第17話 昨日の思い出は今日のゾンビ??
1か月ぶりの更新です。
いろいろあって、遅くなりました。
ゲインが隣で叫んだと同時に、戦闘が始まった。奴が一気に詰め寄ってくる。
それを見たゲインは、俺の前に出て、防御態勢に入った。
あっという間に魔法陣が構築され、そこらに散らばった死体が集まってくる。
「死者の盾!」
散らばっていた死体が1つの盾になり、奴の攻撃を止める。
その隙を突いて、今度は攻撃態勢になる。
「カナタ!今度はこっちの番だよ!攻撃の準備を!」
「お、おう!」
ゲインが先陣を切り、俺がその後に続く形になる。
俺は、颯の剣を放つ態勢をとり、ゲインの指示を待つ。
「僕は攻撃の後、上に回避する!まっすぐ剣を叩き込め!」
案の定、ゲインが指示を出す。
全く違った雰囲気に驚きながらも、そのチャンスのために、俺は真剣にゲインの真後ろを狙う。
「死の黒光!」
ゲインの攻撃。
足元に散らばった雑魚ゾンビの口から、黒い光が放たれる。それはまるで、レーザービームのようで、とても綺麗だった。
何かのショーだったら全然許せるのだが、奴やその周りのものを真っ二つに切り裂いていたので、とてもヤバい光景になってしまっていた。
……正直、グロかった。
何はともあれ、これでやっと、俺の番。
俺は、ゲインが上に回避したのを見て、ど真ん中に技をぶっ放つ。
「はぁぁぁぁぁーーーーー!」
ドゴォンと、地響きのように、衝撃がぶつかる音がした。
砂煙を払うように剣を振り、そこにいた奴を確認する。
奴の腹に、大きな穴ができているのが確認できた。
「討伐完了、だね!」
ゲインが俺の肩をポンと叩く。
以外に素早く討伐できたので、俺はほっとして、その場に座り込んだ。
「さっすが『魔王』様。ほとんどあんたのおかげだな。」
「君こそ!最後の一撃、本当にお見事だった!僕のゾンビの腹を、ぶち抜くなんてね。」
まさに天を仰ぐように、窓の隙間から星空を眺めるゲイン。
そういえば今は、真夜中だった。
「あれは僕の、5歳の時の自信作だったんだ。だから僕は止めを刺したくなかった。けどもう、……これで大丈夫だね。」
「ゲイン……」
少しばかり寂しそうなゲインを見て、俺は一瞬、どうするべきか悩んだ。
でも、この戦いの中で、ゲインの真剣さが伝わって、俺の覚悟を決めてくれた。
たとえ『魔王』でも、時には俺が助けるべきなんじゃないかどうか。最近、そう感じ始めた。
この戦いで、俺が感じたのは、ゲインはいいやつだということ。それだけで十分、俺が助ける価値があると思う。
俺は、ゲインを助けることにした。
「確かに、5歳の時の自信作だったら、愛着がわく。俺だってそうだった。でも、それを放っておくのは止めた方がいい。」
「……どうして、そう言い切れるんだい?」
「そらねぇに……、姉ちゃんに何度も言われたんだよ。片付けなかったら、片付けられなかったものが可哀そうなんじゃないか、って。」
「いいお姉さんだね。確かにそうだ。僕には、片付ける勇気がなかったのかもしれない。」
そう言って、空を見上げるゲインの顔に何かが光った気がした。
「ありがとう、カナタ。君のおかげで、少しだけ勇気が出た気がするよ。」
「そいつはどうも。」
少し切ない感覚を覚えながら、カナタは立ち上がる。
まだカナタには、やるべきことがあるのだ。
「さて、俺はこれからもう1人の『魔王』様を探しに行くが、お前はどうする?」
「ありがとう。もう少しだけここにいるよ。」
ゲインはそう言うと、先ほど奴がいた方向を眺める。
俺はそんなゲインを見ながら、リアを探すために、部屋の外に足を向けるのだった。
端的に言うと、リアはすぐに見つかった。……が、問題なのはリアではなかった。
リアの周りに引っ付き、うねうねとしながら、リアの服を溶かす青い生き物。
そのせいで、リアは半裸状態になりながら、戦っていたらしい。
「うわぁぁぁぁぁん!カナタぁぁぁぁぁ!」
流石の『魔王』様も、これには耐えきれなかったようである。必死に俺のもとに来て、泣きながら俺に抱きついてきたのだ。
リアは今、直視できる状態にはないのだが、すかさずそれを振り払う。
青いその生き物は、他でもない、スライムだった。
異世界の定番と言えるスライムさんは、ポウンという音を立てながら、地面を徘徊している。
「大丈夫か、『魔王』様。」
「カナタぁぁぁぁぁ!どこ行ってたのよぉぉぉぉぉ!」
「どこ行ってたって、……お前が勝手に走ってったんだろ。」
「そんなのどーだっていいわよぉぉぉぉぉ!」
興奮気味のリアに対して呆れながらも、自分の上着をリアに差し出す。
「早くこれ着ろバカ『魔王』。今のお前はすっぽんぽんなんだぞ。」
「カナタのえっち。そんなん分かってるわよ、バカ……。」
必死で涙をこらえながら、俺の渡した上着を着る。
とりあえず、一時的な処置にはなった。
なんとか移動はできるようなので、リアと共に、廃屋から出る方向に向かい始める。
途中でゲインと合流できたのは、とても幸いだった。しかし、からかってきたので、少し腹が立った。
まぁそんな、行きとは全く違う状態になりながらも、俺たちはなんとか、クエストをクリアすることができた。
この世界の、初めてのクエストにしては、結構経験になったなぁと思う。
なにせ、一発目から『魔王』との共闘。とても良かった。
「ねぇ、カナタ。」
「ん、どうしたリア。」
「今日はごめんなさい。私が突撃したせいで、こんな面倒なことになって。」
「別に構わねぇよ。仲間なんだしさ。」
「……そう。ありがと。」
俺の言葉に感謝しているのか、今日はいつものツンに切れがない。
その上、顔も少し赤くなっている。スライムのせいだろうか?
こっちの世界に来てから度々こうなっていることに、俺は少し関心しているのだが、それと同時に不安も感じている。
いつもの調子のリアこそが、リアなんだと。俺はそう感じていた。しかし、こっちに来て、新しい一面を見たことで、少し分からなくなってしまった。
まぁ、ツンデレというのはこうあるべきなんだろうが、それでも俺は不安を感じている。
これが一体、どこから来ている感情なのかは、俺にはまださっぱりだ。
でも、少しずつでも、リアのことを理解したい。それが俺の本心だった。
「なぁ、リア。帰ったらまた、うまい飯を食いに行こうか。俺が奢るからさ。」
「ほんとに!?たらふく食べてもいいの!?」
「もちろんだ。パァーと行こうぜ!」
「分かったわっ!そうと決まれば早く行きましょ!ご馳走が首を長ーくしてまってるんだからっ!」
リアが嬉しそうに手を引っ張ってくる。
少し涙で濡れていたが、やわらかくて小さい、女の子らしい手だった。
俺は、恥ずかしさを感じながらも、手を握り返し、少しずつだが、走り始めた。
辺り一面に広がる、街並みの明かりに向かって。
この「魔王との遭遇編」は、早くも、あと少しで終わりです。
切りのいいところで、桃香サイドも書いてみようと思ってます。




