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INTERMISSION27 サジタリウス・ブライトリング

────────────────────────────────────

【射手座の輝き】TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA【ここに向来!】

『2,358,476 柱が視聴中』


【配信中です】


〇木の根     いや分からん分からん分からん

〇苦行むり    フォームシフトって何!?

〇みろっく    あったんだそんなの……

〇ミート便器   いや聞いたことない

〇つっきー    でもルシ様の言い方的に、設計図段階ではあったってことだよね?

〇適切な蟻地獄  ツッパリだの魔法少女だのってもしかしてフォームチェンジじゃなかったってこと?

〇みろっく    え?じゃあアレ何だったの

〇日本代表    …………

〇火星      …………

〇宇宙の起源   …………

〇外から来ました 何でもいいから誰か何か言えよ

〇無敵      TENETがU-NEXTに来てるらしいぞ

〇トンボハンター そこまで何でもいいとは言ってない

〇日本代表    もうこんな女のこと忘れて、ずっとロバートパティンソン見てようかな

────────────────────────────────────








 マリアンヌと『外宇宙害光線(アンノウンレイ)』が激突している戦域から、少し離れて。

 驚くべき物量で押し寄せる信者たちを、ハインツァラトゥスの騎士たちが迎え撃っていた。


舞い踊れ(romancia)羽根持つ者たち(guardian)聖なる泉の傍で(spring)驚きを齎すもの(magician)

「こいつら、全員魔法使いかッ!?」


 怪しげな衣装を身にまとい、変質した魔法を用いる国賊たち。

 迷わず殺傷してもいい。だが第三王子の報告によれば、どうにも彼ら彼女らは自分の意思ではなく洗脳されて活動している、いわば被害者である。

 戦士にとって相手を殺さず生け捕りにするなど、本来知ったことではない。国の敵ならば抹殺するのが使命である。だが国の真なる敵はここになく、同士討ちに近しい状況を強いられている。


 命を守るための防戦で相手を気遣うことなどできるはずもない。

 圧倒的な実力差があるなら、逆に加減を誤れば一ひねりに命を摘み取ってしまう。


 どんな世界であれ、これは無理難題である。

 敵は国民。傷つけることなく、殺意ある相手を制圧せよ──



楽勝だネぃ(・・・・・)!」



 豪快なフルスイングだった。

 そこらの岩石など木っ端みじんに砕いてしまいそうなハンマーの一振りが、信者たち十数名をまとめて打ち上げる。

 だが驚くことに血は舞わない。


「B3小隊は前へ出なさいナ! しかし……成程、成程! もしかして本気を出せない騎士を押し込もうとしたのかい!? それはちょっと見込みが甘いと言わざるを得ないナ! おっとA5小隊、引いてC1小隊と合流だヨ!」


 ハインツァラトゥスの騎士たちを指揮しつつ、最前線で最も多くの敵を制圧し続ける青騎士。

 彼が持つ武装、対魔法使い装備(フェンリル)のハンマーがそのカラクリを示している。

 今そのハンマーは各所のパーツがスライドし、魔力の光を漏らしていた。


(……ッ! ロイのやつに瞬殺されたと聞いて、てっきり俺は青騎士は俺の想像よりはるかに弱いもんだと思っていたが……実戦仕様の機械装甲を使うと、こんな芸当までできるのか!?)


 自国の装備だから、ユートは青騎士の技巧も、その難度も瞬時に見て取れる。

 完全マニュアル操作による非殺傷モード、とでも言うべきか。

 遠い平行世界における、電力を用いた機械駆動ではない。バッテリーにため込んだ魔力を循環させ膂力を底上げする、魔法使いとしての血筋・適性がなかった者を戦士へ仕立て上げる最先端装備。


 空前の天才、リンディ・ハートセチュアが基礎設計を行った、時代を変え得る兵装。


 それを用いて行われる絶技こそ、気絶させるための衝撃に絞った制圧攻撃である。

 元より王都の治安維持も任務に入っている身、暴徒を安全に鎮圧する技術など研究し尽くした。


「こちらのことは気になさらず! 王子殿下は後方へ退避を!」

「……ッ!」


 青騎士の指示の下に順次制圧しながら、騎士たちがユートを囲んで防護する。

 思わずユートは顔を上げ、戦場の先を見た。


「だが、マリアンヌのやつは……!」


 先ほどこちらに放射された光の攻撃。

 あれを受けて、マリアンヌが無事という保証はないのだ。


「チッ……青騎士殿! 俺に行かせてくれ、頼む!」

「できない相談ですネぇ! 王子をみすみす前線に送り込むわけにはいきませぬヨ!」


 優勢に進めてこそいるが、騎士たちはフル稼働だ。

 青騎士はこちら側の戦場の、勝利への道筋を既に見出している。このまま進めていくだけで、勝てる。

 だがあちらの上位存在(デカブツ)は。


(……行くしかないかネ。彼女の言う通り、戦闘経験がないのに飛び込むのは非合理的なんだケド)


 無謀かもしれない。だが手をこまねいている理由もない。

 青騎士は側近に指揮を預けるべく、振り向いた。


「キミ! 私はもう少し前に出る! 基本的には二小隊合流型で陣形を維持すれば────」


 その刹那──

 世界が爆砕し。

 遠くから、「サジタリウスフォームッッ!!」とかいう訳の分からない叫びが、戦場に響き渡った。








「力が……力が漲りますわ……!」


 サジタリウスフォームに変成後。

 わたくしは弓を片手に、唇をつり上げ『外宇宙害光線(アンノウンレイ)』を見下ろしていた。


『サジタリウス……射手座の概念装甲か! ボクより内側なのに、こんなに強い出力を……!?』

「未知なら強いって、中二病じゃないんですから! よく知っているものが安定した出力を出すのは常識ですわ!」



〇第三の性別 未知の権化みたいなやつが何か言ってんな



 わたくしのはいいんだよ。信頼してるからな、流星を。

 それはともかくとして、この高度は気持ちいいな。流星を足場とした跳躍や、ルシファーの加護による飛行、それらとはまた違う感覚がする。両足から常に推力が発生し、重力を完全に相殺しているのだ。

