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ミルカエルゼ3

「歌えノエルッ」


「ひぃ、む、無理……」


 猛毒の勇者が叫ぶが歌の勇者はただ首を振るだけだ。

 恐怖に呑まれた少女に闘えというのは酷だろう。


「クソッ、全員散らばれ! この魔王は俺がやる!」


 大魔導師の男が近くに居たボックスの勇者を引っ張り上げ、魔法でその場を離れる。


「逃さないわよ。薬藻、そっちは任せるわ。チキサニ、稀良螺、行くわよ!」


 ネリウが動き出す。彼女に付いてチキサニ、稀良螺、そしてボックスの勇者と敵対する手はずになっていたお松、みぽりん、クリムゾン・コアトルが続く。


「ち、俺は逃げるぞ。体勢を立て直す」


 瞬間移動の勇者も消える。

 が、消えようとした瞬間、まるでその行為が邪魔されたように同じ場所に出現した。


「な、なんだ!?」


「あなたの相手は僕です。早く倒して増渕さんに合流するんだっ」


「お手伝てつたいするネ!」


 瞬間移動の勇者に突撃する鯉恋。慌てて逃げる瞬間移動の勇者だが、可憐の超能力が行く手を阻む。


「くそっ、どうなって……」


先手必勝せんてひしょうアル」


 毒づく瞬間移動の勇者の懐へと飛び込んだ鯉恋。その掌が彼の脇腹へと当てられた。

 どんっと一瞬瞬間移動の勇者の身体がぶれる。

 発勁を喰らった彼は臓腑をやられ、口から血を噴き出して倒れた。


「クソッ、急襲しといてなんだよこれはっ!?」


 尻を引きずりながら逃げるのは神弓の勇者。

 迫る浅黒い肌の女に気付き、慌てて弓を拾うと一射。

 狙いあまたず女の心臓に飛ぶが、矢は彼女に避けられた。


「な、なんだ今の避け方!?」


 続けて数射。しかし人には到底避け切れない連撃を、女は全て避けていた。

 それも人体でありながらまるで骨がないかのような意味不明な避け方だ。元が美少女なだけに気味が悪いことこの上ない。


「な、なんだ? 何だテメーは!?」


「軟体族族長ソカン=モティカルパイト=ヘグイトスの娘、ミルユ=モティカルパイト=ヘグイトス。薬藻の嫁」


「ゴム人間かよ!? ふざけんなっ!!」


「ゴム? 違う。ワタシはハーフスライム」


 眉間を狙った一撃を軽々躱したミルユが唐突にサイドステップ。

 なんだ? と思った神弓の勇者は、ゾクリと背中を駆け抜ける感覚に慌てて地面を転がった。

 次の瞬間彼が一瞬前に居た場所を光が駆け抜けて行く。

 地面を穿ち草原を荒野に変えて、巨大な光線が駆け抜ける。


「……残念、外した」


 見れば、ミルユの背後に隠れるようにして、幼女を抱えた少女が一人。

 双方黒髪オカッパで、大きい方は冷めた視線で神弓の勇者を睨み、彼女に抱えられた幼い少女はたった一つしかない目玉に涙を溜めてむぅっと神弓の勇者を睨んでいる。


「冬子、残念だったな」


「煩いミルユ。とつめに言って」


 そんなメンバーを見て、錬金の勇者は戦慄しながら立ち上がった。

 まだ身体は恐怖に震えているが、動けないほどじゃない。

 先程の一撃で全員が一斉攻撃して来ていれば女神の勇者は半壊していただろう。

 まだ運が良かったのか、それとも相手がバカなのか。


 ただ、彼女は相手がバカだと見下す気にはなれなかった。

 隣に爆炎の勇者がやってくる。

 視線だけで共闘するぞと告げて来ていた。

 異論はない。自分一人で相手を圧倒できる気もしないのだから仕方ないだろう。


 敵対するのは錬金の勇者がいた日本で着るような服を着た二人組。さらに怪人と思しき存在が二人。ついでに巨大な斧を携えた女も一人。

 その中から、代表するように二人の日本人と思しき存在が前に出る。


「さぁて、こいつ等は私達の獲物だ」


「えへへ。久しぶりだねカトラちゃんと一緒の闘い」


「「処刑執行、大転身!」」


 二人が力ある言葉を口にした時、二人の身体を光が包み込む。

 その言葉に、錬金の勇者は覚えがあった。数年前に世間を騒がし、彼女も憧れを抱いた正義の味方の変身キーワード。


 まさか。ごくり固唾を飲んで彼女は見守る。

 光が収まったその先には、橙を基調とした太陽と天使のような純白をイメージする服を着た女、そして暗黒の闇と死神を彷彿とさせる衣装の女が姿を現していた。


「太陽と天空の使者、サンシャインキューター!」


「暗黒と魔界の使者、ダークネスキューター!」


「「二人は断罪者エクスキューター!!」」


「う、嘘。嘘よ。なんでエクスキューターがこの世界に……」


「知ってるなら話は早いわ女神の勇者たち。船賃やるからとっとと黄泉路に向いなさいっ」


「あー、懐かしいよカトラちゃん。それ、まだ続けてたんだねー」


 サンシャインキューターの名ゼリフとして有名になったがちょっとダサいとよく言われているセリフだ。まさか自分が本人から聞かされることになるとは思っていなかった。

 喜び? 否、絶望しかない。何しろ憧れの正義の味方が敵として現れるのだから。


「どうした錬金の勇者? まだ恐怖に呑まれてるのか? チッ、下がってろ邪魔だ!」


 エクスキューターなど知らないとばかりに爆炎の勇者が前に出る。

 クラリシア軍と勇者たちの闘いが始まった。

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