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5-19話 決着と脱出

 成長したスプリカスは戦い方も変わっていた。

 前はカースハウルの高火力で押し切るのがお好みだったようだったけど、今は一瞬で詰めれる間合いをキープして隙を伺いながら爪や牙で襲い掛かって来る。

 爪や牙に魔力を流し込んで効率よく戦うやり方を身に着けたようだ。


 スプリカスの動きについていくため、リンドーの様にオーバーブーストで身体能力を上げ対応しているけどどうやらあっちの方が速さも力強さも上のようだ。

 やっぱ、リンドーの鍛え方は尋常じゃないんだな。

 とはいっても、俺だってリンドー相手に訓練してきたんだ。


 自分より速くて強い相手との戦い方は慣れてる。

 それに、あいつの動きはまだまだ単調だ。

 ストップアンドゴーの切り替えで付いていけない部分があるけど、直線的な動きならその先が読める。


 来るところが分かれば、そこに向けて攻撃しておけばあっちが勝手に当たってくれる


「そこだ!」


 防御から一転、攻勢に出た一撃がスプリカスの顔面を真正面からとらえる。

 見事なカウンターが決まった。


「グハァッ!」


 一方的に追い詰めていると思ったところに思わぬ一撃を貰い、スプリカスは先ほどよりも距離を取った。

 

「しぶとい奴め、だがまぁ、だいたい分かった。防げてはいるが貴様は我の動きに追従しきれていない。」

「ふん。お前の動きを観察してるだけだよ。」

「そう強がるな、こうすればどうかな?」


 スプリカスは飛び上がると、爪や尻尾を振り斬撃として魔力の刃を飛ばしてくる。


「その程度。」


 軽くかわして見せるが、スプリカスは笑みを浮かべながら周囲を駆け回りつつ斬撃を飛ばし続けてくる。

 四方八方から斬撃の雨が降り注ぎ、防ぎきれなくなってしまった。


「ぐぅ・・・」


 俺は経っていることもままならないくらいのダメージを受け、その場に膝をついてしまった。


「なんだ。その程度でもう終わりか。他愛のない。まあ、いいだろう。興味も失せた。早々に終わらせてやる。最後にお前がくれた力の真髄を見せてやろう。」


 そう言うとスプリカスは、口を開き魔力を集中し始めた。

 カースハウルに似ているが、これはカースハウルの何倍もの威力を持った力だ。


「我、世界を呪う者。世界を許さぬ者。」


 膨大な魔力が圧縮されていく。


「絶望よここに集え、永久の闇を世界に。」


 スプリカスの周囲からどんどん闇が広がっていく。


「世界よ絶望に染まれ。アビス・ラメント」


 圧縮された魔力が解放され、とてつもない闇の奔流が迸る。


 まずい。

 このままじゃ、このダンジョンそのものすら崩壊する。

 そう直感した瞬間。


 俺の魔力が感じたこのダンジョンに生きる命たちを感じた。

 空を舞うライゼリクス。

 大地を踏みしめるディノザウラス。


 森に生きる者たち、荒野に住む者たち。

 それらが、スプリカスの放つ魔力に怯えている。

 その中でアップは、アップだけは立ち上がりニーナを守るためこの闇から目を背けなかった。


 その勇気を見た時、あの勇気の味を思い出した時、俺の中に新しいスキルが生まれたのを感じた。


「ブレイブ・エクステンデッド!!」


 スキルを叫ぶと、俺の中に溜まっていた魔力が待っていましたと言わんばかりに闇の奔流を押し返すようにあふれ出す。


「貴様、まだこんな力を・・・ッ!!」


 おそらくこれは、オーバーブーストと原理は同じものだ。

 ただ、エーテルを消費して肉体を強化するオーバーブーストとは異なり、エーテルに加え、プラーナ、ルーン、マナ、4種類の魔力も使用し全能力を飛躍的に高めている。

 これなら戦える。


「これで終わりだ。スプリカス。」


 流れ出す俺の魔力を掌に集め、輝く剣として両手で握りしめる。

 これはたぶん、ステータスを失った後の俺がスキルのイメージ練習で使っていた木刀に似ていた。

 俺がまだ小さくて剣を振えなかった頃にも使っていた、一番長い間俺の努力を見てきた存在だ。


 今の俺にはこれ以上なく頼もしい。

 俺がずっと積み重ねてきたものが今、ここにある。


「我、世界に挑む者」


 そうだ、俺はもう世界を否定しない。

 この世界は悲しいことが多いけど、それだけじゃないって事を忘れちゃいけないんだ。


「絶望に立ち向かう者。」


 俺は何度でも立ち上がって見せる。

 あいつが俺に見せてくれたように。


「我が力、その源は勇気。我が打ち砕くは邪悪、この世界の歪み。」


 俺は冒険者として、俺の護りたい人達を守り抜いて見せる。


「打ち砕け、ブレイブ・スラッシュ!!」


 アビス・ラメントの衝撃の中を光の矢となって突き進む。


「貴様ぁぁぁぁぁぁ!! その力は、我らの魔力でもこの世界の魔力でもない。その力はいったいどこから生まれているというのだ!!」


 スプリカスの正面まで突き進み、大きく振りかぶる。

 

「コレが、人の心が生み出す力、勇気の力だ!!」

「そんなものが、そんなもので、人の力に敗れるなど・・・」

「これで、終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 魔力で作った剣を、スプリカスの顔面に振り下ろし真っ二つに切り裂く。


「グアァァァァァァァァァァァ!!!!!」


 スプリカスは断末魔の叫び声をあげ、消滅する。

 そして、ダンジョンも消滅し、俺たちは気が付けばリジェネア村に帰って来ていた。


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