 成程な。サジタリウスフォームは飛行というより浮遊を可能としているのか。


「アナタの旅は終わりだと、もう一度告げましょう。同じ系統の存在として敬意は払います」

『へえ……その状態なら勝てると?』

「無論ですわ。アナタの旅の終着点は、このわたくしです!」


 ここまで好き放題やってくれたじゃねぇーか。実際押され気味だったし、痛打ももらっちまった。

 だが、ここからはそうはいかねえ。


『マリアンヌ、頑張れ!』

「フッ、大悪魔に応援されるというのもオツなものですわね」


 無邪気な声が聞こえたので後ろに振り向いた。

 大悪魔は真紅の法被を着て、両手と翼の先端で、計二十はあろうかというサイリウムを振っていた。


「!?!?!?!?!?!?」

『!?!?!?!?!?!?』

『……どうしたマリアンヌ。観客(おれ)のことなど気にするな』


 気にしないほうが難しくねーかなこれ!?



〇外から来ました 夢女さん的にはどうなんですかねこれ

〇つっきー 新スキン実装じゃん……ヤバ……カッコよくはないけどそこが愛せる……

〇red moon すべてを供給に変換するそのフィルターマジで羨ましいわ、いくらで買える?



 どうやら恩を売れたようだ。

 いつか加護とかくれるかもな、まあそんなことねえかガハハ!


「それはさておき! 遠慮なくぶちかまさせていただきますわ!」


 左手に弓を構え、右手を水平に伸ばす。流星の輝きが結集し、それが超高密度で形成された、光の矢となった。

 光の矢をつがえ、引き絞る。



〇火星 お前弓道とかやったことあんの?



【実際にやるのは初めてですわね……

 ですがお任せあれ! Fateとカイチュー!で習いましたわ!】



〇日本代表 習ったって言わんのよそれ

〇木の根 カイチュー懐かしいな、メインヒロインが男の娘じゃなければなあ

〇第三の性別 殺す!!

〇宇宙の起源 殺意爆速太郎くん!?



 うるせえな。集中力が乱れるだろ。弓は集中が命なんだからな(多分)。

 右目を覆う形のモニターで、アンノウンレイの胴体部分に照準を重ねる。

 狙いを定め、静かに右手を放す。


「────ッ」 


 反動に上半身が吹き飛んだかと思った。

 ブレた。直撃コースからそれた一射が銀河の少し横を通過する。

 微かに掠めた、だけにもかかわらずアンノウンレイを構成する銀河の一部が、ドパンと弾け飛んだ。


「きゃぁっ……!?」


 砕け散った光の輝きに目が灼かれ、さらに吹き荒れた魔力の嵐もあって体勢が崩れる。

 撃った側でこれだ。身体の一部を吹き飛ばされたアンノウンレイは、ぐらりとその巨躯を揺らがせていた。


『い゛ッ──!? 疑似的とはいえ宇宙を砕けるのか、それは!?』


 成程。威力は完全にお墨付きだ。

 いや……正直体感では、臨海学校でやった悪役魔法少女令嬢ブラスターの方が数百倍強い。向こうだと照準も直接網膜に投影してくれてたし。

 やっぱルシファーって凄いんだな……クソムカつく。あいつの澄ましたイケメン顔はいつか必ず右ストレートで粉砕する。メッチャムカつく。


「ふ、ふふふっ。どうやら形勢逆転ですわね?」

『さすがだぞマリアンヌ……! どう見ても制御できていなかったが、根拠不明な自信に満ちている!』

「さっきからアナタは何? ヒーローショーの声援というよりボディビルのコンテストみたいになってるのですが」

『ボディビルのコンテスト? ふむ……なるほど……ラーニングした。心に尊大な自尊心を飼ってんのかい!?』

「ネオ李徴!?」


 もしも俺様系好きな人が山月記を書いたらってか。ラーニングが変化球過ぎるだろ。



〇宇宙の起源 キレてるよー! 思考回路が切れてる!

〇日本代表 大脳1Kかい!



【ここぞとばかりに乗ってくるんじゃありませんわよ!】



 勝ち筋が見えたからか、荷が少し下りた。

 どうも無意識のうちに気負い過ぎていたらしい。

 問題ない、次の一射で片づけてやる。そう思っていた時だった。


『なるほど。ボクの考えが甘かったのか』

「?」


 欠損した銀河が、膨らむようにして復元されていく。

 背筋を悪寒が走った。


『ボクはここで死ぬわけにはいかない。未知として、未知なる光の結晶体として、既に人類(キミたち)が手に入れたものに砕かれるわけにはいかない。ボクはいつか踏破されるもの、そして未だ踏破されぬものとしてここにいるのだから』


 瞬時に第二の矢を顕現させ、つがえた。

 理論上の最速起動。

 それでも、間に合わない。



『記録構築:疑似放射:エデイマス光線』



 は? 何それ?





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― 新着の感想 ―
[一言] ルシファー含めてボディビル風のコメント全員から煽られてるけどマリアンヌ的にはセーフなのか
[一言] ルシファーの女さんは本当に凄いな(尊敬) オタクの鑑だよ(畏敬) オタクたるもの斯くあるべし(確信)
[一言] ルシファーが必死にサイリウム振り回してるの想像して不覚にも萌えた……。 くっ……!
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