最終話 <後半>ちがうまま、歩いていく
火が消えたあと、森にはやさしい風が吹いていました。
森の動物たちの喜びの声が響きます。
「消えたよ!」
「……やった!」
「森を守れた!」
「良かった……!」
ガオとピピは、みんなの姿を見てほっとしました。
ふたりは、ホーホー爺のもとへ歩み寄ります。
「……ただいま、ホーホー爺さま」
「ただいま、です!」
「ほっほっほ……ふたりとも、おかえりなさい」
ホーホー爺は、そっとふたりを抱きしめました。
そのぬくもりに触れた瞬間――
ふたりの胸に、こらえていたものがあふれ出します。
ガオもピピも、わんわんと声をあげて泣きました。
うれしさと、安心と、
これまでのすべてが、涙になってこぼれていきます。
ホーホー爺は、やさしく言いました。
「話してみなさい。おぬしたちの心の旅を」
ふたりは、ゆっくりとうなずきました。
「ミミは……最初、とても怖がりでした。
でも最後は、自分で一歩を踏み出したんです」
「ニコは……ずっと笑っていましたが、
本当は我慢していて……」
ピピも言葉を重ねます。
「ズシは強いけれど、ひとりで抱えすぎていて……
ルゥは、自分のことを好きになれずにいて……」
「でも……みんな、自分の心と向き合っていました」
ガオが続けます。
「ボクたちも、たくさん悩みました。
でも…強いって、正しいことだけじゃなかったんです」
「苦しんでいる相手のそばにいること。
それも、強さだとわかりました」
ピピは静かに言います。
「怖くても……言葉にすること。
それが、ボクの強さです」
ホーホー爺は、やさしくうなずきました。
「よい答えじゃ」
「だがな……答えはひとつではない。これからも変わっていくものじゃ」
ガオは少し笑います。
「ピピとケンカしたとき、正直わからなくなったんです」
「……ボクもです」
「でも…ちがっていたから、気づけたことがありました」
ピピが、そっと続けます。
「ちがっていても、いいんですね」
ホーホー爺は、うれしそうに目を細めました。
「ふたりとも、よく歩いたの」
そのとき――
「ガオー!」「ピピー!」
大好きな家族たちが駆け寄ってきました。
ふたりは顔を見合わせ、やさしく笑います。
「心の旅」は終わりました。
ガオは、少し前を歩きます。
ピピは、その隣に並びました。
身体の大きさも、歩幅も、性格も
まるで違う2人。
それでも。
2人は、並んで歩きます。
相手を変えようとするのではなく、
相手を知ろうとしながら。
やさしい風が、森を抜けていきます。
2人は、それぞれの場所へと歩いていきます。
迷うことも、間違うことも、きっとあるでしょう。
それでも。
そのたびに立ち止まり、
また一歩、歩き出せばいいのです。
旅は、終わりました。
けれど心の旅は、
どこにいても、
いつからでも、
また始めることができるのです。
その一歩があるかぎり。
おしまい
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
ガオとピピは、たくさん悩み、間違いながら、
それでも歩き続けてきました。
きっと、誰の中にも、
あの2人のような弱さや迷いがあるのだと思います。
正しいと思ったことが、
誰かを傷つけてしまうこともあるかもしれません。
それでも。
立ち止まって、また一歩を選び直すことは、
いつだってできるはずです。
この物語を閉じたあと、
あなたがどんな一歩を選ぶのか、
そっと想いを馳せています。




