地球・魔眼の勇者1
「ラ・グ!」
ピクシニーの雷撃魔法が空を裂く。
魔眼の勇者は難なく避け、目に入ったテーラを操った。
「カンフィール!」
「ちょっと正義の味方さんたち、相手と視線合わせないでっ!」
黙人が慌てて告げるが、皆視線を合わさずに闘うというのは存外難しいモノである。
ペリカ、マイツミーア、テーラも気を付けてはいるものの、やはり避け切るのは難しく、時折視線が合って操られてしまうのだ。
「あはは。やるじゃん妖精さん。でも魔力どれだけ持つのかなー。さっきから攻撃も回復も魔法でしょー。私は見つめるだけ、あんたは魔力が尽きるまで、さーてどっちが不利なのかなー」
的を得た言葉にピクシニーはうぐぅと呻く。
正直危険なのは確かだ。魔力もかなり消耗している。
回復しようにも回復する術もない。
魔力が尽きた時点で敗北は確定、そして相手を倒すのも現状は不可能に近い。
「実力も高い、魔眼が厄介。ついでに思考も最悪と」
「やってらんにゃいにゃー」
「手伝おうにも足手まといになっちゃいますし、どうしましょうペリカ先輩」
ペリカ、マイツミーア、テーラは周囲の正義の味方と視線を合わしながらどうしたものかと思案する。
彼らが攻撃に転じればダメージは与えられる。しかし視線が合うのを避けるのは難しく、攻撃後には操られ、結局ピクシニーに回復魔法を掛けて貰うことになる。
そうなるとピクシニーの負担だけが多くなってくる。
「あの妖精だけに任せるのは駄目よ。彼女が操られたら終わりだもの」
「いや、わたしあやつられたりはしないけどね。そういうたいせいもってるし」
「あら。確かにあなたは問題ないだろうけど。そっちの人はどうかしら?」
ふえ? と小首を傾げたピクシニーの身体がむんずと掴まれる。
何!? と驚いた彼女が見たのは、魔眼の勇者に操られた自分のマスターだった。
「あああっ。もくとのばかっ!? なにあやつられてんの!? かんふぃーる」
慌てて魔力をさらに消費。黙人を正気に戻しはしたものの、魔力はどんどん消費してしまっている。
「これはちょっちぴんち……」
「この面子では仕留めきれないか。せめて状態回復魔法が使える存在がもう一人でもいれば……」
「いれば、いいんだな?」
ペリカの呟きに、上空から声が聞こえた。
なんだ? と驚き見上げた皆の頭上には、一台の橇。二匹のトナカイに引かれたそこには白いもこもこがついた赤い服を身にまとった太った男と、その背後に存在する一人の天使が座っていた。
そんな天使の首根っこを掴んだ太った男が、天使を橇から投げ落とす。
「僕ちんから良い子たちにヨルゥイエルをプレゼントなんだなっ。返品は受け付けないんだな」
「ちょ、三太っ!? 私の扱い酷くないですかっ!」
「煩いっ、お前が居るせいでリテルラちゃんがお二人お似合いのカップルですねとか言いだすんだな! 僕ちんがリテルラと恋人同士になるためにお前はお邪魔虫なんだなっ!」
「だからあの人は脈なしだって言ってるじゃないですかぁ、って、きゃあああああああああっ!?」
ひっつかまれた首根っこが解放され、自由落下したヨルゥイエルがスカートを両手で隠しながら地面へと激突した。
「扱い乱暴すぎます三太っ! あとで謝罪を要求しますからねっ!」
「後などないんだな。ではサラダバーなんだなっ!」
三太はヨルゥイエルを落下させると用は済んだとばかりに去って行く。
起き上がったヨルゥイエルが叫んだ時には、既に空の彼方へと去って行く橇の姿があるだけだった。
「く、仕方ありません。魔物と協力などしたくはありませんが妖精、状態回復はお任せなさ……」
ピクシニーに告げようとしたところで魔眼の勇者と視線を合わせるヨルゥイエル。
即座に操られた。
「カンフィール! あほかーっ!?」
ふよふよと飛んでヨルゥイエルへと向かったピクシニーによるピクシーキック。正気に戻ったヨルゥイエルの側頭部を蹴りつける。
「うぐっ。このヨルゥイエル一生の不覚です」
「おだまりゃ。あんたはあのおんなとしせんをあわせないよう、みんなのじょうたいいじょうをかいじょするの、おっけー?」
耳をひっぱり大声で告げたピクシニーは最後にヨルゥイエルの額を蹴りつけ大空へと舞う。
「もくと、まりょくもらうから!」
「分かった! あの、すいませんしばらく僕の警護お願いします」
正義の味方数人が黙人の元へと向かい警護に付く。
テーラとペリカが突撃し、魔眼の勇者の注意をひきつけ、死角からマイツミーアが突撃。
操られたメンバーをヨルゥイエルが回復させ、ピクシニーが頭上から大魔法を狙う。
ゾクリ。黙人は内側から失うナニカに身体を振るわせた。
青い顔になった黙人に正義の味方の一人がどうした!? と慌てるが、ピクシニーのスキルの影響だと告げて気にしなくていい事を告げる。
「ふろーしゅをきょういくかていであみだしたおおわざよ! くらえっ!」
黙人からありったけの魔力を奪い取ったピクシニーの魔法が炸裂した。




