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8 世界の真実-1-

 どこをどう歩いたのか。


 どれほど時間が経ったのか。


 アナグマたちには分からなかった。


 分かっているのは自分たちが、彼らの気まぐれひとつで自由を手にし、あるいは準備もなしにこの世と別れなければならないという事実のみだ。


 視界を奪われ、周囲を囲まれている以上、とるべき手段はない。


(処刑場にでも向かっているのか……?)


 ならばここで一矢報いてやろうか、とも彼は考えた。


 武器は取り上げられているが、ひとりくらいなら道連れにできるだろう。


 しかし現実はそれすらさせてはくれなかった。


 歩みが止まったのだ。


「妙な真似はするなよ? 少しでもおかしな動きを見せたら――」


 男は最後まで言わなかった。


 代わりにアナグマたちの視界を覆っていた袋を取り去った。


 光に数瞬、目がくらむ。


「なんだ、ここは……」


 キンケルが声をあげた。


 少し遅れて目が慣れてきたアナグマも、ようやく周囲の状況が分かるようになってきた。


 大きな洞窟だった。


 変哲のない、ただの空洞だ。


 彼らが飽きるほど見てきた、地下世界の風景だ。


 だから不思議だった。


 アナグマたちはここまで歩かされただけだ。


 ゴンドラに乗った様子はなかった。


 にもかかわらず、地下と変わらない世界が広がっている。


 眼下にはいくつかの住居と、施設のようなものがあり、小さな都市といった様相だ。


 左右から伸びている下り坂が都市への入り口になっている。


 少なくとも処刑場ではなさそうだった。


「こっちだ」


 男は左手の坂を下った。


 背中に銃を突きつけられたまま、アナグマたちも続く。


 途中、彼はそっと下を覗き込んだ。


 真下に広がる景色に陰鬱な雰囲気はない。


 住居群は無計画に建てられたらしく、曲がりくねった道が四方に伸びている。


 一方で施設周辺は整然としており、区画がきっちりと整備されている。


 また施設そのものも堅牢な作りであることが一見するだけで分かった。


 ちぐはぐでいびつな街並みではあったが、同じ地下世界の住人であるアナグマたちには、ここにたしかな秩序があることを感じ取っていた。


 坂を下りきったところに守衛が立っていた。


 警棒に拳銃、小刀を携えているのがちらりと見えた。


 兵団並みの装備だ、とアナグマは思った。


「レイテル将軍、そいつらは?」


 衛兵が男に問う。


「まだ中立だ」


 レイテルと呼ばれた彼は妙な返し方をした。


(…………)


 アナグマはちらと衛兵を見た。


 腰のホルスターに拳銃。


 衛兵の視線は男に向けられている。


「やめておけ」


 男が言った。


「銃を奪ったところで立場が悪くなるだけだぞ」


 狙いに気づかれたアナグマは小さく息を吐いた。

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