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第44話 『聖堂の戦い』

「何よ何よ何よ! いきなり無礼じゃないの!」


 オニユリはカッと頭に血が上るのを感じて思わず怒鳴どなっていた。

 すぐ頭のそばを短剣が通り過ぎていったのだ。

 少しでも反応が遅れていたら死んでいただろう。

 だが戦場に身を置けば自身が死ぬ恐れもあることは重々承知の上だ。

 オニユリが頭に来たのは、自慢の美しい白髪を数十本も切られたことだった。


「私が毎日この髪をどれだけ手入れしているか知りもしないくせに。この赤毛女!」


 オニユリは2丁の拳銃をほとんど同時に放つ。

 相手の頭と胸をねらった一撃射殺目的の射撃だ。

 この距離なら外しようがない。

 だが、一射は相手のこめかみをかすり、もう一射は金属の胸当てに当たったようで甲高い音を立てた。

 赤毛の女は衝撃で後ろに倒れ込む。


(致命傷を避けた? 随分ずいぶんと勘のいい女ね。けど次は……)


 第二射目を放とうと思ったオニユリだが、頭に血が昇っていた彼女はそこで気が付いた。

 拳銃に装填そうてんされていた鉛弾なまりだまがすでに弾切れであることに。


 ☆☆☆☆☆☆☆


「ジャ……ジャスティーナ!」


 仰向あおむけに倒れたジャスティーナの元に駆けつけたプリシラは彼女の傷を見た。

 左のこめかみから血を流している。

 そして鉄の胸当ての一部が大きくへこみ、黒くげた跡がある。

 だがジャスティーナは苦痛に顔をゆがめているものの、その目には強い光が宿ったままだ。

 彼女はプリシラの手を握って言う。


「大丈夫だ。命に関わるようなケガじゃない。だが、少しの間まともに動けないだろう。プリシラ。ジュードを頼む」


 そう言うジャスティーナの手を強く握り返してプリシラはうなづいた。

 そしてすぐに立ち上がろうとするプリシラだが、ジャスティーナはその手をつかんだまま言った。


「あの白髪女の持つ武器を私は以前に見たことがある。一瞬で弾を飛ばしてくる厄介やっかいな武器だ。撃たれてからでは避けられない。撃たれる前に相手の手や体の動き、それに目線で射線を予測して動くんだ」


 ジャスティーナの口ぶりにプリシラは思わず胸がふるい立つのを感じた。

 自分を信じ、頼ってくれていると思えたからだ。


「任せて。必ずジュードを助けるから」


 意気込んでそう言うとプリシラは立ち上がり、聖堂の中に目を向ける。

 ジャスティーナの言っていた白髪女は聖堂の中でジュードとみ合い、争っている。

 そしてジュードが振りほどかれてしまうのを見たプリシラは勢いよく聖堂の中に飛び込んでいった。


(動け! 敵の予想よりも鋭く! 速く!)


 長椅子ながいすから長椅子ながいすへと飛び移りながらプリシラは一気に距離を詰めて白髪の女に襲い掛かった。


 ☆☆☆☆☆☆


 オニユリは拳銃に装填そうてんされていた鉛弾なまりだまがすでに弾切れであることに気付いて舌打ちをする。

 もちろん拳銃の装填そうてん弾数はあらかじめ知っているし、撃つたびに数えているのだが、黒髪の男をいたぶる楽しさと、赤毛の女の横やりに対する怒りで、残弾数を失念していたのだ。


「チッ!」


 すぐさまオニユリは腰袋こしぶくろに手を伸ばして、そこに入っている予備の鉛弾なまりだまを取り出そうとした。

 だがそこで腰の辺りにドンッとぶつかってくる者がいる。

 それは咄嗟とっさに身を起こした黒髪の男だった。


「邪魔!」


 オニユリは忌々(いまいま)しげに黒髪の男のひたいひじを打ち付けて彼を払い飛ばす。


「うぐっ!」


 黒髪の男は後方に転がって長椅子ながいすに体を打ち付けた。 

 そんな彼に銃口を向けつつ、オニユリは再び腰袋こしぶくろに手を伸ばした。

 だがその手が空をつかむ。

 そこにあるはずの腰袋こしぶくろが無くなっていた。

 ハッとするオニユリに黒髪の男は痛みをこらえて笑みを浮かべる。


「探し物はこいつだろ?」


 そう言うと黒髪の男は当て身をした際にオニユリの腰からかすめ取った腰袋こしぶくろかかげて見せた。

 それを見たオニユリの顔が冷たい怒りでゆがむ。


「あら。手癖てくせの悪い人ね。返しなさい」


 そう言うとオニユリは黒髪の男に迫ろうとした。

 だがそこでダンッという大きな音が後方から響き渡り、オニユリは反射的に後方を振り返る。

 すると長椅子ながいすを踏み台にして大きく跳躍ちょうやくし、襲いかかって来る金髪の少女の姿がそこにあった。

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