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薄明の星空に 第一章 宵の口 夏の夜空ナーシャ  作者: 莉咲
第一章 宵の口 夏の夜空ナーシャ

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『だから…雨は嫌いだ』

本作品は三部作となっており、

三つの物語のうち、どの物語から読み始めて頂いて大丈夫です。

読む順番を変えて読んで頂くと、感じ方の異なる結末を味わって頂けます。

雨が上がり湿気で蒸し暑い中、母親の葬儀が終わり母方のお墓に納骨に来ていた。


三日前、母親が他界した。

齢三十八歳と早死とされる歳で、栄養疾患による心不全とのことだった。


明後日は、僕の十四歳の誕生日で二人で一緒にケーキを食べてお祝いをする予定のはずだったのに。


昔からそうだ。大切な日に限って雨が降る。

まるで、僕に悲劇を届けにやってくるかのように。


三年前のあの日、学校の宿泊学習の当日も雨が降っていた。

予定されていたキャンプファイヤーは中止になり、

宿泊学習が終わり家へ帰宅をすると、母親から離婚の話を告げられた。


離婚の理由は、父親の不倫だった。

不倫が見つかったその日も雨が降っていたらしい。


他にも、楽しみにしていた家族旅行の当日にインフルエンザになった日も、

親友をいじめから助けてあげられず失ったあの日も、雨が降っていた。


『だから...雨は嫌いだ』


いつも、僕に悲劇を届けにやってくるから。


納骨後、親戚に挨拶などをしていたら帰りが夕方になり、

今日からお世話になる母親の実家にお邪魔した。


「それじゃ優ちゃん、十八時までゆっくりしててね」


「ありがとう、お祖母ちゃん」


どっと疲れが出てきた僕は、今日から僕の部屋となる二階の六畳半の小さな部屋のベッドに横になった。


母親が亡くなってからずっと、心が空白になった感じだ。

大好きだった曲も今は何も心に響かない。

今はただ、静寂の中に響いているカエルの声に耳を澄ました。


 ――――――――――


「優、ごめんね。お母さんこんなになっちゃって」


「母さんは何も悪くないよ。僕も母さんの力になってあげられなくてごめん」


「そんなことない。部活も入りたかったはずなのに毎日お母さんの手伝いをしてくれて、

お母さんとっても助かってたよ」


少しの間、病室に沈黙の時間が流れた。


「優は優しいから誰かのためにいつも手を貸して、お母さん優のこととっても尊敬してる。

だけどお母さん、優にはもっと自分のために生きて欲しいな。そして幸せになって欲しい」


「何を言ってるの?お母さんは長生きするよね。体が良くなってまた星空を見に行くって約束したもんね」


「優、生まれてきてくれてありがとうね...」


「お母さん、僕の方こそ生んでくれてありがとう。大好きだよ」


僕は母親の声色を聴き、もう長くないことを察した。

今まで母と過ごした日々を思い出しこみ上げてくる涙を、無邪気な子供の様に泣き叫びたい気持ちを抑え、可愛げのない顔で笑って答えた。


それが最後の会話だった。

次の日、母親は他界した。


 ―――――――――― 


目を覚ますと、いまさら一粒の涙が零れ落ちていた。

零れた涙を拭いてからふと、カーテンを開けると悲しくも美しく母親の好きだった薄明の空が広がっていた。


「優ちゃん、ご飯よ!」


お祖母ちゃんの呼ぶ声が聞こえ、そうして僕は部屋を出た。


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