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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第1章 旅立ち編
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恐怖の対象?

コーナスはルビアの元へ走っていた。

走りだしてすぐ、首のないゴブリンが倒れていた。


しばらく走ると、ゴブリンの下半身らしき物体が散乱している。


足元は大量の血が溜まっている。


更に進むと、オークが倒れていた。

1体はアゴが破壊され腹に大きな穴が開いている。

もう1体は顔の上半分が消滅していた。

その横には頭にボウガンの矢が刺さったオークも倒れている。


そこはまさに血の海だった。

血の海の中心には、その場には似つかない少女が立っていた。

少女の美しかった金髪は赤黒く染まり、両手からは血の滴が落ちている。


「ルビア… これ…」

コーナスは言葉が出なかった…



「あ…」

みんなを助けなければ!と必死になり、本気で戦った結果、あまりにも凄惨な状態となってしまった。

ルビアは、自分の『力』を恐れられる事が急に怖くなり黙ってしまった。


コーナスは立ち止まりルビアを見ると、ルビアの両脇を持ち『高い、高い』をしてクルクル回りだした。


「すげぇな!!ルビア!お前、本当に秘密兵器だったんだな!」


「え! え!?」

ルビアは状況が分からずクルクルされている。


コーナスはクルクルに満足すると、ルビアを下ろし頭を撫でる。

「すげぇよ!マジで!!」

興奮し過ぎて語彙力が無くなってしまった。


「オレでも、ここまで出来ないぞ!すげぇな!しかも、アレだ!あのデカいマジックミサイル!しかも7本!! マジでビビったよ!」

コーナスは子供のようにはしゃいでいた。


「あ、あの。あたし…」

ルビアはどうしていいのかわからずに、オロオロしていたその時、


「ルビアさま!まだ!!」

シオンの声が響いた。


「え?」

ルビアがシオンの声が聞こえた方向を見ると、巨大な血の塊が()()()()()


「あ… しまっ……!」

ルビアがつぶやいたのと同時に、血の塊はルビアを飲み込んでしまった。


「ルビアさまぁぁ!!!!!」

シオンが叫ぶ。




◇◇◇◇


ルビアは血の塊に飲まれていた。

まるで水中に放り込まれたように、上下が分からなくなる。


息をしようと口を開けると、口の中に液体が入ってくる。

「ごぼごぼごぼごほ…」


(い…息ができない…)


意識が朦朧としてくる。

すると、ユニークスキル『略奪者』が発動した。


(略奪者が!? と、言うことは、あたし今食べられてるの?)


とにかく生きる為には、相手を略奪するしかない!


ルビアの中から何かが『ずあっ』と出てくると、敵を略奪しようと攻撃を開始した。



◇◇◇◇


「ルビアさまぁぁ!!」

シオンの悲痛な叫びで目の前の状況に気がついたコーナス。

目の前ではルビアが血の塊に飲まれ、中で溺れていた。


「くそっ!! 竜化!!」

コーナスの体を竜の鱗が纏い、鋭い爪が伸びる。


後ろからシオンが飛び出してきた。

「ルビアさま!!」


シオンがそのまま血の塊に飛び込もうとするところを、コーナスはシオンの腕を掴み制止する。


「離せ!!!」

普段のシオンからは想像も出来ない、恐ろしい目でコーナスを威圧する。


「まて!シオン!! こいつはスライムだ!オレに任せろ!」

コーナスは遅れて走ってきたミモザにシオンを投げつける。


「ミモザ!スライムだ!ルビアが飲まれた!」


「きゃっ!」

ミモザはなんとかシオンを抱きとめたが、転びそうになるが、すぐ後ろにいたアキレアがミモザを支え、転倒を防いだ。


「コーナス!あとは任せて!」

ミモザが叫ぶと、コーナスはルビアを飲み込んだスライムにファイヤーブレスを吐いた。


ごあああ!!!


轟音と共にファイヤーブレスはスライムを包み込み焼き尽くした。


スライムを焼き尽くした跡には焼け焦げたルビアが倒れていた。

ルビアが着ていた布の服は焼けて無くなっていた。布の服の下にチェインメイルを着ていたようだが、黒く焦げておりよく分からない。

ルビアは髪が縮れ、顔は煤だらけになっている。



「ミモザ!急げ!」

コーナスが叫ぶ。


ミモザはシオンを降し、ルビアの元に駆け寄る。

「ルビアちゃん! ヒール!」

ミモザがルビアに手を当て回復魔法をかけようとするが、回復している雰囲気が感じられない。


「うそ… いや… ヒール!!」

ミモザはルビアを抱き上げ、抱きしめて回復魔法をかける。

しかし、やはり回復している感じがしない。


「ルビアちゃん!お願いだから!帰ってきて!!」

ミモザが泣き叫ぶように懇願する。


コーナスは竜化を解き、アキレアと共にルビアを見守る。


「…ミ…ミモザさん… 苦しい…」

ルビアはミモザの背中をポンポンと叩いた。


「ルビアちゃん!! うああああああぁぁ」

ミモザは大粒の涙を流し、更にきつくルビアを抱きしめる。


「ちょ…ミ…ミモザさん…?」


「ルビアさまぁぁぁ!!!」

シオンもルビアに飛びついてきた。


うああああああぁぁあ


ミモザとシオンの泣き声がしばらく響いていた。

空は、もうすぐ朝になるところだった。

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