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5-20話 やってきたのは変な人

 気が付くとそこは見知ったリジェネア村。

 発生したダンジョンは無くなって、何事もなかったかのように倉庫の前に俺たちは居た。

 アップもニーナも近くに倒れてはいたけど、気を失っているだけだった。


「スタン!! 戻って来たのか!!」


 振り向くとそこには、ポルトさんが居た。


「あれ、もう帰ってきてたの?」

「何を言ってるんだ。お前たちが居なくなって、こっちではもう1週間たってるんだよ。」

「えっ、1週間!? じゃぁ、グレイスさんは!?」

「グレイスさんは大丈夫だよ。とにかくニーナを運ぼう。スタンもアップも休まないといかん。」


 その後は、ニーナをグレイスさんの家に運び、ウィルにグレイスさんの様子を聞いた。

 俺がダンジョンに入った後、この村に訪れた人がグレイスさんを助けてくれたそうだ。

 まだ眠ったままに放っているけど、体内の魔力の暴走は収まったらしい。


 それで、その人は俺をギルドハウスで待っているとウィルから聞いた。

 それにその人が、俺がニーナを連れて必ず帰ってくるから安心していいと村のみんなに話していたらしい。

 預言者か何かでもやってる人なんだろうか。


 とにかく、俺はギルドハウスに向かいその人に会うことにした。

 たぶんリンドーやモル姉も帰ってきてギルドハウスで俺の事を待っているかもしれない。

 そう思うと早く会いたくなった。


 ちょっとドキドキしながらギルドハウスに入るとそこには・・・

 

「おう、シルシア・・・もういっぺん言ってみろ。」

「聞き間違いだといいのだけれども、事と次第によってはあなたの頭蓋を粉々にしなくてならないわ。人類のために。」


 鬼の形相で柱に括り付けられている人に対し、それぞれの武器を突き付けているリンドーとモル姉の姿があった。

 あまりの恐怖に両足が震える。

 なんてプレッシャーなんだ。


「あ、あぁぁぁぁ、あのぉぉぉぉぉぉ・・・」


 やっとの思いで声を絞り出したが、声が裏返ってしまった。

 二人がこちらを振り向く。


「スタンちゃん!!」

「スタン!! 帰って来たのかこの野郎!! 心配させやがって!!」

「だから~、スタン君は大丈夫だって言ったじゃないか。」


 モル姉がものすごい勢いでこっちにダッシュしてきて抱きしめられた。


「大変だったわね。偉いわ。すごいわ。」

「ぐ・・ぐるじいよぉ、モル姉・・・」


 モル姉が『あら、ごめんなさい。』と俺から手を放す。

 今度はリンドーが俺の頭を力いっぱい撫でてきた。


「よくやったぞスタン。頑張ったな。さすが俺の弟子だ。」

「どうしちゃったのさ、二人とも。」

「お前がニーナを助けにダンジョンに向かったって聞いてな。俺たちが戻った時にはダンジョンの入り口自体はもうどこにも見当たらなかったんだ。」

「そうよ。だからすごく心配したの。でも良かったわ。戻ってきてくれて。」

「そっか、アップがあいつが俺を導いてくれたおかげなんだ。それにニーナも頑張ってくれた。俺一人じゃどうにもならなかったよ。」


 そうだ。

 もしもニーナが自分の魔力を全部使ってでも俺たちを外に出してくれなければ、アップが決して諦めずに立ち上がってくれなければ、あの人たちが残した思いが俺を奮い立たせてくれなかったら・・・。

 俺はきっと今ここに居ない。


「俺、俺何もできなかった。俺が何かをできたとしたら、そのきっかけをくれたのはアップなんだ。俺はずっとあいつに助けられ続けてた。」


 ボロボロになったアップの事を思い出し、そうさせてしまった事が今悔しくて仕方がない。

 俺は、もっと強くなりたい。

 大事な相棒を友達を守れるように。


「リンドー。モル姉。俺弱かった。ステータスが無いとかそういうんじゃなくて、俺自身が弱くて・・・、おれは、俺はもっと強くなりたい・・・っ!!」


 リンドーとモル姉に会えて、アップの相棒でもニーナのお兄ちゃんでもなくなった俺は、目に涙を浮かべてそう訴えた。


「大丈夫だよスタン君。そのために僕が来た。」


 柱に縄で括り付けられた状態でその人はにこやかにそう言った。


「僕はシルシア。冒険者の間じゃ『博識』って呼ばれてるよ。初めまして。僕が君の先生です!!」

「え?」

「まぁ、それはそうと、君の冒険者の腕輪にある『セレノセラム』を使わせてもらっていいかな? それがあればグレイスさんを健康な体にできるんだ。」

「せれの・・・せらむ? 聞いた事ないですけど。あと、俺魔力が使えないというか封印されているというか、自分だと冒険者の腕輪を起動させられないんですよ。」

「ああ、そうだったね。じゃぁ、腕輪を貸してもらえるかな?」

「構わないですけど、これウィルのお父さんの形見なので大事に扱ってください。」

「うん。ありがとう。」


 冒険者の腕輪を手渡すと、シルシアさんは冒険者の腕輪から見知らぬ白く穏やかな光を放つ手のひらサイズの鉱石を取り出した。

 あれ、いつのまにそんなアイテムが入っていたんだ・・・

 ダンジョン攻略の報酬とか・・・かな?


「うん。これなら大丈夫そうだ。少し加工が必要だけど、明日の朝には薬にできるね。」


 なんか話がアレコレ勝手に進んでしまった。


「スタン。こいつはな、ずーーーーーっと昔からこうなんだ。まぁ、悪人ではないからグレイスさんの事はこいつに任せておけ。お前の戦利品、使わせてもらっていいよな?」

「うん。大丈夫だよリンドー。シルシアさんよろしくお願いします。」

「うんうん。まかせてまかせて~。モルデンちゃん。そういうわけだから今日も一部屋借りるね~」

 

 そう言って何かの作業をしに、ギルドハウスの貸し部屋に入っていく。

 それが俺とシルシアさんとの初めての出会いだった。


 

 

 

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