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マイノアルテ・チャルチ家【耐久力がある者】5

「バカな!? 耐えきった!?」


 フラグニアが思わず叫ぶ。

 確かに、その場の誰も、伯爵が生き残るなど思ってもみなかった。

 今ので死んだと思ったのだ。


「お嬢様っ!」


「へ? は、はいおじ様?」


「パンツ、何色ですかっ!」


「白のふりふり……です?」


 真剣な表情で後を振り向くことなく、伯爵が叫ぶ。

 ド変態の言葉に一瞬何を言われたか理解できなかったエルフリーデだったが、相手の真剣さに思わず正直に答えていた。

 口から漏れた言葉に気付き赤面する少女。変わりに伯爵の雄叫びが上がった。


 まさか本当に正直に答えて貰えるとは思わなかった。

 だが、思わずとはいえ少女からの答えが返って来た、だから、伯爵のスキルが発動する。

 少女のパンツを尋ね、相手から正直な返答があった時、紳士たちの体力は全快する。

 ついさっきまで痛々しい姿だった伯爵の身体が、光に包まれる。

 光が収まった時には、ダメージ一つ負っていないまっさらな肉体に戻っていた。


「なんと……再生した!?」


「再生? 違いますな。これは肉体の活性。愛すべき幼女たちに返答を貰えた昂揚による肉体の活性によるものです」


 ふぅーと息を整える変態紳士。ステッキを構え直し上下体に分かれたフラグニアにステッキを向ける。


「これ以上の戦闘行為は無駄かと思いますが、まだやりますか?」


「愚問である、我が任務は……」


「そこまででいいわ耐久力がある者よ」


「!? マスター?」


 未だに闘う気配を見せたフラグニア。しかし、それを遮るように酒場へと入ってくる女が一人。

 バトルドレスに身を包んだ金髪の女はさらりとしたロングヘアをたくしあげ、ふふと笑う。


「初めまして皆様。メルフィーナ・ボーレン・チャルチ。ここチャルチ領の者ですわ」


「魔女か」


「全く、突然いなくなるから何をしているのかと思えば、フラグニア、流石にこの数のントロ相手に一人では無謀……ところでそちらの殿方、服を着て下さらない?」


 視界に入ったらしい伯爵から慌てて視線を逸らし、龍華に視線を向けながらメルフィーナが告げる。


「敵対する気はない、と?」


「そもそもこれだけの魔女とントロが協力しているのに敵対してどうするのかしら? 私、自殺志願ではないのよ?」


 ごもっともである。

 ヌェルティスは言われてみれば確かにと思いつつ、一人でも充分他の魔女を駆逐出来るフラグニアに警戒感だけは持っておく。


「では、フラグニアへの命令を変えるのだな? 儂らとは敵対しない、と?」


「そうですわね、それで……」


「マスターっ!」


 ボヒュッ

 不思議な音と共にフラグニアの上半身が浮かぶ。内部に存在したロケットエンジンのようなモノを点火したらしく、両腕に炎を迸らせメルフィーナを突き飛ばす。


「きゃっ!? 何をなさ……!?」


 尻持ち着いたメルフィーナが顔を上げた瞬間だった。

 フラグニアの上半身が何かを受けて吹き飛んだ。

 幸いその装甲を打ち抜くことはできず、衝撃で床に転がっただけだったが、今のは確実にメルフィーナを狙った一撃だった。


「な、な?」


「総員身を低くして遮蔽物に隠れろッ!」


 一番早くに動いたのは龍華。

 自身も窓や入口から見えない位置に逃げ込み狙撃位置となった酒場の入り口から外を覗く。


「な、何があったの気難しい者?」


「狙撃だ。何者か知らんがそこの魔女を狙撃した。フラグニアが逸早く気付いたが、押し飛ばさねば確実にヘッドショットだ。かなり技量が高い。ントロか、もしくは……」


「女神の勇者、だな」


 龍華の側へとやってきたヌェルティスが告げる。

 フラグニアの攻撃が止んだことで戦闘参加出来るとやって来たのだ。残念だが遠く離れている敵を相手に龍華もヌェルティスも打つ手は少ない。


「さて、一応聞いておくが、ントロと女神の勇者以外から命を狙われる可能性は?」


「へ、わ、私ですの? ありませんわ。ええ。あ、フラグニア、わ、私を守りなさい、最優先よ!」


「了解した。最優先事項を変更する」


 両手を使って倒れた下半身の元へと向かうフラグニア。

 さらなる銃弾が襲ってきたが、彼の身体は弾丸を弾き飛ばす。

 ズボンでも穿くように下半身を付けたフラグニア。

 直ぐにくっついたらしく、メルフィーナの護衛に付く。


「むぅ、今回の敵は狙撃犯だろう。そこの機械人間が一番有効ではないか?」


 狙撃の効かないフラグニア。どう見ても適材適所は彼だろう。

 狙撃されても死ぬ心配も無く、無造作に近づいて始末できる。


「そ、それはそうかもしれないけれど、私の安全はどうしますのよ!」


「いや、それは……儂らが受け持つが?」


「ついさっきまで敵対していた相手に命を預けろですって!? 冗談ではありませんわ!」


 当然と言えば当然だ。しかしこのままでは相手の狙撃をどうこうできる方法が無いのが現状だった。

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