表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/69

5-21話 条件提示

 俺とシルシアさんが出会った次の日、俺の持ち帰ったアイテム『セレノセラム』を使用してグレイスさんを治療するためシルシアさとグレイスさんの家にやって来た。

 出迎えてくれたウィルに事情を話してグレイさんが眠っている部屋に向かう。

 その際、借りていた冒険者の腕輪をウィルに返した。


「ありがとうな、この冒険者の腕輪のおかげでニーナを見つけられたし、グレイスさんを治療できるアイテムも手に入れることができた。」

「きっと父ちゃんも手伝ってくれたんだよ。スタン兄ちゃんに使ってもらってよかった。だからさ、よかったらその冒険者の腕輪をスタン兄ちゃんが使ってよ。」


 ウィルの申し出は嬉しかったけど、もし本当にウィルの父親が手伝ってくれたのだとしたら、そこに残っている何かがあるのだとしたら。


「嬉しいけど、それはダメだ。ここにはウィルの父ちゃんの思いや、願いや、希望が残ってる。だから、それを受け継げるのはお前だけだウィル。」

「そっか。そうだね。うん。俺、この腕輪と一緒に冒険に行くよ。」


 その後、シルシアさんから、処置は終わったのでしばらくすれば目を覚ますと説明があった。

 グレイスさんが目覚めた時の注意事項などをシルシアさんがウィルに説明し、グレイスさんが目を覚ましたらモル姉に来てもらえるように伝えると俺たちはギルドハウスにもどる。

 ギルドハウスに戻ると、シルシアさんは徹夜で作業して眠いから寝ると部屋に行ってしまう。


 ギルドハウスにはリンドーが来ていたので、俺はリンドーとあのダンジョンの事やスプリカスとの戦いの事を話したり、シルシアさんの事について聞いた。

 リンドーはシルシアさんのユニークスキル『博識』について説明してくれた。


 博識は、見たものを瞬時に分析して理解してしまうらしい。

 何でもわかってしまうので、わかったような顔をして分かったようなことを言うので、それが正しくてもむかつくとリンドーは言っていた。

 むかし、リンドーと父さんと母さんとモル姉はシルシア先生と一緒に冒険をしたことがあるらしい。


 その時どんな冒険をしたのか二人に聞こうとしたら、二人とも『聞けば殺さねばならない』と目で訴えてきたので命おしさに口を閉ざした。

 その後は、冒険者協会から現状では俺を冒険者と認定するわけにはいかないので、シルシア先生からステータスやスキルに頼らないダンジョン探索の技術を学びシルシア先生から合格を貰ったのち、デミーに入学して卒業試験に合格したら条件付きで冒険者としての活動を許可するという話をしてもらった。


 ちなみに、俺がシルシア先生から教えを受けるという部分でリンドーはブチ切れ、俺が村を出てデミーに入学するという部分でモル姉はブチ切れ、シルシア先生を柱に括り付けて尋問し始めたらしい。

 なんて恐ろしい人たちなんだ。

 いったい何がそうさせるのか・・・。

 

「その、俺としては話は分かりました。ぜひシルシア先生に教えてもらいたいと思います。」

「スタン! そんな奴の教えなんか必要ない!! 俺がちゃんと教えてやるから大丈夫だ!!」

「リンドー君。そうはいっても君が教えられることなんて、肉体の鍛錬だけでしょう? それも重要だけど、ダンジョンの中で目まぐるしく変わる環境への対応とかそういうのも本当に教えられるのかい? 君いっつも対応できてなかったじゃないか。」

「ぐぬぬぬぬぬ。」


 リンドーはすごすごと引き下がり、ギルドハウスの端っこの方で『俺はもう用済みなんだ・・・』とうなだれはじめた。


「それで、先生の教えに合格したときに入学するデミーはどこに行けばいいんでしょうか。」

「スタンちゃん! デミーになんて行く必要ないわ!! わざわざデミーに行かなくても冒険者認定試験ならこのギルドハウスでも実施できるもの!!」

「モルデンちゃん。これはね、単純に試験を受けて合格すればいいというものじゃないんだよ。冒険者協会が本来冒険者としては認められない状態のスタン君を冒険者として認めるために受けてもらう特別な試験なんだ。たとえここで冒険者認定試験を受けてクリアしてもそれじゃ認定を受けられないんだよ。」

「ぐぎぎぎぎぎ。」


 モル姉も引き下がらざるを得ず、リンドー同様『もう私は必要ないのねスタンちゃん・・・』とリンドーと反対の端っこの方でうなだれ始めた。


「二人とも。スタン君には冒険者になって欲しいんでしょ? いい機会じゃないか子供離れしなよ。」

「うっせぇ。わかってんだよ。柱に縛り付けるぞ!」

「ついでに逆さにして振り回すわよ!」

「ふ~ん。本当にそんなことしていいのかなぁ~。僕は君たちの事をよく知っているんだよ?」

「くっ、おまえ、それは卑怯だぞ!」

「紳士協定でしょそれは!」

 

 わーわー、ぎゃーぎゃー。


 二人のこんな姿は今まで見たことがなかったなぁ。

 どのくらい一緒に冒険していたのか知らないけど、よっぽどいろんなことがあったんだろうなぁって思う。

 何から何までこんな感じで、仲がいいのか悪いのか・・・

 

 だけど、なんかちょっとうらやましくもある。

 アップと冒険をしたら俺にもこういう仲間ができるんだろうか。

 仲間・・・か・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