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第 6 章:余波

あのキスの後の日々は、入り混じった感情に翻弄され、ぼやけた毎日だった。リリーはキャンペーン業務に集中しよう、やるべき仕事に打ち込もうと努めた。だがネイサンとの会議に座るたび、オフィスの向こうで彼の姿を目にするたび、思考はあの瞬間へと引き戻されてしまう。あの唇の触れ合い、彼の見つめる眼差し、肌に残る情熱的な感触――。

一方のネイサンは、意図的に距離を置くようになった。以前の穏やかな雰囲気は消え去り、かつてないほど仕事一辺倒で冷徹な態度を貫き、二人の関わりを完全に業務だけに制限した。隔たりは目に見えて広がり、リリーはかつてないほど混乱に囚われていた。

過酷な会議が連なったある午後、ネイサンは再び彼女をオフィスに呼び出した。あの出来事について話し合う時が必ず来ると分かっていたリリーは、この瞬間をずっと恐れていた。部屋に足を踏み入れると、扉が静かに閉まる。いつもより冷たく感じる空間の中、ネイサンは窓際に立ち、眼下の街並みを眺めていた。

「お呼びでしょうか」

リリーは平静を装い、声を整えて問いかけた。

ネイサンは振り返り、表情から本心を読み取らせない。

「話がある、リリー」

その一言で胸が締め付けられる。リリーはただ頷き、これから告げられる言葉に怯えながら、机の向かいの椅子を示される。

「座りなさい」

心を激しく打ち鳴らしながら腰を下ろす。これから始まる話が、決して穏やかなものではないことは明白だった。

ネイサンは長い間彼女を見つめ、言葉の選び方を慎重に考えているようだった。やがて重たい口調で語り始める。

「俺たちの間に生まれたこの感情が、仕事に支障をきたすわけにはいかない」

低く、断固とした響きだ。

「君はこのキャンペーンにとって欠かせない存在だ。だから、どんな事情があっても邪魔させるわけにはいかない。これからは、しっかりと境界線を設ける必要がある」

「境界線」という言葉が胸に刺さる。あまりに突き放された、冷たく決定的な響きだった。

「分かりました」

リリーは静かに答える。

「これからは仕事に専念します。約束します」

ネイサンは頷き、わずかに表情の硬さを緩める。

「そう言ってくれて安心だ。お互い、余計なことに気を取られるわけにはいかない。ここまで積み上げてきたものを、無駄にするわけにはいかないからな」

リリーはしばらく言葉を失った。この冷たい距離がどれほど辛いか、彼に伝えたい。自分がどれほど彼を想い始めているか、打ち明けたい。だが叶わない。大切なものが懸かっている今、私情に流れ、仕事を疎かにするわけにはいかなかった。

立ち上がり部屋を去ろうとした時、ネイサンが最後に彼女を見つめる。

「乗り越えられる」

低い声でつぶやくその瞳には、言葉にできない複雑な思いが宿っていた。

リリーは黙って頷いた。だけど心の中では、すべてが揺らぎ始めていた。

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