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8 世界の真実-5-

 時が流れた。


 長い、長い、時だ。


 この部屋には時計がなかった。


 連行される際、アナグマたちは懐中時計を含め荷物を押収されている。


 だから彼らには時間が分からなかった。


 が、ずいぶん長い時が経過していることは感覚的に分かった。


「取り乱すかと思ったが――」


 そうはならなくてよかった、とレイテルはつぶやいた。


「半信半疑なだけだ」


 ダージは同じ調子で返した。


「証拠が何もないからな。このマントルボールというやつだって適当に拾ってきたものをこじつけてるだけ、って可能性もある」


 偽りと断じる材料もないが、妄信する材料もない。


 だからダージは簡単には首肯しない。


 それはアナグマにしてもキンケルにしても同様だ。


 だがもし、レイテルたちに"言い分を信じなければ殺す"とでも脅されれば、表面上は信じたふりをするくらいの柔軟性は彼らにはあった。


「まあ、いい」


 やはり彼は憐れむように言った。


 そこにはいくらかの諦念もあったが、言うべきことを言った彼はおおむね満足していた。


 となれば、もうひとつのやらなければならないことをしなければならない。


 レイテルはゆっくりと立ち上がると、取り巻きに手錠をはずすように言った。


 ためらう彼らにレイテルは、


「武器は取り上げてるんだ。こいつらだってバカな真似はしないだろう」


 静かにそう言うと、アナグマを一瞥した。


「来い。お前たちに会わせなければならない人がいる」


 もとより選択肢のない三人は従うほかない。


 しかし隙を見せないことと、隙を窺うことだけは怠らない。


 このうえにいったい何があるというのか。


 三人は互いに視線を送りあった。


 建物を出て、物々しい一帯へと戻ってくる。


 似たような作りの構造物が多く、ちょっとでも気を抜くと先ほどまでいた場所が分からなくなる。


 連行されている最中も、アナグマたちは油断なく周囲を探った。


 どうやらレイテルたちはこの地下都市の場所は知られたくないが、内部そのものは見られてもかまわないようである。


 しばらく歩き、大きな通りから一本奥に入ったところに白い塔がそびえ立っている。


「ここだ。こっちから入るぞ」


 レイテルは塔の正面ではなく、裏手に回った。


 数名いた守衛に事情を説明する。


 二、三、言葉を交わすだけであっさりと通されることから、彼が相応の立場にあり、周囲から信頼されていることをアナグマは悟った。


 内部は整然としており、地下世界特有の汚れがない。


 まるで町から切り離されたように、ここは文字どおり純白の世界であった。


「どうにも落ち着かな――」


 ダージが言いかけたとき、背後でガラス戸が下りた。


「心配するな。消毒だ」


 壁や天井から消毒液が噴霧される。


 独特の強いにおいが鼻腔を刺激する。


(精密機器でも扱う場所なのか?)


 アナグマは思った。


 であれば、重要な施設であることにはちがいない。


 そんな場所につい先ほどまで拘束していた相手を通すだろうか、という疑問がよぎる。


「俺たちに会わせたい人がいる、と言っていたな。誰なんだ?」


「すぐに分かる」


 レイテルはアナグマの問いをいなし、真白の通路を進んでいく。


 十字路を右に折れ、行きついた先は小さな部屋だった。


「ここだ。言っておくが病棟だ。あまり騒ぐなよ?」


 それを早く言え、とダージがぼやくより先にドアが開いた。

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