↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛮族女王の娘《プリンセス》 第1部【公国編】  作者: 枕崎 純之助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/101

第44話 『聖堂の戦い』

「何よ何よ何よ! いきなり無礼じゃないの!」


 オニユリはカッと頭に血が上るのを感じて思わず怒鳴《どな》っていた。

 すぐ頭のそばを短剣が通り過ぎていったのだ。

 少しでも反応が遅れていたら死んでいただろう。

 だが戦場に身を置けば自身が死ぬ恐れもあることは重々承知の上だ。

 オニユリが頭に来たのは、自慢の美しい白髪を数十本も切られたことだった。


「私が毎日この髪をどれだけ手入れしているか知りもしないくせに。この赤毛女!」


 オニユリは2丁の拳銃をほとんど同時に放つ。

 相手の頭と胸を狙《ねら》った一撃射殺目的の射撃だ。

 この距離なら外しようがない。

 だが、一射は相手のこめかみを掠《かす》り、もう一射は金属の胸当てに当たったようで甲高い音を立てた。

 赤毛の女は衝撃で後ろに倒れ込む。


(致命傷を避けた? 随分《ずいぶん》と勘のいい女ね。けど次は……)


 第二射目を放とうと思ったオニユリだが、頭に血が昇っていた彼女はそこで気が付いた。

 拳銃に装填《そうてん》されていた鉛弾《なまりだま》がすでに弾切れであることに。


 ☆☆☆☆☆☆☆


「ジャ……ジャスティーナ!」


 仰向《あおむ》けに倒れたジャスティーナの元に駆けつけたプリシラは彼女の傷を見た。

 左のこめかみから血を流している。

 そして鉄の胸当ての一部が大きく凹《へこ》み、黒く焦《こ》げた跡がある。

 だがジャスティーナは苦痛に顔を歪《ゆが》めているものの、その目には強い光が宿ったままだ。

 彼女はプリシラの手を握って言う。


「大丈夫だ。命に関わるようなケガじゃない。だが、少しの間まともに動けないだろう。プリシラ。ジュードを頼む」


 そう言うジャスティーナの手を強く握り返してプリシラは頷《うなづ》いた。

 そしてすぐに立ち上がろうとするプリシラだが、ジャスティーナはその手を掴《つか》んだまま言った。


「あの白髪女の持つ武器を私は以前に見たことがある。一瞬で弾を飛ばしてくる厄介《やっかい》な武器だ。撃たれてからでは避けられない。撃たれる前に相手の手や体の動き、それに目線で射線を予測して動くんだ」


 ジャスティーナの口ぶりにプリシラは思わず胸が奮《ふる》い立つのを感じた。

 自分を信じ、頼ってくれていると思えたからだ。


「任せて。必ずジュードを助けるから」


 意気込んでそう言うとプリシラは立ち上がり、聖堂の中に目を向ける。

 ジャスティーナの言っていた白髪女は聖堂の中でジュードと揉《も》み合い、争っている。

 そしてジュードが振りほどかれてしまうのを見たプリシラは勢いよく聖堂の中に飛び込んでいった。


(動け! 敵の予想よりも鋭く! 速く!)


 長椅子《ながいす》から長椅子《ながいす》へと飛び移りながらプリシラは一気に距離を詰めて白髪の女に襲い掛かった。


 ☆☆☆☆☆☆


 オニユリは拳銃に装填《そうてん》されていた鉛弾《なまりだま》がすでに弾切れであることに気付いて舌打ちをする。

 もちろん拳銃の装填《そうてん》弾数はあらかじめ知っているし、撃つ度《たび》に数えているのだが、黒髪の男をいたぶる楽しさと、赤毛の女の横やりに対する怒りで、残弾数を失念していたのだ。


「チッ!」


 すぐさまオニユリは腰袋《こしぶくろ》に手を伸ばして、そこに入っている予備の鉛弾《なまりだま》を取り出そうとした。

 だがそこで腰の辺りにドンッとぶつかってくる者がいる。

 それは咄嗟《とっさ》に身を起こした黒髪の男だった。


「邪魔!」


 オニユリは忌々(いまいま)しげに黒髪の男の額《ひたい》に肘《ひじ》を打ち付けて彼を払い飛ばす。


「うぐっ!」


 黒髪の男は後方に転がって長椅子《ながいす》に体を打ち付けた。 

 そんな彼に銃口を向けつつ、オニユリは再び腰袋《こしぶくろ》に手を伸ばした。

 だがその手が空を掴《つか》む。

 そこにあるはずの腰袋《こしぶくろ》が無くなっていた。

 ハッとするオニユリに黒髪の男は痛みを堪《こら》えて笑みを浮かべる。


「探し物はこいつだろ?」


 そう言うと黒髪の男は当て身をした際にオニユリの腰から掠《かす》め取った腰袋《こしぶくろ》を掲《かか》げて見せた。

 それを見たオニユリの顔が冷たい怒りで歪《ゆが》む。


「あら。手癖《てくせ》の悪い人ね。返しなさい」


 そう言うとオニユリは黒髪の男に迫ろうとした。

 だがそこでダンッという大きな音が後方から響き渡り、オニユリは反射的に後方を振り返る。

 すると長椅子《ながいす》を踏み台にして大きく跳躍《ちょうやく》し、襲いかかって来る金髪の少女の姿がそこにあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。