17 撫子、変になる
「でも、でもね?
こんな恥ずかしい内容のラブレターだけど、
これを読んでから、私、何か、変なのよ」
「へ、変?
っていうのは、ラブレターの内容が恥ずかし過ぎて、
頭が変になっちゃったって事?」
自分が書いた恥ずかしいラブレターを
恥ずかしいと言われて
恥ずかしい気持ちになって
頭が恥ずかしさで変になっている紳士クンは、
半分上の空のような口調で問い返す。
が、撫子は至って真剣な口調でこう続けた。
「違うの!
そうじゃなくて、私、この手紙を読んでから、
あの、胸の奥が、ギュゥッてなって、
その、凄くドキドキして、
えと、とても、おかしな感じなの・・・・・・」
「え、それって、まさか・・・・・・」
表情はいまいちよく見えないが、
撫子の口振りからその心情を察した紳士クンが、
気を持ち直して尋ねると、撫子は小さく頷いてつぶやいた。
「うん、何か私、この手紙をくれた人の事が、あの、気になってるみたい。
この気持ちが『好き』なのかどうかは全然分からないんだけど、
この手紙を書いた人の事を考えるだけで、凄く、その、ドキドキするの。
こ、これってやっぱりおかしいわよね⁉
こんな恥ずかしいラブレターをいきなりもらって、
しかも顔も名前も分からない相手にドキドキするなんて、
私、どうかしてるわよね⁉」
撫子は言葉の途中から一転してエキサイトし、
紳士クンの肩をガックンガックン揺さぶりながら声を荒げた。
それに対して紳士クンは、頭を前後にガックンガックン揺らしながら言った。
「そ、そんな事ないよ!
人の気持ちは人それぞれだし、その、ラブレターを書いた人も、
あの、凄く真剣な想いで書いたと思うから」
真剣な想いで書いたのは間違いない紳士クンは、
そこだけは力強く言い、そして遠慮がちにこう尋ねた。
「ちなみにお姉ちゃんは、この人以外で、
今までにもラブレターをもらった事は、あるの?」




