アンゴルモニカ・人間爆弾の勇者3
グラビィマッキーはモーニングローリィを回収して再び急上昇する。
彼女の能力グラビティフィールドで姿を隠して神殺しの槍にて重圧特攻。今出来得る対人戦での際高威力の攻撃だ。
これ以上となると隕石落下攻撃しかないので、人間爆弾の勇者相手に使えるのはこの槍での攻撃と重力攻撃だけでの対処となる。
正直不安は大きい。
相手に触れられるだけで爆死の危険があるのだ。
接近戦はできるだけ避けたい。しかし、近接しなければダメージを与えられない以上危険を承知でやらなければならない。
幸いなのは自身が相手から見付けられないこと。
しかしこれも万全とは言えない。
何しろ動けば空気が揺らぐため実力者には発見されやすいのだ。
加え、人間爆弾の勇者は武道を齧った者。発見される確率は高い。
「チィッ」
再突撃も避けられた。
焦る。重力による結界があるとはいえ、相手の攻撃を防ぎ切れるかは不安が残る。
現に人間爆弾の勇者に投げられたスライムがグラビティフィールドに激突して爆散。
爆風が彼女の身体を弄った。
例え重力の結界を展開していようと、彼女にダメージを与える方法が存在しているのだ、人間爆弾の勇者が彼女に触れる確率は決して低い訳じゃない。
ダムドの魔法を連射することで牽制をするものの、人間爆弾の勇者はそれを何故か避けてしまう。
「なるほど、だんだんと目が慣れてきた」
「慣れるものじゃないでしょっ、流石チート勇者」
敵対する身としてはあまり嬉しくない勇者のチート能力に驚嘆しながら焦る。
かなり時間が経っている。ならばこちらの援軍も間もなく来る筈だ。
焦るな。大丈夫。自身に言い聞かせグラビィマッキーはモーニングローリィを構える。
突撃体勢を取った瞬間だった。振り向いた場所に人間爆弾の勇者が居ない。
「マズ……」
「見付けたぞ!」
接近してきた人間爆弾の勇者。
背後を振り向きざまに神槍を突き刺すが、そこに投げられていたのはスライム。
思わず槍を引いた瞬間スライムが爆散する。
爆風に煽られ結界が揺れる。爆炎が視界を塞ぎ、焦燥が危機を募らせる。
「おおおおおおおおおおおおおっ」
重力結界へと拳を突き入れる人間爆弾の勇者。
爆炎に気を取られたグラビィマッキーの背後から結界を破らんと攻撃を加えていた。
あまりの行動力にグラビィマッキーは青い顔で距離を取ろうとする。だが、その結界を、人間爆弾の勇者がぶち破る。
「終わりだ魔法少女っ」
伸ばされた腕が彼女の腕を掴……
「マッキーに汚ねェ手ェで触れンじゃねえぇぇぇぇ――――っ!!」
あと1ミリ。横合いから来た剣が人間爆弾の勇者の脇腹を穿つ。
「がぁっ!?」
そのまま勢い付けた女が人間爆弾の勇者諸共特攻し、気合いと共に剣を振り上げ地面に叩きつけた。
剣に突き刺さったままだった人間爆弾の勇者が地面に激突し剣からすっぽ抜ける。
そのまま地面を二転三転した。
「がはっ。ぐ、何……が?」
脇腹押さえて立ち上がる人間爆弾の勇者。
見上げた先に居た人物を見て、目を見開く。
赤い髪の女が居た。
風に揺らめくツインテール。勝気な瞳。身長は140くらいだろうか? なのに胸元だけは狂気に等しい大きさだ。
白銀に煌めく鎧を身にまとい、レーヴァテイン、ユーリリスという剣を携えた女が居た。
「バカな……お前はさっき爆散したはず……」
勇者手塚至宝。グラビィマッキーの大親友がそこに居た。
「悪りぃなおっさん。ここからは、選手交代だ。手加減抜きでやってやるから覚悟しろよ」
「抜かせ! 再び爆死させてやる。醜く膨れ散れ!」
走りだす人間爆弾の勇者。
グラビィマッキーを背後に隠すように移動した至宝はレーヴァテインとユーリリスを構える。
「とは言ったものの、下手な攻撃は周囲に被害が出るしな、どうしたもんか……」
「大丈夫だよしーちゃん。トドメはお願い!」
「へ? マッキー?」
グラビィマッキーにとってはこれこそ待っていた状態だった。
彼女には倒すべきトドメの一撃はないが、人間爆弾の勇者を足止める方法は持っている。
「グラビトンバスターッ!」
「っ!?」
咄嗟に避けようとした人間爆弾の勇者。しかし脇腹を負傷した彼の動きは鈍かった。
重圧に押し込まれた彼に、好機と気付いた至宝が動く。
「ライトニング×2」
魔力滞留で両手の剣に雷撃を溜め込む。
周囲に被害が出ないよう、空へと跳び上がる。
「フレアライト・クロスッ!!」
上空からの絶死の一撃。振り下ろされた双剣から放たれたのは雷撃を纏った炎と烈風。その全てが混ざり合い、人間爆弾の勇者へと襲いかかる。
必死に逃げようとするが重力圧で身体が動かない。
迫る光を見上げ、男は絶叫した。
「クソッ、ふざけんなっ! 何が思うように殺せるだ!? 俺は、俺はまだ満足しちゃいないっ! 女神ッ、女神ぃぃぃっがああああああああああああああああああああああああ――――――――……」
断末魔の悲鳴は、雷撃の光に呑まれて消え去った。




