかなか頭の良い連中だ。
こんなところに近づく人なんていないし……
いざという時は、すぐに捨てることができる。
隠れるのにも、出ていくのにも、うってつけの場所だ。
「さてと……それじゃあ、やるとするか」
軽く体を動かして、準備運動をする。
そうして体がほどよく温まったところで、魔法を詠唱する。
「火炎封印壁<フレイムウォール>!」
廃村を大きく囲むように、炎の壁が出現した。
高さ5メートル、幅1メートル。
中にいるものを決して逃がすことのない、炎の檻の完成だ。
「な、なんだっ!?」
「いったい何が起きている!?」
「敵襲か!?」
異変を察知して、廃屋から盗賊達がぞろぞろと出てきた。
その数、おおよそ三十ちょい。
ただ、俺が危機感を抱くような気配は感じられない。
どいつもこいつも、大した力は持っていないだろう。
普段通りならば、大規模魔法でまとめて撃破……と、いきたいところなのだけど。
今日はそういうわけにはいかない。
誰がエリクサーを持っているかわからないからだ。
エリクサーもまとめて魔法で撃破しちゃいました、なんて結果になったら笑えない。
一人一人、慎重に撃破していこう。
「というわけで、まずは一人目!」
「ぐはっ!?」
物陰に隠れて……
相手が隙だらけの体を晒したところで、飛び出して、鳩尾に一撃。
小さな悲鳴をあげて、盗賊が地面に倒れた。
「こいつは……外れだな」
軽く調べてみるものの、エリクサーを持っている感じはしない。
「一人一人、っていうのはけっこう骨が折れそうだな……面倒すぎる」
ここは頭を使うことにしよう。
俺は、再び物陰に身を潜めて……
無防備に近づいてきた盗賊を、ぐいっと引きずり込んだ。
「うわっ!? な、なんだお前ぐむぅっ!?」
「しー」
あらかじめ用意しておいた縄で盗賊の動きを封じて、ついでに口をふさぐ。
「聞きたいことがある。素直に答えれば、痛い目には遭わない。ただ、抵抗するのなら……火炎槍<ファイアランス>」
魔法で近くの木に穴を開けてみせた。
盗賊の顔色が青くなる。
「わかったか?」
「んー、んー!」
盗賊はコクコクと、慌てた様子で頷いた。
「お前達は最近、エリクサーを手に入れたな?」
コクリ。
「まだ手元にあるか?」
コクリ。
「誰が持っている?」
……。
「素直に教えないなら……そうだな。体に一つや二つ、穴が開けば素直になるかもしれないな」
「んーーーっ!?」
盗賊が慌てたところで、口を自由にしてやる。
「誰が持っているんだ?」
「ぼ、ボスが持っているはずだ……」
「ボスっていうのは、どこのどいつだ? わかりやすい特徴は?」
「巨大なバトルアクスを持っているのがボスだ」
「素直にありがとう。睡眠<スリープ>」
魔法を使い、盗賊を眠らせた。
「さてと、ボスは……いた」
飛び出してきた盗賊達に守られるように、巨大なバトルアクスを持った大男がいた。
あれがボスだろう。
「ん?」
「ん?」
ボスらしき盗賊と目が合う。
あ、まずい。
なんてことを思うけれど、もう手遅れ。
「いたぞ! あいつがこの騒ぎの元凶に違いない!」
ボスの合図で、俺はすぐに残りの盗賊達に囲まれてしまった。
俺は子供なのだけど……
ボスは、そんなことは気にせず、一目で俺を敵と見抜いたようだ。
なるほど。
盗賊団のトップを務めるだけのことはあって、なかなか勘が鋭いようだ。
「ボス、本当にこんなガキがこれだけのことを……?」
「侮るな。コイツはとんでもない化物だ。俺にはわかる」
「へえ、本当に鋭いヤツだな」
「てめえはなんだ? 何をしにここへ来た?」
「あんたが持っているエリクサーをもらおうと思って」
「アレを狙っているのか……」
「素直に渡してくれれば、まあ、手加減するよ。そうでなければ、遠慮はしない」
「……殺せ!」
大男が部下に命令を出した。
それに反応して、30人の盗賊が一斉に襲いかかってくる。
多勢に無勢だ……なんて、慌てることはない。
ゴブリンが何匹集まったとしても、ドラゴンに敵うことはない。
それと同じだ。
盗賊達の力量は、すでにある程度は見抜いている。
俺に届くようなヤツはいない。
「<烈風爆陣円<テンペストエッジ>!」
本気でやると殺してしまうので、ある程度、手加減した一撃を放つ。
嵐が吹き荒れて……
盗賊達の半分が脱落した。
突然のことに現状を理解できず、盗賊達が驚き、動きを止める。
良い的だ。
「火炎槍<ファイアランス>!」
炎の槍が盗賊達を数人まとめて吹き飛ばす。
「風嵐槍<エアロランス>!」
風の槍が、再び、盗賊達を数人まとめて吹き飛ばす。
そうやって繰り返し魔法を放ち……
大男を除いた27人の盗賊を壊滅させた。
「な、なんだと!? 男が魔法を使っただと!? それに……30人もの俺の部下が、三分で全滅するなんて!?」
「正確に言うと、2分30秒だ」
驚愕する大男に、俺はそう言い放った。
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