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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第1章 旅立ち編
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コロニー『ヘレボルス』

「ミモザさん、あたし、ちゃんと話します…」

あたしは決心した。

例え、これで竜の牙の仲間になれなくなっても、コーナスさんや、ミモザさん、アキレアさんに嫌われても、このまま騙すような事は出来ない。

あたし達は、竜の牙の仲間なんだから…

仲間を騙し続けるなんてしたくない…


それに、もうあたしの力はみんな知ってしまったはず…

【かえで】の経験から強すぎる力は、みんなに嫌われることを知っていた。


まだ【かえで】だった頃、期待の新人として入社したあたしは期待に応えるように結果を出し続けた。

その結末、会社からは高い評価を受けたが、同僚からは嫌われ毎日のように嫌がらせを受けることになった。

あまりにも陰湿な嫌がらせはエスカレートし、ある日、あたしは《期待の新人》をやめた。

あっと言う間に会社からの評価は最低になり、同僚からは疎まれる存在になった。

だからあの日もあたしは仕事をサボり、公園のネコを相手に現実逃避をしていたのだ…



「ん… とりあえず、みんなの所に行きましょう」

ミモザはルビアの手を取り、コーナス達の所へ向かった。



「お、ルビア、シオン!キレイになったなぁ」

コーナスはルビアとシオンの頭を撫でて笑っていた。


「あの、コーナスさん。あたし、みなさんにお話ししなければならない事があります…」

ルビアはコーナスを上目使いで見上げる。


「コーナス!あのね!ルビアちゃん…」

ミモザがルビアを守ろうと会話に割って入るが、最後まで言う前にコーナスが話し出す。


「ルビア、いろいろ話しもあるだろうけど、とりあえず移動しよう。ここに居ると血の匂いでモンスターが寄ってくるかもしれない。今から出れば夕方にはコロニーに着くだろう。話しは晩めしを食いながらにしようぜ!美味いメシ屋があるんだ。連れて行ってやるよ」

あははははと朗らかに笑うコーナスは出発の準備を始めた。


「……はい」

あたしは問題が先送りになり、少しだけホッとしていた。もう少しの時間だけは仲間で居させてくれるのだと…。



わたし達は、手早く準備をするとコロニー『ヘレボルス』へ向けて出発した。


基本的に草原の道なので見通しがよいため、付近を軽く警戒しながら順調に進んでいた。

緊張感が低い事もあり、コーナスはさっきの戦闘について話し出した。


「ルビア、今朝の戦闘ではオレのミスがあった。すまなかった。オレがしっかりしていれば、スライムにも気がつく事が出来たはずだった…」

コーナスはルビアの凄すぎる力に興奮してしまい、リーダーとして仲間を守る事が出来なかったと自省していたのだ。


「いえ、そんな… あたしも油断してしまって、みなさんに心配かけていまいました… ごめんなさい」

ルビアも謝ると、ふと気になるワードがあった。


「スライム?あのモンスターはスライムだったんですか?あたし、気がついたら水の中で溺れているような感じだったので…」

【かえで】のイメージではスライムとは、ぷるんっとしたかわいいモンスターで、基本的に青かったはず。

しかし、目の前に現れたのは巨大な赤黒い液体の壁だった。


「あぁ、あれはスライムだ。オーク達の血に混じり、近くにいる事に気がつかなかった」

コーナスは悔しそうにしている。


「あの… スライムってあんな形してるのですか?」

まだ、あのぷるんっとしたイメージが消えない…


「ルビアちゃん、スライムを見た事がないの?」

後ろを歩くミモザが声を掛けてきた。


「はい、あたしコロニーの近くの森にしか行ったことなかったので、ツノが生えたオオカミくらいしか見た事ありません」

ルビアもシオンもコロニーの子供たちと薬草取りに行ける範囲でしか行動した事がなかった。


「ホーンドックね。まぁ、子供だけでそんな危険な場所には行けないわよね」

ミモザは納得している。


あの仔犬、ホーンドックって言うんだ。オオカミじゃなかったのね…

あ、オオカミも犬か…

んー、あながち『子犬』も間違ってなかってなかったってことかな?

あたしはくだらないことを考えているとコーナスがスライムについて説明してくれた。


「スライムは液体状のモンスターだ。見た目は水溜りと変わらない。動く水溜りはスライムだと思えばいい。今回のスライムはオークの血の中に居たから赤黒くなっていたんだな。それに血溜まりに潜んでいたから、発見が遅れたと考えられる。」

コーナスはそう分析し、シオンを見る。


「しかし、シオンだけがスライムに気が付いていたんだよな。シオン、あんなに離れていたのによく分かったな!」

あの時、シオンはルビア達から200m以上離れていたのだ。

ルビアの魔法で明るくなっていたとはいえ、目の前にいるスライムに気がつかないほど辺りは血溜まりとなっていたのだ。


「あぃー、シオンはルビアさまのお供ですからぁ」

相変わらずクネクネするシオンは、よく分からないことを言い出した。


「そうね、シオンちゃんはルビアちゃんのお供ですものね」

ふふふと口元を隠して笑うミモザ。


「うーん、よく分からないが… まぁ、そう言うことだな」

コーナスは朗らかに笑っていると、アキレアがボソリとつぶやいた。


「………見えた」


遠くにはマヴロのコロニーと同じように壁に囲われたコロニーが見えた。


「着いたな。アレがオレたちの拠点、コロニー『ヘレボルス』だ」

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