第 111 章 混沌の中に安定を見出す
取締役会は、慎重ながらも前向きな雰囲気の中で終わった。新たな拡大プランの承認は満場一致ではなかったものの、リリーは推進に十分な支持を取り付けることに成功した。これから困難は待ち受けているだろうが、彼女は自らの理想を貫き通す決意を、これまで以上に強く固めた。
会議室を出ると、サラが思い巡らすような表情でリリーの後を追ってきた。
「よく頑張ったわ。簡単な決着じゃなかったのは 分かってるけど、これで良い方向に進められる。これからはあと実行あるのみよ」
リリーは微笑んだものの、重大な決断の重圧が肩にのしかかったままなのを感じていた。
「いつも支えてくれてありがとう、サラ。あなたがいなければ、ここまでこぎつけられなかったわ」
「君なら大丈夫」
サラは優しく励ます。
「正しい決断というものは、決して楽なものじゃないってことを忘れないで」
その夜遅く、リリーは机に座り込み、取締役会の記録に目を通していた。だが頭の中はいつの間にかネイサンのことでいっぱいになっていた。一日中会えず、二人の絆を改めて確かめる時間が必要だと感じていた。こんな先行き不透明な時こそ、ずっと自分を支えてくれた彼の存在が心の拠り所になる。
彼女はメッセージを送った。
「今夜、一緒に夕食をどう? 気分をリラックスさせて、二人だけの時間を過ごしたいの」
返事はすぐに届いた。
「いつでも待ってるよ。夕飯は僕が用意する。七時に迎えに行くね」
ネイサンがアパートに到着した頃、リリーは一日の出来事に心身ともに疲れ切っていた。二人で車へ向かって歩きながら、彼女は長い間張り詰めていた緊張を解き、そっとため息をついた。
「休暇が必要だわ。週末だけでもいいから、しばardsくすべてから離れて過ごしたいの」
車に乗り込むと、リリーがぽつりと呟いた。
ネイサンは優しく彼女の手を握りしめ、微笑んだ。
「君がそう言ってくれるのをずっと待ってた。早く計画を立てよう」
その夜は仕事の話を一切せず、ただ日常の会話に浸って過ごした。好きな番組の話をしたり、昔のデートの思い出に浸ったり、ここ数週間忘れていたような、心から笑い合う時間を過ごした。長い間ぶりに、リリーは本当の意味で心を休めることができた。
夕食が終わる頃、ネイサンは真剣な面持ちで彼女を見つめた。
「本当によく頑張ってるよ、リリー。何事にも全力を尽くす君の姿を見て、心から誇りに思ってる。だけど自分自身も大切にするのを忘れないで。僕はずっと、君のそばにいるから」
リリーは穏やかに微笑んだ。
「分かってるわ。もう忘れたりしない」




