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第34話 卒業式の日

 三月。




 卒業式の日。







 空はよく晴れていた。




 少しだけ暖かい。




 春が近付いていた。







 シルヴァたち一年生は教室にいた。




 卒業するのは三年生だ。




 だから主役ではない。







 それでも。




 学校全体が少し特別な空気だった。







 廊下。




 教室。




 体育館。







 どこか静かだった。







「卒業か」




 シルヴァが窓の外を見る。







「卒業だね」




 ティナも言う。







「卒業」




 クジャも頷いた。







 三人にはまだ実感がない。




 一年生だから当然だった。







 だが。




 今日の空気は少し違う。







 卒業式が終わる。







 三年生たちが校舎から出てくる。




 後輩たち。




 友達。




 先生。







 たくさんの人に囲まれている。







 笑顔もある。




 泣いている人もいる。







 別れの日だった。







 三人は少し離れた場所から見ていた。







 クジャはカメラを回している。







 静かな映像。







 派手なものはない。







 でも。




 記録として残したかった。







「なんか不思議だな」




 シルヴァが言う。







「何が?」




 ティナが聞く。







「今日で終わりなんだろ」







 卒業。







 学校へ来ることも。




 部活へ行くことも。




 毎日の当たり前も。







 全部終わる。







「そうだね」




 ティナも少しだけ空を見る。







 春は出会いの季節。




 でも。




 別れの季節でもある。







 クジャは小さく言った。







「だから記録」







 シルヴァは少し笑う。







「映像アーカイ部だもんな」







 クジャも少し笑った。










 夕方。







 三人は中庭のベンチに座っていた。







 卒業式の日の学校は静かだった。







 もう帰った人も多い。







 風だけが吹いている。







「来年は二年生か」




 ティナが言う。







「早いな」







「早い」







 クジャも頷く。







 春に出会った。







 気付けば一年が終わろうとしている。







 本当に早かった。







「でも」




 シルヴァが立ち上がる。







「まだ終わってないだろ」







 ティナが少し笑う。







「そうだね」







 クジャも頷いた。







「まだ」







 三人は一年生だった。







 卒業するわけじゃない。







 だから。




 まだ続く。







 映像アーカイ部も。




 放課後も。




 思い出も。










 夜。




 部室。







 編集。




 投稿。







 タイトル。







『卒業式の日』







 コメント欄。







『泣きそうになった』




『記録って大事だな』




『映像アーカイ部らしい回』




『春が来るんだな』




『エモかった』







 登録者数。




 九百二十六人。




 ↓




 九百八十五人。







「あと少し」




 シルヴァが言う。







「本当にあと少しだね」




 ティナが笑う。







「近い」




 クジャも頷いた。







 千人。







 春に始まった目標ではない。







 でも。




 いつの間にか見える場所まで来ていた。







 窓の外。




 春の夜空。







 映像アーカイ部の一年目は。




 もうすぐ一つの節目を迎えようとしていた。

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