第 134 章 サンパウロ初の歩み
提携が正式に成立し、カーター企業はついにサンパウロ市場へ進出する準備を整えた。リカルド・コスタとの契約も確定し、今やリリーは計画の実行に集中しなければならない。もう後戻りはできない。取締役会の承認を得た今、これまで以上に重圧がのしかかっていた。
サンパウロでの最初の数週間は極めて重要な時期だった。リリーはサラや主要メンバーを連れて現地に飛び込み、初期業務の立ち上げを指揮した。市の中心部にオフィスを構え、現地の仕入れ先、流通業者、行政当局との折衝を次々と進めていった。
市場は活気に満ち、勢いに溢れている反面、予測不能な面も強かった。政情不安、為替変動、物流上の障害など、毎日のように新たな問題が立ちはだかる。その中で最も大きな壁となったのは熾烈な競争だ。
多くのグローバルブランドが既にサンパウロに地盤を築いており、容易に地位を譲る気配はない。リリーは、この過密な市場で自社だけの独自の立ち位置を築くため、他社との差別化を図る何かを見つけなければならないと悟った。
サンパウロの新オフィス会議室で、最新の市場データに目を通しながらサラが話しかけた。
「リリー、ここの競争は想像以上に熾烈だ。一気に突破口を開くため、思い切った施策を打ち出す必要がある。リカルドの人脈は頼りになるけど、他社との差をつける戦略が欠かせないわ」
リリーはテーブルを指で軽く叩き、思いを巡らせた。
「私たちの強みを徹底的に押し出すしかない。持続可能性と倫理的な経営姿勢こそ、最大の武器なの。利益だけを追う企業ではなく、地域社会や環境、未来を真剣に考える企業としてポジションを確立するの」
サラは深く頷き、全面的に同意した。
「それが一番の近道だと思う。現地の地域活動に協力し、一時的な利益だけを狙う外資企業ではないことを示せれば、サンパウロの人々の支持を得られるはず」
リリーは微笑んだ。
「その通り。顧客だけでなく、共に歩む現地パートナー選びも大事だ。リカルドのチームは優秀だけど、もっとネットワークを広げていく必要がある」
日が過ぎるにつれ、カーター企業は地域貢献プログラムを推進し、現地のNGOと連携関係を築き、持続可能な原材料調達やフェアトレードに関する施策を次々と始動させた。こうした取り組みは即時の利益を生み出すものではないが、一時的なマーケティング宣伝よりも長く続く信頼と好感を育んでくれる。




