最終話 <前編>ともに立ち上がるとき
ガオとピピの心の旅がはじまってから、一年がたちました。
たくさんの出会いがありました。
悩み、ぶつかり、失敗しながら
ふたりは、そのたびに少しずつ心を育ててきました。
そして今日。
長い旅を終え、故郷へ帰る日がやってきました。
「みんな元気かな~」
ガオが、うれしそうに言います。
「……ホーホー爺さま、認めてくれるかな」
ピピは少しだけ不安そうに、それでもやさしく微笑みました。
ふたりは並んで、森へ続く道を歩いていきます。
同じ道。同じ木々。同じ風のにおい。
「この道……通ってきたね」
懐かしそうに、ピピがつぶやきました。
けれど――どこか違って見えます。
世界が変わったのではありません。
ふたりの心が変わったのです。
やがて、故郷の森が見えてきました。
そのとき――
「……なんだか、変だ」
ガオが足を止め、鼻をひくつかせます。
「焦げたにおいがする……」
次の瞬間。
森の奥から、黒い煙がもくもくと立ちのぼっているのが見えました。
ざわざわ……ざわざわ……
「森が燃えてる!」
「早く消さないと……!」
不安と焦りの声が入り混じります。
乾いた風が吹くたびに、炎は大きく揺れ、
森の奥へと広がっていきました。
「ピピ、急ごう!」
「う、うん!」
ピピはガオの背に乗り、ふたりは一気に駆け出します。
森に入ると、そこには混乱する動物たちの姿がありました。
「どうしよう……家が……」
「水を!いや、逃げて!」
誰もが不安で、動きはばらばらです。
「みんな、大丈夫!?」
ガオが声をかけます。
「ガオとピピ……!帰ってきたのか!」
懐かしい顔が振り向きます。けれど、その表情には余裕がありません。
「ホーホー爺さまは……?」
ピピが静かにたずねました。
「会合でいないんだ……」
その言葉に、空気が少しだけ重くなります。
そのとき、ガオがぽつりとつぶやきました。
「僕……ずっと思ってた」
「自分の正義や正しさを貫くことが、強さだって」
ピピも、小さく息を吸います。
「僕は……優しさは、誰も傷つけないことだと思ってた」
ふたりは顔を見合わせました。
そして――そっと、うなずきます。
ガオは大きく息を吸い、声をあげました。
「怖いよね。でも……一緒に森を守ろう!」
ピピは震えている子ウサギのそばに寄り添います。
「バケツを持ってきてくれるかな。みんなの力が必要なんだ」
やさしく、でもしっかりと伝えます。
「僕たちも手伝うよ!」動物たちが、少しずつ動き出します。
少しずつ――
ばらばらだった動きが、ひとつになっていきました。
水を運ぶ者。
風向きを見守る者。
小さな子を安全な場所へ導く者。
やがて――
炎は小さくなり、
そして、静かに消えていきました。
森に、静けさが戻ります。
焦げた地面に、ぽたりと涙が落ちました。
それは、ほっとした気持ちからこぼれた涙でした。
そのとき。
「ほっほっほ……」
やさしい声が響きます。
森の様子を聞き、ホーホー爺は急いで戻ってきたようです。
「正しさだけでも、森はまとまらぬ。
やさしさだけでも、前には進まぬ」
「互いに力を貸しあい、声を聞きあうとき――
森は、本当の意味で強くなるのじゃ」
ガオとピピは、そっと笑いました。
その言葉の意味を――
もう、知っていたからです。
ホーホー爺からクエッション!
Qおぬしにとって「強さ」「優しさ」とは、どのようなものかのう?
Q不安で動けぬ者がおるとき、おぬしなら、どんな言葉をかけてやるかのう?
Qみながバラバラになっておるとき、おぬしなら、まず何をして動き出すかのう?




