第 116 章 新たな視点
リリーはネイサンの勧めに従い、オフィスの雑事から離れた静かな週末を過ごした。最初はなかなか気が休まらず、頭の中は仕事のことや待ち受ける課題でいっぱいだった。だが日が経つにつれ、心は次第にリラックスし、事業拡大の慌ただしさの中で見失っていた**本来の自分**を取り戻していった。
月曜日にオフィスに戻ったリリーは、心が落ち着き、軸の定まった心境になっていた。肩の重圧が完全に消えたわけではないが、かつてほど押しつぶされるような重さは感じなくなった。企業の未来だけでなく、自分自身の人生においても、何を望むかがはっきりと見えるようになった。
予想どおり、午前の会議は張り詰めた雰囲気だった。取締役たちは事業拡大のペース、来期の業績予測、継続的な投資の必要性など、次々と疑問を投げかけてきた。リリーは自らの戦略の土台が揺るぎないことを自分に言い聞かせた——持続可能な成長、揺るぎない誠実さ、品質へのこだわり。だが議論が**アフリカ・南米**といった新興市場の進出話に移ると、これからより複雑な段階に入ることをリリーは悟った。
「リリー、国際戦略の今後について話し合う必要がある」
ダニエルが部屋の張り詰めた空気を切り裂くように言った。
「ヨーロッパは順調、北米も軌道に乗っている。だが新興市場への進出を真剣に検討すべきだ。アフリカ、ラテンアメリカ——これらの地域を無視するわけにはいかない」
リリーは深く息を吸い、頭の中で様々な思いが駆け巡った。これらの地域に進出する課題は、市場の機会だけではない。異なる文化風土を読み取り、地域のニーズを理解し、何よりも汚職や不公正な商慣習が蔓延る土地でも、カーター企業の信念と誠実さを守り抜かなければならないのだ。
「同感です」
リリーは答えた。
「だが北米やヨーロッパと同じ手法で臨むわけにはいきません。現地との信頼関係を築き、地域社会と密接に連携し、私たちの進出が現地の環境や経済に悪影響を及ぼさないよう徹底しなければなりません」
ダニエルは眉を上げた。
「理念は結構だが、これらの市場がいかに競争激化しているかは知っているだろ。過度に慎重になってはいけない。迅速に動かなければ、あっという間に後れを取る」
リリーは言葉を慎重に選び、間を置いた。
「ゆっくり進めようと言っているのではありません。戦略を持って臨むべきだと言っているのです。どこでも同じ定型的なやり方で突入するわけにはいかない。私たちのブランドは信頼の上に成り立っており、これら新たな土地でも、一から信頼を獲得しなければならないのです」
役員たちが彼女の言葉を噛み締め、部屋は静まり返った。やがてカレンが声を上げた。
「リリーの意見には一理ある。進出に伴う倫理的な影響を慎重に考えるべきだ。特に進出実績の少ない地域ではなおさらだ。自らの理念を守り通して市場に参入すれば、長期的にはより大きな成功を収められるはずだ」
取締役たちが次々と肯くように頷き、リリーの心に安堵感が広がった。議論は容易ではなかったが、どれほど困難な市場であっても、自らの信念を貫き、世界に良い影響をもたらせるという確信が、改めて強くなった。




