第16話 昨日のゾンビは今日の死者使い??
俺たちは今、とある廃屋の中にいる。
中世のヨーロッパにありそうな感じの、古き良き時代を連想させる姿をしているこの廃屋は、なんとなんと、10年前に建てられたばかりだそうだ。
もちろん、廃屋と言われるだけあって、中はもう酷い有様だ。だが、見た目だけならば、全く問題なさそうだと感じられる。
なぜなら、ゲインが時々様子見に来ているようで、その時に、ガーデニングをしているからだ。
秘書(まだ俺らは会ったことない)のアドバイスを受けて始めたと、そうゲインは語っている。
真実か嘘かは置いておいて、ゲインの以外な……以外すぎるかもしれない一面を知り、俺らはちょっとばかりほっこりした気分になっていた。
しかしそれも束の間、俺らはその気分を無残に砕かれたのだ。
「なんだよっ!このっ!」
絶賛戦闘中!な俺。
しかし、怒りゲージはすでにMAXだ。もしかしなくても、とっくのとうに限界突破している。
相手がゾンビだからだろうか。復活と再生が多すぎて、すごく憎たらしい。
「ふざっ!………けんなぁぁぁぁぁぁぁ!早く消えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ウガァ!」
俺の剣を受けて、大ダメージが通るやつもいれば、延々と復活してくるかったるいやつもいる。ゾンビと言えど、三者三様だ。
俺が現在いるのは、2階の大広間。リアはというと、「私の魔法に消えるがいいわ!」とか言って、先に行ってしまった。
そして、ギルドマスターであるゲインはというと……
「頑張ってねー。僕が後ろにいるから、死んでも平気だよー。」
……俺の後方で、応援のようなものをしてくる。
本当はリアを追いかけてほしかったのだが、ゲインが大丈夫だというので、そうすることにした。
「ウ~ガ~」
「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
てなわけで、俺だけが今、残酷な運命……もとい、ゾンビたちとの戦闘をしているというわけなのだ。
「いい加減に消えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!飛翔する剣ァァァァァァァァァァ!」
俺は、この部屋のラスボスっぽい巨大ゾンビに向かって、新技を放つ。
巨大ゾンビは四方八方から切り裂かれ、前に倒れこむ。そこへ……
「光の剣!」
追撃を放つ。
さすがにこれには、耐えきれないご様子。巨大ゾンビは天に召されていきました。
「ふぅ。さすがに少しきついな。」
そう言いながら、わざとらしく溜息を1つ。
もちろん、ゲインに向けたものである。
「お疲れ様。とっても良かったと、僕は思うよ。君たちを連れてきてよかったよ。」
「お前こそ、本当のことを言った方が身のためだと思うんだがな。……ったく、『魔王』だったら一瞬で終わらせられることを、何で俺たちにやらせるんだよ?」
「そーだね。」
のほほーんとした様子で、俺に返事を返してくる。
この様子だと、何かを語り始める場面だろう。
「まずは、どこから話そうか?」
案の定、話す態勢になったので、俺はいすに腰掛ける。
「じゃあ、徹底的に聞かせてもらおうか。」
「どうぞどうぞ。」
「じゃあ1つ目。お前とこいつらの関係は?」
御影流速攻質問攻め攻撃!
相手にとって、「そこからか!」と感じるところから攻め込む。そうすることで、相手は動揺する。そうゆうテクニックだ。
ちなみに、考えたのは俺の姉。くっそ下手なネーミングセンスもそこから来ている。
まぁ、相手が強い心を持っているなら、意味ないが。
「そっか、そこからなんだ……。」
いいところに入ったようである。質問続行!……と言いたいが、残念なことに話を始めるようだ。
でもまぁ、答えてくれるならいいか。
「ごめんね。まずは、君に謝らないといけない。」
「すでに謝っているような言い方なんだが、まぁそれはいい。……で、何を謝りたいんだ?」
「とっても言いにくいことなんだけど……、このゾンビたちは、僕が復活させたんだ。」
「なんだ。てっきりもっと重大なことかと……。たかがゾンビを復活させてたのが、お前だってことで俺が驚くとでも………、エェェェェェェェェェェア!」
やっべ、驚きすぎて変な声出た。
「……マジっすか?」
「うん。僕の能力だよ。説明するより、ギルドカード見せた方がいいよね。」
カナタに、ゲインのギルドカードが手渡される。ちょっと高級っぽい、ギルドマスター専用のやつだ。
そこには、とんでもない記録が書かれていた。
ゲイン・ディー 17歳
属:人間
職:『魔王』
『死者使い』
『ギルドマスター』
レベル:1000
ステータス:攻撃力7500
防御力5000
魔力100000
回復力100000
加入:冒険者ギルド(マスター)
『魔勇同盟』
能力:魔法レベル10000
技:完全回復
黄泉の降霊術
「恐れ入りました。」
もう、言葉になりません。
「どうもどうも。」
こちらに合わせるように、ゲインが返す。ほんと、ギルドマスターって話しやすいやつばっかだな。(カナタの勝手な思い込みです)
「まぁ、なんというか。見ての通りだよ。」
「ああ、十分に理解させてもらった。」
ステータスからして、相当の『死者使い』なんだろう。そんなやつの仕業なら、このゾンビ軍も納得できる。
俺が床を蹴りながらそんなことを考えていると、ゲインが笑いながら告げた。
「我ながら本当にバカだったよ。ゾンビを作っておいて、自分で消せないなんて。」
「…………はぁ。」
俺は溜息をつきながら、戦闘態勢に入った。また、ゾンビが奥から来ている。
今度の敵は大物の気迫だ。気合いを入れて戦った方がいいだろう。
そしてまた、溜息を1つ。
「いいじゃねーか、『死者使い』。俺はカッコいいと思うぜ。……でも、後処理の手伝いぐらいしろよな。」
俺がそう言うと、隣にゲインが並んだ。どうやら、加勢してくれるらしい。
男2人の戦いに何かカッコいい感じを覚える。リアがいない戦闘は久しぶりだ。
「後方支援中心だけど、僕の力を見せてあげるよ。この世界の…………」
「『魔王』の力を!」
以上、ゾンビ回1回目でした。
次回もゾゾっとするかも?




