三話 side:A 「予想外の事態」
急いで書いたので、口調が安定しなかったりがあるかもしれません。時間がある時に修整と描写補充をします。
「お嬢様、手筈は全て滞りなく済んでおりますので合図を」
リリウムへの試練として様々な事件を起こす事になったため使用人達は忙しなく動いている。そして、全ての準備が今終わったらしい。
「待ちなさい、どのようなトラップを仕掛けているのかしら?」
「はい、洞窟へ行く道中は商人同士の諍いと数匹の魔物の手配、そして数件のクエスト発生です。補足としてはクエストを受注し、完了しなければ進めないようになっております」
「分かったわ、そのクエストに私の手柄を立てるようにしなさい」
「了解しました」
クエストを攻略する時に私の助けてを乞うようにする事で私への好感度をアップさせる作戦ですわ!これで彼は従順になる筈……!
などと目的とは離れていくのだがアザレアはその事に気づいていない。そもそも彼女の目的は彼に思いを告げる事であり、従順にさせるわけではないのだ。とここで、リリウムの様子を観察するために使用人に申しつける。
「双眼鏡を持ってきなさい」
「はい、もう持ってきております」
アザレアの命令が分かっていたのか、すでに双眼鏡を差し出している様子。
準備がいいな、としか思わないアザレアだが、使用人は優秀なのだ。
「どれどれ、彼の様子は……」
とベランダに出て、双眼鏡を覗くアザレア。
「今外に出ているわね、武装しているし、これから洞窟に向かうのかしら。使用人、配置に就くよう命令しなさい」
「了解しました」
と言い、魔法の詠唱を始める。高等魔法ではないがかなり便利な魔法なので、冒険者や農民、商民に関わらず、誰もが持っている。
まずは最初の試練、商人同士の諍いを演じさせる。そしてそれをリリウムに止めさせるのだが、判断基準はアザレアに掛かっている。
「あ、ついに最初の試練に入りました」
「あれに割り込むのは厳しそうでございますわね」
商人達は激しく口論になっており、今にも戦いに発展しそうである。あれが演技だとは誰も思わないだろう。
しかし、
「んん?何やらマラコイデス殿が商人の間に入った様子ですぞ」
「あれ?商人達が去って行く?!どうなっているの?」
リリウムがあたかも簡単に諍いを止めてしまったのだ。少し話しただけで商人達は互いに謝り、去ってしまった。
「え?演者には簡単にやめてはいけないと申したのでしょう?」
「は、はい。最低でも30分程は長引かせるように命令したのですが……」
「ま、まあ、何か間違いがあったとしておきましょうか……」
アザレアはそう信じる事にしたのだが、どうも不気味な程にあっさり止めてしまったのだ。
次の試練もあるから大丈夫……なハズですわね。
「次もありますし……」
使用人もそう言い、再び見守る事に。
次に起こるのは魔物の襲撃だ。使用人が言うにはそこそこに強いとの事。
魔物は演技でも何でもなく人を襲うので今度はさっきの様にはいかない。
「ホブゴブリン5体ですか……ちょっと一人では厳しいそうですけど、突破できるんでしょうね?」
「え、えっと多分……」
と不安げな事を言う使用人。普通、ホブゴブリン1体と平均レベルの冒険者が互角位なのに対して、一人とホブゴブリン5体は無謀であるが、アザレアは気づいていない。
「出くわしましたわ。もし、倒れたのならすぐに助け出しなさい」
「了解しました……」
アザレアはそう言いつつ観戦する。するとリリウムは弓を持ち、一発でホブゴブリンの頭を射抜いたのだ。他のホブゴブリンにも狙いを定めて一閃、あっという間にホブゴブリンは倒されてしまったのだ。
「凄い……彼は弓の名人ですの?」
「い、いえ。普通、ホブゴブリン5体を一人で討伐するなど、それこそ達人クラスの者でしかできません……。それに、本国に高名な弓取など聞いた事もありません……」
「?!え、それでは無謀な事をやり遂げたんですの?それに、いくら何でもそのレベルの魔物を試練に出すとは聞いてませんよ?」
流石にやり過ぎだろうと思い、事情を聞いてみる。結果的には良いのだが、下手したら他の人間にも被害が出ていたかもしれないのだ。
「それがですね、今入って来た情報によると、あれはどうやら偶然にも進化してしまった個体の様です……。まさか進化するなど考えてもみなかったんでしょう」
確かに考えもしない事なのだ。普通、進化とは何百年生きた、長寿の魔物が極小の確率で起こるものなのだから。
「ひょっとして、彼はかなり強いのでは?」
「ええ、ホブゴブリン5体倒した時点でなかなかの実力です」
使用人は断言する。アザレアは実戦はした事がないが、魔法に関してはそれなりの適性がある。
「次はクエスト数件ですわね。私の役目はいつですか?」
「2件目のクエストでお嬢様には洞窟に行ってもらい、マラコイデス殿の手助けをし好感度を上げる予定でしたが……」
「あの実力だと、手助けは要らなさそうですわ……」
これでは彼を従順にできない!と、落ち込むアザレアだが、
「大丈夫です!策は考えております。今回は‘‘吊り橋効果’’と言うものをやってみては如何でしょう?」
興味が出たのか、アザレアは使用人の顔をハッと見る。
「吊り橋効果とは?」
「男女が極限の状況に一緒に居る事によって、人間としての本能で相手を好きになってしまうとの事です」
少しアザレアは考え込む仕草を取る。そしてすぐに承諾した。
「具体的には何をすればいいんですの?」
「マラコイデス殿と洞窟に行く事は同じですが、助けるのではなく、助けられる側になります。その時は、なるべくか弱い少女を演じて下さい」
「何故そうするかは分かりませんが、やってみます!」
大きくアザレアは頷く。色々と想定外の事態が起こってしまったが、結果的に良ければいいのだ。
「と話している間に一件目のクエストは無事終わったようですよ。そろそろご準備を」
「分かりましたわ」
次回はside:B、タネが分かってから読むのも面白いと思います。




