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子ウサギ妖怪との非日常的な日々  作者: 樫 ゆう
第四章 助けた子ウサギに導かれて
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第四章 助けた子ウサギに導かれて 05話

 いつの間にか頂上へと登っていたらしい。守屋の指先を見ると、確かに東郷神社で見たレプリカと同じようなものがある。


「これが子ウサギを縛る拘束具?全然見えねえな……」


「それ以前に妖術なんてあるのかも疑わしいよ」


 パッと見の感想を述べる守屋とおれ。

 ところどころ触ってみるが、何も起きない。やはりただ単に変わった石碑ということか。

 少し強く押してみると、『日輪』が揺れた。下の地面が緩んでいるのだろうか。

 昔からあるのに、こんなに土台が固定されていないもんかな?

 周りを見渡すと、みすぼらしい古い小屋を見つけた。


「なんだろう。あれ」


 試しに入ってみると、中は思ったよりも狭く様々なモノが散らかっていた。もう日は落ちかけているので何があるのかはよく見ないとわからなかった。持ってきた懐中電灯で光を当てて見てみると、スコップやロープ、荷車のようなものだとわかった。

 スコップには真新しい土がついている。ロープも何かに使われた後のようだ。荷車の荷台にも土の跡がある。

 こんなに古そうな小屋に最近使われたような道具がある?なんか妙だな。

 そもそも何に使ったんだ?こんな場所で。

 嫌な予感が頭によぎる。


「甲坂君、何してるの?」


 鈴美音さんがひょっこり小屋の窓から顔を出した。


「何もしてないですよ、ただこの中を見ていただけです」


「ふーん。子ウサギたちに関すること、何か見つけた?」


「ここにはないですね」

 そうだ。ここには三匹の子うさぎの伝説に関することを調べに来たのだ。小屋の中のモノなんてどうでもいい。

 鈴美音さんに誘われて小屋を出る。例の石碑には早乙女と守屋が張り付いていた。

 あれ、楓は?

 ぐるりと一周見渡すと、離れた位置にポツンと立っているのを見つけた。


「なにしてるんだ楓。こっち来いよ」


 モジモジしながら、楓は小さく頷く。

 そうか。この石碑、「日輪」は子うさぎの拘束具だと葛生さんから言われたが、楓もそのことを一緒に聞いたから、これを恐れているのかもしれない。

 実際に妖術がかかっているのかは正直信じられないが、あの話を聞いた後に子うさぎ本人である楓が恐れるのも、無理はないだろう。

 楓は鈴美音さんの傍まで歩き、不安がとれないからか二人は一緒に手をつないだ。

 もう一度、「日輪」の方を見やる。

 しかし、思ったよりも迫力がない。東郷神社でレプリカを初めて見たインパクトが強かったせいだろうか……。

 バチッ!

 電気コードがショートしたような音が耳に入る。


「ゆと様!」


 振り返るのと同時に楓の叫ぶ声が聞こえた。

 バチッ!

 またショートしたような音。今度は音だけでなく、楓の首元が光るのも一緒に見た。そして楓は地面に倒れこむ。

 その隣には鈴美音さんも倒れていた。一回目の音は、鈴美音さんが受けた電流の音だったのだ。


「楓!鈴美音さん!」


 二人に駆け寄ろうとした次の瞬間だった。頭に痛みを感じ、おれも地面に倒れこんだ。どうやら何か堅いもので殴られたらしい。ぼやける視界の中、殴った奴の姿が一瞬だけ見えた。


「甲坂!どうしたんだ!」


 おれが殴られた音で、守屋と早乙女は異常事態に気がついたようだ。

 守屋は一目散におれを殴った奴めがけて飛びかかった。痛みで視界がぼやけていたが、犯人の顔面にハイキックを食らわしたように見えた。


「大丈夫?なにがあったの?」


 早乙女が珍しく切羽詰まった声で聞いてきた。


「鈴美音さんと、楓が……」


 二人がいた方を見てみると、もう誰もいなかった。

 ということは、二人は連れ去られた?

 ふと、さっきおれ自身が楓に言った言葉を思い出す。


『おれ達が全力で守る。だから安心しろ』


 カッコつけた言葉を言っといて、おれはなにやってたんだ!みすみす楓を危険な目に合わせてしまった!鈴美音さんまで巻き込んで!

 体を起こし、二人に説明する間もなくおれは走った。二人を攫った奴はこの山を降りるはず。だから今から走れば追いつけるはずだ。

 守屋が呼びとめる声が聞こえた気がしたが、今は一刻を争う。無我夢中で走った。

 

 予想どおり、走ってからすぐに楓と鈴美音さんを見つけた。彼女たちは二人の男に抱えられている。


「待て!」


 声を張り上げて、得体の知れない男たちに飛びかかる。

 抱えている分、相手は両手を使えない。いくら体力勝負に弱いおれでも奪い返すことはできるはずだ。

 相手に殴りかかろうと思った瞬間、第三者が現れた。

 そいつは振り上げたおれの手を掴み、違う方の手でおれを払いのけた。

 しまった。まだ仲間がいたのか!

 その隙に楓と鈴美音さんを抱えた二人は先に逃げた。


「待っ……!?」


 腹に強い衝撃が走る。思い切り殴られたのだ。


「大人しくしてろ……よっ!」


 さらにもう一発顔面を殴られる。

 早く……追いかけなきゃ……。


「これで……寝てろ!」


 そしてまた後頭部に痛みが走る。

 同時に、意識は完全に寸断された。



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