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昨日の敵は今日の〇〇??  作者: 蓮野ツバキ
魔王との遭遇編
16/22

第16話 昨日のゾンビは今日の死者使い??

 俺たちは今、とある廃屋(はいおく)の中にいる。

 中世のヨーロッパにありそうな感じの、古き良き時代を連想させる姿をしているこの廃屋は、なんとなんと、10年前に建てられたばかりだそうだ。

 もちろん、廃屋と言われるだけあって、中はもう酷い有様だ。だが、見た目だけならば、全く問題なさそうだと感じられる。

 なぜなら、ゲインが時々様子見に来ているようで、その時に、ガーデニングをしているからだ。

 秘書(まだ俺らは会ったことない)のアドバイスを受けて始めたと、そうゲインは語っている。

 真実か嘘かは置いておいて、ゲインの以外な……以外すぎるかもしれない一面を知り、俺らはちょっとばかりほっこりした気分になっていた。

 しかしそれも束の間、俺らはその気分を無残に砕かれたのだ。


「なんだよっ!このっ!」


 絶賛戦闘中!な俺。

 しかし、怒りゲージはすでにMAXだ。もしかしなくても、とっくのとうに限界突破している。

 相手がゾンビだからだろうか。復活と再生が多すぎて、すごく憎たらしい。


「ふざっ!………けんなぁぁぁぁぁぁぁ!早く消えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「ウガァ!」


 俺の剣を受けて、大ダメージが通るやつもいれば、延々と復活してくるかったるいやつもいる。ゾンビと言えど、三者三様だ。

 俺が現在いるのは、2階の大広間。リアはというと、「私の魔法に消えるがいいわ!」とか言って、先に行ってしまった。

 そして、ギルドマスターであるゲインはというと……


「頑張ってねー。僕が後ろにいるから、死んでも平気だよー。」


 ……俺の後方で、応援のようなものをしてくる。

 本当はリアを追いかけてほしかったのだが、ゲインが大丈夫だというので、そうすることにした。


「ウ~ガ~」

「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 てなわけで、俺だけが今、残酷な運命……もとい、ゾンビたちとの戦闘をしているというわけなのだ。


「いい加減に消えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!飛翔する剣(ソードウィンガー)ァァァァァァァァァァ!」


 俺は、この部屋のラスボスっぽい巨大ゾンビに向かって、新技を放つ。

 巨大ゾンビは四方八方から切り裂かれ、前に倒れこむ。そこへ……


光の剣シャイニングスラッシュ!」


 追撃を放つ。

 さすがにこれには、耐えきれないご様子。巨大ゾンビは天に召されていきました。


「ふぅ。さすがに少しきついな。」


 そう言いながら、わざとらしく溜息を1つ。

 もちろん、ゲインに向けたものである。


「お疲れ様。とっても良かったと、僕は思うよ。君たちを連れてきてよかったよ。」

「お前こそ、本当のことを言った方が身のためだと思うんだがな。……ったく、『魔王』だったら一瞬で終わらせられることを、何で俺たちにやらせるんだよ?」

「そーだね。」


 のほほーんとした様子で、俺に返事を返してくる。

 この様子だと、何かを語り始める場面だろう。


「まずは、どこから話そうか?」


 案の定、話す態勢になったので、俺はいすに腰掛ける。


「じゃあ、徹底的に聞かせてもらおうか。」

「どうぞどうぞ。」

「じゃあ1つ目。お前とこいつらの関係は?」


 御影流速攻質問攻め攻撃!

 相手にとって、「そこからか!」と感じるところから攻め込む。そうすることで、相手は動揺する。そうゆうテクニックだ。

 ちなみに、考えたのは俺の姉。くっそ下手なネーミングセンスもそこから来ている。

 まぁ、相手が強い心を持っているなら、意味ないが。


「そっか、そこからなんだ……。」


 いいところに入ったようである。質問続行!……と言いたいが、残念なことに話を始めるようだ。

 でもまぁ、答えてくれるならいいか。


「ごめんね。まずは、君に謝らないといけない。」

「すでに謝っているような言い方なんだが、まぁそれはいい。……で、何を謝りたいんだ?」

「とっても言いにくいことなんだけど……、このゾンビたちは、僕が復活させたんだ。」

「なんだ。てっきりもっと重大なことかと……。たかがゾンビを復活させてたのが、お前だってことで俺が驚くとでも………、エェェェェェェェェェェア!」


 やっべ、驚きすぎて変な声出た。


「……マジっすか?」

「うん。僕の能力だよ。説明するより、ギルドカード見せた方がいいよね。」


 カナタに、ゲインのギルドカードが手渡される。ちょっと高級っぽい、ギルドマスター専用のやつだ。

 そこには、とんでもない記録が書かれていた。




 ゲイン・ディー 17歳

 属:人間

 職:『魔王』

   『死者使い(ネクロマンサー)

   『ギルドマスター』

 レベル:1000

 ステータス:攻撃力7500

       防御力5000

       魔力100000

       回復力100000

 加入:冒険者ギルド(マスター)

    『魔勇同盟』

 能力:魔法レベル10000

 技:完全回復(フルヒール)

   黄泉の降霊術(リターンクロス)




「恐れ入りました。」


 もう、言葉になりません。


「どうもどうも。」


 こちらに合わせるように、ゲインが返す。ほんと、ギルドマスターって話しやすいやつばっかだな。(カナタの勝手な思い込みです)


「まぁ、なんというか。見ての通りだよ。」

「ああ、十分に理解させてもらった。」


 ステータスからして、相当の『死者使い(ネクロマンサー)』なんだろう。そんなやつの仕業なら、このゾンビ軍も納得できる。

 俺が床を蹴りながらそんなことを考えていると、ゲインが笑いながら告げた。


「我ながら本当にバカだったよ。ゾンビを作っておいて、自分で消せないなんて。」

「…………はぁ。」


 俺は溜息をつきながら、戦闘態勢に入った。また、ゾンビが奥から来ている。

 今度の敵は大物の気迫だ。気合いを入れて戦った方がいいだろう。

 そしてまた、溜息を1つ。


「いいじゃねーか、『死者使い(ネクロマンサー)』。俺はカッコいいと思うぜ。……でも、後処理の手伝いぐらいしろよな。」


 俺がそう言うと、隣にゲインが並んだ。どうやら、加勢してくれるらしい。

 男2人の戦いに何かカッコいい感じを覚える。リアがいない戦闘は久しぶりだ。


「後方支援中心だけど、僕の力を見せてあげるよ。この世界の…………」




「『魔王』の力を!」

 以上、ゾンビ回1回目でした。

 次回もゾゾっとするかも?

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