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昨日の敵は今日の〇〇??  作者: 蓮野ツバキ
魔王との遭遇編
17/22

第17話 昨日の思い出は今日のゾンビ??

1か月ぶりの更新です。

いろいろあって、遅くなりました。

 ゲインが隣で叫んだと同時に、戦闘が始まった。奴が一気に詰め寄ってくる。

 それを見たゲインは、俺の前に出て、防御態勢に入った。

 あっという間に魔法陣が構築され、そこらに散らばった死体が集まってくる。


死者の盾(デッドマンズ)!」


 散らばっていた死体が1つの盾になり、奴の攻撃を止める。

 その隙を突いて、今度は攻撃態勢になる。


「カナタ!今度はこっちの番だよ!攻撃の準備を!」

「お、おう!」


 ゲインが先陣を切り、俺がその後に続く形になる。

 俺は、颯の剣(スピードスラッシュ)を放つ態勢をとり、ゲインの指示を待つ。


「僕は攻撃の後、上に回避する!まっすぐ剣を叩き込め!」


 案の定、ゲインが指示を出す。

 全く違った雰囲気に驚きながらも、そのチャンスのために、俺は真剣にゲインの真後ろを狙う。


死の黒光(デッド・レイ)!」


 ゲインの攻撃。

 足元に散らばった雑魚ゾンビの口から、黒い光が放たれる。それはまるで、レーザービームのようで、とても綺麗だった。

 何かのショーだったら全然許せるのだが、奴やその周りのものを真っ二つに切り裂いていたので、とてもヤバい光景になってしまっていた。

 ……正直、グロかった。

 何はともあれ、これでやっと、俺の番。

 俺は、ゲインが上に回避したのを見て、ど真ん中に技をぶっ放つ。


「はぁぁぁぁぁーーーーー!」


 ドゴォンと、地響きのように、衝撃がぶつかる音がした。

 砂煙を払うように剣を振り、そこにいた奴を確認する。

 奴の腹に、大きな穴ができているのが確認できた。


「討伐完了、だね!」


 ゲインが俺の肩をポンと叩く。

 以外に素早く討伐できたので、俺はほっとして、その場に座り込んだ。


「さっすが『魔王』様。ほとんどあんたのおかげだな。」

「君こそ!最後の一撃、本当にお見事だった!僕のゾンビの腹を、ぶち抜くなんてね。」


 まさに天を仰ぐように、窓の隙間から星空を眺めるゲイン。

 そういえば今は、真夜中だった。


「あれは僕の、5歳の時の自信作だったんだ。だから僕は止めを刺したくなかった。けどもう、……これで大丈夫だね。」

「ゲイン……」


 少しばかり寂しそうなゲインを見て、俺は一瞬、どうするべきか悩んだ。

 でも、この戦いの中で、ゲインの真剣さが伝わって、俺の覚悟を決めてくれた。

 たとえ『魔王』でも、時には俺が助けるべきなんじゃないかどうか。最近、そう感じ始めた。

 この戦いで、俺が感じたのは、ゲインはいいやつだということ。それだけで十分、俺が助ける価値があると思う。

 俺は、ゲインを助けることにした。


「確かに、5歳の時の自信作だったら、愛着がわく。俺だってそうだった。でも、それを放っておくのは止めた方がいい。」

「……どうして、そう言い切れるんだい?」

「そらねぇに……、姉ちゃんに何度も言われたんだよ。片付けなかったら、片付けられなかったものが可哀そうなんじゃないか、って。」

「いいお姉さんだね。確かにそうだ。僕には、片付ける勇気がなかったのかもしれない。」


 そう言って、空を見上げるゲインの顔に何かが光った気がした。


「ありがとう、カナタ。君のおかげで、少しだけ勇気が出た気がするよ。」

「そいつはどうも。」


 少し切ない感覚を覚えながら、カナタは立ち上がる。

 まだカナタには、やるべきことがあるのだ。


「さて、俺はこれからもう1人の『魔王』様を探しに行くが、お前はどうする?」

