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第 83 章 自身に立ち向かう試練

アジアでの課題だけがリリーの悩みではなかった。ニューヨークの本社でも、カーター・エンタープライゼスは内部的な重圧に直面していた。企業の急成長が業務運営をひっ迫させ、社内では経営体制をめぐる不穏な噂が囁かれ始めていた。

一部の従業員の間では、世界展開という次の成長フェーズを率いるリーダーとして、リリーが適任か疑問の声が上がり始めていた。彼らは、企業が多国籍化するにつれ、これほど大規模な組織を運営するには、より伝統的で経験豊富な経営陣が必要だと考えていた。企業経営の経験が浅い人物が主導権を握り続けることに、上層部の間にも緊張が生まれつつあった。

リリーは、経営とは正しい決断を下すだけでなく、人間関係や周囲の期待、信頼を調整することだと知っていた。しかし、まさか自社の内部からこうした反対の動きに直面するとは思いもよらなかった。心の中には動揺が広がり、どう対処すべきか途方に暮れていた。

大手クライアントとの交渉で疲れ果てたある夕方、リリーはサラと向き合い、状況を話し合った。サラはカーター社創業期から共に歩んできた、リリーがいつも信頼できる存在だ。

「噂は聞いています」

サラは静かながらも毅然とした口調で言った。

「社内の一部に、世界展開の業務にリリーが手を焼いていると見る人たちがいます。理念ばかりにこだわり、日常の業務運営が疎かになっている、と考えているようです」

リリーはため息をつき、状況の重圧を痛感した。

「会社の理念がこんな問題を引き起こすなんて想像もしなかった。ずっと価値観を貫き続ければ大丈夫だと思っていたの。でも今は…… もう確信が持てなくなったわ」

サラはリリーの肩に手を置いた。

「リリー、あなたは素晴らしい企業を築き上げてきた。考え方が違う人はいつでもいるもの。だからといって、あなたが間違っているわけじゃない。今のカーター社を作り上げたのは紛れもなくあなたであり、未来を導く理念を持っているのもあなただけなのよ」

リリーは友人の顔を見つめ、支えてくれる言葉に感謝した。

「どう対処すればいいのか分からないの。これまで現場に深く関わるリーダーであることを自負してきたけど、もう少し手を離すべきなのかしら。経験豊富な役員を迎え入れて、次のフェーズを導いてもらう必要があるのかも」

サラは首を振った。

「カーター社が今必要としているリーダーは、間違いなくあなたなの。誰かの機嫌を取るために、自分自身を変える必要はない。大局を見据え、周りのチームを信じればいい。この会社が成長できたのはあなたの理念のおかげであり、これからもその理念が成長を支えてくれるわ」

リリーの心に、再び明晰な考えが宿った。

「その通りね。こうした疑念に惑わされ、築き上げてきたものを見失うわけにはいかない。自分らしさを貫き、チームを信じればいい。共に、これから待ち受けるどんな困難にも立ち向かえるはずだわ」

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