第1話「足りないはずの人数」
今回はミステリーに近い話です
魔王は倒された。
世界は救われた。
――そのはずだった。
「……なぁ」
カイ・レンフォードは、歩きながら口を開いた。
「俺たちって、何人だったっけ」
風が止まる。
隣を歩いていたリシアが、わずかに眉をひそめた。
「何を言っているんですか、カイ」
「五人でしょう?」
セラも小さく頷く。
「はい。私たち五人で魔王を討伐しました」
ゼノは興味なさそうに前を見たまま言う。
「くだらないことを聞くな」
五人。
その言葉は正しい。
頭でも分かっている。
でも――
(違う)
何かが引っかかる。
カイは立ち止まる。
「……じゃあさ」
「なんで“多かった気がする”んだよ」
沈黙。
誰もすぐには答えない。
リシアが口を開く。
「それは……」
でも、続かない。
セラが不安そうに言う。
「……私も、少しだけ」
ゼノが初めて振り返る。
「は?」
セラは戸惑いながら続ける。
「人数は分かるんです。でも……」
「何か、足りない気がして」
その言葉で、空気が変わる。
カイは確信する。
(やっぱりだ)
そして、最後に一人。
何も言っていない男を見る。
ノア。
ノアは、少しだけ視線を逸らした。
その一瞬で、すべてが決まる。
(こいつ、知ってる)
カイは歩み寄る。
「おい」
ノアは答えない。
「ノア」
名前を呼ぶ。
それでも、すぐには返事をしない。
やがてノアは、ゆっくりと口を開く。
「……なんだ」
カイは目を逸らさない。
「俺たち、五人だよな」
確認のはずの言葉。
でも、それは問いだった。
ノアは数秒、黙る。
そして、答える。
「ああ」
短い言葉。
それだけ。
でもカイは分かる。
(嘘だ)
理由はない。
証拠もない。
それでも確信する。
(こいつは、何か隠してる)
風が吹く。
どこか遠くで、鳥が鳴く。
何も変わらない景色。
でも、確実に何かが“欠けている”。
カイはもう一度だけ言う。
「……誰か、いたよな」
その言葉に――
ノアの指が、わずかに動いた。
ほんの一瞬。
でも見逃さなかった。
(やっぱりだ)
ノアは目を閉じる。
そして、静かに言う。
「気のせいだ」
その言葉は、あまりにも軽かった。
だからこそ、重かった。
カイは何も言わない。
ただ前を向く。
でももう分かってしまった。
この旅は終わっていない。
何かが終わっていない。
そしてそれは――
「俺たちは、本当に五人だったのか」
その疑問から、すべてが始まる。
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