ルビアの決心
「2人共、とりあえず体を洗いましょう。こっちへいらっしゃい」
泣き腫らした目をこすりながら、ミモザはルビアとシオンを連れて行く。
日が昇り辺りが明るくなると、改めて戦いの凄惨さが見えてきた。
コーナスとアキレアは、ルビアとシオンが戦った形跡を見直していた。
「アキレア、どう思う?」
コーナスは凄惨な戦いの跡を、腕を組みながらみている。
「……すごい、いや、すご過ぎる力だ」
アキレアはそこで起きた事をイメージしているようだった。
「ルビアはとてつもない力を持っているようだな。あと、シオンは目立たないが、オレは底知れぬ恐ろしさを感じたよ」
シオンがルビアを助ける為にスライムに飛び込むのを制止した時の、あのシオンの目を思い出し背筋に汗が流れるのを感じていた。
「あの子達が旅に出ざる得ない理由は、あの力が関係するのかもしれないな…」
コーナスはルビアとシオンの過去を思い憂いていた。
「………2人共、いい子だ」
アキレアがボソっとつぶやく。
「そうだな、あの2人は幸せにならないとダメだ。オレはあの子たちを絶対に見捨てない」
コーナスは自分に誓うようにつぶやいていた。
◇◇◇◇
あたしとシオンはミモザさんに連れられ岩陰に入った。
そこでミモザさんは大きめのバケツを置き、呪文を唱える。
「フレッシュ・ウォーター」
するとバケツからキレイな水が溢れ出した。
「すごい!!」
あたしは初めて見る魔法に感動した。バケツから溢れる水に触れると冷たくて気持ちの良い水だった。
「あ!この水は、いつも顔を洗う水ですか!?」
毎朝、起きたらバケツに水が溜まっていた。近くに川も無いのにどこから持って来たのか不思議だったのだ。
「ふふふ、そうよ」
ミモザは口元を隠しながら笑う。
「ほへー」
シオンはまだ不思議そうにバケツの水を見ていた。
「さぁ、いらっしゃい。2人共、せっかく可愛いのにそんな格好じゃもったいないわ」
ニコっと微笑んで、ミモザはあたしとシオンに付いた返り血を洗い流し始めた。
「シオンちゃんはケガしてない?大丈夫?」
ミモザはシオンの服を脱がせ、体を洗いながらケガがないか確認している。
「あぃー。シオンは大丈夫ですぅ」
いつものシオンに戻り、クネクネしている。
ミモザは、ふとゴブリンの首を飛ばし不気味に笑うシオンを思い出したが、頭の中から追い払った。
「どこもケガは無いみたいね。よかった…」
ケガの無いシオンの体を確認して安堵の息を吐き、ルビアの方を見る。
「ルビアちゃん、本当に大丈夫なの?」
「はい、もう大丈夫です」
ルビアは焼け焦げた布の服をはらうと、下に黒く煤けたチェインメイルを着ていた。
ルビアは頭から水をかぶり、煤を洗い流すと美しく装飾された白いチェインメイルが現れた。
「はぁ、なんてキレイなチェインメイルなの…」
ミモザから感嘆の声が漏れる。
ルビアはチェインメイルも脱ぎ、体の煤を洗い流すと色白ですべすべでキズ1つない美しい肌が晒された。
「まぁ!ルビアちゃんすべすべ!あぁ、羨ましいぃ」
ミモザは傷を確認すると言い訳して、ルビアの肌を堪能している。
「あ、ちょ、ちょっと… ミモザさん、恥ずかしい…」
ルビアは俯き、もじもじしている。
ミモザは不思議そうにルビアの顔をムニムニしながら、
「ルビアちゃん、ホントに擦り傷1つないわ…。あんなに戦って、コーナスにも焼かれたのに…」
「あ…、あたし傷治るの早いんです…」
ルビアは、へへへと笑う。
「うーん、確かに回復魔法も効果なかったもんねぇ。そりゃケガしてなかったら回復魔法は効かないわね…」
ミモザは首を傾げている。
「とりあえず、着替えをどうにかしないとね。シオンちゃんは、着てた服をキレイにしてあげるから、そのまま着てね。ルビアちゃんは代わりの服ある?無かったら私の服を持ってくるけど…」
「あ、代わりの服持ってます。ごめん、シオン持って来てくれないかな?」
「あぃー」
シオンは裸のまま、テントに戻ろうとし、慌ててミモザが止める。
「シオンちゃん!待って!あなた裸なのよ!」
「あぃー」
「もう、ちょっと待っててね。 …ウォッシュ」
ミモザがシオンの服を持ち呪文を唱えると、服に付いていた返り血や泥などが地面に落ちて、服が洗濯したてのようにキレイになる。
「はい、まずは服を着なさいね」
ミモザは微笑みながら、シオンに服を渡す。
「…いい匂い」
シオンは服の抱きしめて、香りを楽しんでから服を着た。
「あ、あの、ミモザさん?もしかして水浴びしなくてもさっきの魔法で、あたし達もキレイになるとか…?」
あたしは恐る恐る聞いてみた。
「え?なるわよ?でも、水浴びしたほうが気持ちいいでしょ?気持ちの問題よ」
ふふふと、口元を隠して笑うミモザさんは、いたずらっ子のような目をしていた。
ルビアはチェインメイルの上に、シオンに持って来てもらった布の服を着た後、しばらく俯き黙り込んでいた。
「ミモザさん、あたし… ちゃんとお話しします…」
ルビアは両手で服の裾を握り、決心した顔でミモザを見つめていた。




