表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/35

9 隊長-2-

 病棟を出たアナグマたちは、通りから離れた場所にある小さな建物に案内された。


 一見すると古そうだが、頑丈な造りだ。


 ひとつしかない入口には武装した男たちが立っている。


「規則ですので」


 男のひとりが近づき、三人に手錠をかけた。


「またか……」


 囚われの身に逆戻りになったダージはあてつけがましくつぶやいた。


 しかしそこに嫌悪感はない。


 まだ心を許せる連中ではないが、カイロウを保護し治療にあたってくれたという点においては、警戒心を解いてもよいのではないか……と三人は思い始めていた。


「こっちだ」


 レイテルに促されて建物の中へ。


 入ってすぐの一室に通されたアナグマたちは、先ほどと同じように尋問される恰好となった。


「質問はひとつだけだ」


 が、この華々しい経歴を持つ男は言うべきことはすべて言った、という顔で切り出す。


「留まるか、今すぐ帰るか」


「無理やり連れてきておいて、ずいぶんな言い草だな」


「言葉が足りなかったな。しばらくならここに留まってもいい」


 アナグマの指摘に彼はすぐに言葉を付け加えた。


「気の毒だがあの男は長くはあるまい。見送るまで滞在してもいい。ただ捕虜扱いだから自由は約束できない」


「縁起でもないことを言うな!」


 キンケルが立ち上がり、キッとにらみつける。


 アナグマもあやうくそうしかけたが、彼が実際に行動に移したことでかえって冷静になることができた。


「事実だ。言っただろう。うちの医療スタッフは優秀だ。最善を尽くしたんだ」


「そのことには感謝する。おかげで俺たちも隊長と話すことができた」


 ダージはキンケルをなだめると、素直に謝意を述べた。


「もし本当に助からないなら――」


 隊員を呼び、皆で見送りたいとアナグマは申し出た。


 当然、レイテルは首を縦には振らない。


「それはできない。本来ならあの男を保護することも、お前たちを連れてきたことも許されていないんだ」


 今回はあくまで例外的な措置だったと彼は強調する。


 であれば考えるまでもなかった。


 提案を受け入れるのは癪だし、完全に信用できる相手でもなかったが、カイロウのために何ができるか――を思えば答えはひとつしかない。


「――分かった」


 レイテルは彼らの答えにうなずくと、手錠がしっかりかけられているかをチェックした。


「奥に部屋を用意しよう。この建物内なら自由にしてもらってかまわない。だが外に出るときは念のために手錠をかけて、見張りをつける。外に出るといっても、ここと病室の往復くらいだろうが」


 そう言われてアナグマはようやく、この建物が捕虜を収容する施設だと気づく。


 見回してみても飾り気のあるものは何ひとつ置いていない。


 仕事場でもなければ人を招くような場所でもないから、あるのは必要最低限の家具だけだ。


 しかしそれで問題はない。


 彼らは観光に来たのではない。


 ただ、余命わずかなカイロウの最期を看取るだけである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