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頼子と俺  作者: 由起
5/5

転換期

頼ちゃんは高校生活でも子供らしからぬ生活だったので、成績はかなり良かった。また以前芸能界から誘われたこともあったが、高3にもなれば大人の雰囲気も出て来て、目を引くほどだった。


特別休日で俺が休みの日、コンビニに行こうと家から出て少し行くと、頼ちゃんが男子学生と一緒にいた。男子学生が頼ちゃんに何か言って手紙らしきものを渡した。ラブレターのようだ。


胸がチリッとした。


そして男子学生は去っていった。


そうか…そうだよな、頼ちゃんは頭も良くて美人だ。モテるよな。


頼ちゃんが俺に気付いた。


「せいちゃん?!」

「あー…今日休みだし…ちょっと買い物に出たんだけど…」

「…見た…?」

「うん、お前モテるのな。今の男、結構格好良かったじゃないか。やるな、お前!」

「…せいちゃんのバカ!」


涙を浮かべて家の方へ走っていく頼ちゃん。


頼ちゃんの突然の涙に驚いて一瞬怯んだ。

慌てて頼ちゃんを追いかけるが、頼ちゃんは先にエレベーターに乗ってしまい、部屋へ着いていた。


「頼ちゃん…」


頼ちゃんの部屋へ行くが「入らないで!」と叫ばれた。


わかってる。

頼ちゃんの涙の理由は。

頼ちゃんはずっと俺を恋愛対象として見てきた。なのに俺はこれまでずっと気付かぬフリをしてきた。


…俺の気持ちは?

俺自身の気持ちは?


「…入るぞ」

「いやっ!」


俺が入ると頼ちゃんは向こうを向いた。


「…ごめん」

「…知らない!」


俺は頼子の部屋へ無理矢理入ると、向こうを向く頼子を後ろから抱き締めた。


「頼子、ごめん」

「…せいちゃん…」


頼子が俺から一瞬離れ、涙をいっぱい溜めてこちらを向いて抱きついてきた。俺は再びぎゅっと頼子を抱き締めた。


「ごめん、頼子…ごめん」


声にならない声で泣く頼子。

俺が泣かせた。

俺がはっきりしなかった。


「頼子、お前はまだ未成年だ。俺が手出し出来ない未成年なんだ…。だから我慢してきたけど…」


一息ついて一気に言った。


「頼子、お前が好きだ」


一瞬の間があり、頼子が再びぽろぽろと涙を流した。


「せいちゃん…せいちゃん…大好き…」


言葉にならなかったが、俺にはしっかり聞こえた。


暫く抱き締め続けたが、俺には拷問のようだった。

手を出したい。

でも相手はまだ18歳、高校生だ。


「…せいちゃん?」

「ちょっとだけな」


とキスだけした。

また頼子はぽろぽろと涙を流し、俺はまた抱き締めた。


落ち着いた頼子の横に座った。


「頼子、俺の嫁になるか?」

「うん!」

「いや、お前、よく考えろよ?俺はもう33だし、オッサンだぜ?」

「せいちゃんがいい」

「だからよく考えろって」

「せいちゃんがいい!」


はぁ…


「おふくろんとこ、行くか?」

「え?」

「挨拶にだよ!」

「せいちゃん…」

「嫁に来てもお前、せっかく勉強出来るんだから、大学は行け!社会人にもなれ。それから子供だ。俺は子供が大学卒業までなんとか仕事し続けるから」


ぎゅっと隣の頼子の肩を抱き締め、

「おふくろにOK貰ってから手を出す」

と頼子の方を見ずに真っ正面を向いて俺は言った。


次の日曜日に両親のところへ行った。

「結婚したいんだけど」

と言うと「手を出したの!?」と言われた。


「いや、まだ…」

「はぁ、良かった。頼子ちゃん未成年でしょ?頼子ちゃんのおばあさんがお一人いらっしゃるじゃない?おばあさんに許可を得てからにしなさい」

「でも…祖母は私のことあまりよく思ってなくて…」

「それでもちゃんと婚姻届に一筆書いて貰いなさい。でないと誠司、お前訴えられたら負けるよ?」

「はい…」


「おばさん…は…?」

頼子はそうっとおふくろを見た。

おふくろはジロッと頼子を睨んで言った。


「誰が"おばさん"なの!お母さんと呼びなさい!」

「…お母さん!ありがとうございます!」


頼子がおふくろに飛び付いて抱きついた。


「いいわねぇ、泰子もこんな素直だったらねぇ」

「アイツは無理だよ、おふくろ…」


翌週頼子の祖母へ会いに行った。父方の祖母で、頼子の母をよく思っていなかったから、頼子達兄妹も嫌っていた。


だからアイツが遺した遺産の遺留分はキッチリ貰いながら、頼子の引き取りを拒否した経緯がある。


「何、結婚?女の子を引き取ったっていうからおかしいとは思ったけどやっぱりね。で、お前も男たらしな訳だ。アバズレの子はアバズレだね」


頼子が口を開きそうだったが、俺が制した。


「頼子さんはまだ未成年です。しかし頼子さんが私の配偶者になれば、今後あなた方が頼子さんへ何かしなければならないことは一切無くなります。今後は全部夫となる私の責任になります。ですから一筆書いていただけませんでしょうか」


責任が無くなるという言葉が祖母をくすぐった。

チラリと見て何かを要求するような顔をして「でも、ねえ?」と言った。


「書いていただけましたら…」とわかってますよ、という風ににこっと俺が微笑み、ちらりと分厚い封筒を見せると、渋々書いた。


「ありがとうございます。おばあさん、これで美味しいものでも召し上がってください」

と封筒を渡した。すぐ開けられないように糊で封をしておいた。


用事は終わった。

だからそのまますぐ失礼した。


「あんな人にお金なんか渡さなくていいのに!」


頼子が憤慨した。


「でもね、俺が未成年者婬行で訴えられたら負ける可能性もあるから、ね」

「…せいちゃん、ごめんね」

「俺が決めたから。謝ることは何もないよ」


婚姻届には俺の両親が証人となった。


あとは学校だ。

親族との関係で早く提出したいとお願いし、頼子は旧姓のまま残る半年程の学生生活を過ごせることになった。先生からは進学のことを聞かれたが、大学と社会人経験はさせると俺が言い切ったので、安堵された。


そして学校に報告した後、婚姻届を提出した。

頼子は二宮頼子になった。


「式は卒業してから、な?」


その夜初めて俺達は夫婦になった。



「お母さんは若い男の人に興味なかったの?」

娘が聞いた。

「あったわよ」

「じゃあなんで15も上のお父さんなの?」

「好きだったから」

「えー」

「好きには年齢なんか関係ないのよ」

と頼子は笑った。

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