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5 現実世界は突然に

伊藤は山菜を取りに来ていた際、モブ山賊達に捕まったらしい。


そのがたいなら何とかなっただろと思ったが、戦う手段がほとんどなく、狩人相手では話にならないらしい。


山道に荷車を停めているらしく、そこに向かって歩きながら伊藤と話していたら、ふと疑問が湧いた。

俺は伊藤とモブ山賊達を見つける前、おそらく信仰の力(f a i t h)を使用して山道を凄まじい速さで走っていた。

にもかかわらず、進んだのか分からないほど途方もない長さだったのだが、伊藤はどうやって移動していたのだろうか?


山道に荷車が見えてきた。伊藤はなぜか山道を避けるように木と木の間の道なき道を歩くのだ。あまりにも不自然なため、なぜ山道を歩かないのか聞いたら、伊藤は一瞬の驚きのあと、呆れたような顔をした。


「まさか兄ちゃん、この道の上を通っていたのか!?」


当たり前である。目の前に踏み固まった地面、周りは木や草が生い茂っている中でわざわざ進みにくそうなところを進むやつはいないだろう。

踏み固まった地面からところどころ草が生えている程度のとても通りやすい道なのだ。

もちろんその道を通り、2時間ほど走り続けていたと伝えた。


「この山、「のぼら(さん)」に走る一本道、通称「嫌がらせの坂」はまともに通っちゃいけねえなんて有名な話だろうよ!」


、、、はぁ!?知らねーよ!

何その嫌~な名前の山と性格悪そうな道。。。

冗談もほどほどにと思ったが、伊藤の顔はいたって真剣だ。


「この山道には、「騙されるとかまじ(くさ)」が生えているんだよ。山道を通ると知らないうちに幻を見せられて、進んだ気になってるだけでその場で足踏みさせられてたりするんだよ。つまり、通りやすそうに見えて一番時間がかかるから、「嫌がらせの坂」って呼ばれてるんだよ。兄ちゃんはホント何にも知らないんだな」


つまり俺は、2時間近く超速で足踏みしててほとんど進んでいなかったらしい。。。

騙されるとかまじ草、、、クッソイライラしてきた。つーか何だよそのネーミング。まじ腹立つ。全部燃やしてやろうか!!


「この草は「がいらいしゅ」って言って、意味はよく知らんが生命力が強いんだ。やるだけ無駄無駄!」


なんだか伊藤が俺を軽くあしらいだした気がする。調子乗りやがって。今度は俺が狩ってやろうか!と一瞬頭をよぎったが、広い心でグッと堪えた。



荷車の前まで来た。俺はてっきり荷車を引くのは馬だと思っていたがそこには、顔は馬だが鹿のような角を持つ奇怪な生き物がいる。


「こいつは馬と鹿のハイブリッド。馬鹿(うましか)だ!馬より一回り小さいが小回りか効く便利なやつだよ!」


伊藤は得意気に話す。馬鹿(うましか)って、、、現実世界ではそれをバカと読むんだけど。。。

まぁそんなことは言う必要もない。ただ気になるのは、伊藤は山道の上を歩かなかったのに、なぜこの馬車、ではなく馬鹿車か、、は山道にいるのかということだ。


「草が見せる幻はある程度知能がないと上手く機能しないんだ。馬鹿(うましか)は鈍感だから全然気にせず行けるんだよ!すごいだろ!?」


やっぱりただのバカじゃねーか!!!

意気揚々と話す伊藤も伊藤だが、馬鹿(うましか)もなんだか得意気な顔してるように見える。こりゃ救えねーわ。。。


いざ乗ってみると、バカ、、じゃなくて馬鹿の大きさ的に頼りなさを感じる。

ホントに動けるのか?と思っていたら伊藤が手綱を握ったまま目をつむる。頭はずっと輝いている伊藤だが、その瞬間心臓のあたりが輝いたように見えた。

直後、馬鹿は軽快に進みだした。

伊藤の信仰の力(f a i t h)によって、馬鹿の足腰が強化されたらしい。どうやら信仰の力(f a i t h)の用途は多岐に渡るようだ。俺はどのような用途の力の力を使えるのだろう?


馬鹿はペースを落とさず山道を下る。ゴミ草の幻は確かに発動することなくすんなりと下山しているようだ。それはそれで腹立たしい。。。


馬鹿車にガタガタ揺られながらも、座っていたら徐々に睡魔が襲ってきた。

夢の中なのに眠くなるという現象はあるのか謎だったが、思考力が明らかに落ちてきている。

そういえば伊藤は何の宗教なのか聞いてなかったなと思いながらも、瞼の重さに耐えきれず、聞くこともなく瞼を落とした。。。



重々しい瞼を持ち上げると、そこには毎日のように眺めていた寂れたアパートの天井があった。


俺は夢から覚めたのだった。

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