「ありがとう。もう少しだけここにいるよ。」


 ゲインはそう言うと、先ほど奴がいた方向を眺める。

 俺はそんなゲインを見ながら、リアを探すために、部屋の外に足を向けるのだった。






 端的に言うと、リアはすぐに見つかった。……が、問題なのはリアではなかった。

 リアの周りに引っ付き、うねうねとしながら、リアの服を溶かす青い生き物。

 そのせいで、リアは半裸状態になりながら、戦っていたらしい。


「うわぁぁぁぁぁん!カナタぁぁぁぁぁ!」


 流石の『魔王』様も、これには耐えきれなかったようである。必死に俺のもとに来て、泣きながら俺に抱きついてきたのだ。

 リアは今、直視できる状態にはないのだが、すかさずそれを振り払う。

 青いその生き物は、他でもない、スライムだった。

 異世界の定番と言えるスライムさんは、ポウンという音を立てながら、地面を徘徊している。


「大丈夫か、『魔王』様。」

「カナタぁぁぁぁぁ!どこ行ってたのよぉぉぉぉぉ!」

「どこ行ってたって、……お前が勝手に走ってったんだろ。」

「そんなのどーだっていいわよぉぉぉぉぉ!」


 興奮気味のリアに対して呆れながらも、自分の上着をリアに差し出す。


「早くこれ着ろバカ『魔王』。今のお前はすっぽんぽんなんだぞ。」

「カナタのえっち。そんなん分かってるわよ、バカ……。」


 必死で涙をこらえながら、俺の渡した上着を着る。

 とりあえず、一時的な処置にはなった。

 なんとか移動はできるようなので、リアと共に、廃屋から出る方向に向かい始める。

 途中でゲインと合流できたのは、とても幸いだった。しかし、からかってきたので、少し腹が立った。

 まぁそんな、行きとは全く違う状態になりながらも、俺たちはなんとか、クエストをクリアすることができた。

 この世界の、初めてのクエストにしては、結構経験になったなぁと思う。

 なにせ、一発目から『魔王』との共闘。とても良かった。


「ねぇ、カナタ。」

「ん、どうしたリア。」

「今日はごめんなさい。私が突撃したせいで、こんな面倒なことになって。」

「別に構わねぇよ。仲間なんだしさ。」

「……そう。ありがと。」


 俺の言葉に感謝しているのか、今日はいつものツンに切れがない。

 その上、顔も少し赤くなっている。スライムのせいだろうか?

 こっちの世界に来てから度々こうなっていることに、俺は少し関心しているのだが、それと同時に不安も感じている。

 いつもの調子のリアこそが、リアなんだと。俺はそう感じていた。しかし、こっちに来て、新しい一面を見たことで、少し分からなくなってしまった。

 まぁ、ツンデレというのはこうあるべきなんだろうが、それでも俺は不安を感じている。

 これが一体、どこから来ている感情なのかは、俺にはまださっぱりだ。

 でも、少しずつでも、リアのことを理解したい。それが俺の本心だった。


「なぁ、リア。帰ったらまた、うまい飯を食いに行こうか。俺が奢るからさ。」

「ほんとに!?たらふく食べてもいいの!?」

「もちろんだ。パァーと行こうぜ!」

「分かったわっ!そうと決まれば早く行きましょ!ご馳走が首を長ーくしてまってるんだからっ!」


 リアが嬉しそうに手を引っ張ってくる。

 少し涙で濡れていたが、やわらかくて小さい、女の子らしい手だった。

 俺は、恥ずかしさを感じながらも、手を握り返し、少しずつだが、走り始めた。

 辺り一面に広がる、街並みの明かりに向かって。

この「魔王との遭遇編」は、早くも、あと少しで終わりです。

切りのいいところで、桃香サイドも書いてみようと思ってます。

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