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45歳。転移、若返り、強くなる!  作者: ユーマ


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28話 トンボ③


夕方。


防衛部隊の裏手。


空気が少し変わっていた。


さっきまでの単純作業の場じゃない。


人の動きが慌ただしい。


「おい、怪我人来るぞ!」

「スペース空けろ!」


声が飛ぶ。


トンボが顔を上げる。


入口から、団員が一人運び込まれてきた。


足を押さえている。


血が出ている。


「噛まれた!」


「魔物か?」


「小型だが牙に毒がある!」


空気が一気に張り詰める。


「解毒剤は!?」

「在庫切れてる!」


「は!?」


焦りが広がる。


ロイが舌打ちする。


「……タイミング最悪」


トンボの目が動く。


怪我人を見る。


足の傷。

腫れ方。

血の色。


(……これ)


一瞬で思い出す。


村で見たやつ。


同じ種類。


「待って」

思わず声が出る。


全員の視線がトンボに向く。


「……あ?」

一人が怪訝な顔をする。


トンボは迷わない。


怪我人の横にしゃがむ。


「触るぞ」


「お、おい勝手に――」


「これ、毒の回りまだ浅い」


トンボが言う。


手はもう動いている。


「縛って」


近くの布を掴む。


止血と同時に、毒の進行を抑える。


「もっと上!そこじゃ遅い!」


思わず声が強くなる。


団員が反射的に動く。


「こ、ここか!?」


「そう!」


トンボは頷く。


次の瞬間、振り返る。


「さっきのやつ、どこに置いた!?」


「は?」


「解体したやつ!」


ロイがすぐに理解する。


「あっちだ!」


トンボは走る。


解体した魔物の山。


その中から、特定の部位を探す。


(あった)


迷いなく掴む。


戻る。


ナイフを入れる。


「それ何やってんだ!?」


「いいから黙ってて!」


珍しく強い言い方だった。


周囲が止まる。


トンボは手を動かす。


潰す。

絞る。

混ぜる。


「水!」


「お、おう!」


受け取る。


即席の液体を作る。


「これ飲ませて」


「大丈夫なのか!?」


「いいから!」


一瞬の間。


そして――


飲ませる。


数秒。


何も起きない。


空気が固まる。


「……おい」


誰かが呟く。


その時。


怪我人の呼吸が変わる。


荒さが、少し落ちる。


「……あ?」


「腫れが……止まってる?」


ざわめき。


トンボは息を吐く。


「応急だけど、毒は抑えた」


そのまま続ける。


「ちゃんとした薬あれば治る」


誰もすぐに言葉を出せない。


ロイがゆっくり口を開く。


「……なんで分かったんだ?」


トンボは少しだけ困ったように笑う。


「村で似たやつ見たことあるんで」


当たり前みたいに言う。


沈黙。


そして――


「……すげぇな」


ぽつりと。


一人が言う。


「マジで助かったぞ」

「やばかったぞ今の」


空気が一気に変わる。


トンボを見る目が違う。


“雑用”じゃない。


“戦力”を見る目。


トンボは少しだけ照れる。


「いや……たまたまっす」


その時。


足音。


静かな気配。


振り向くと、一人の男が立っていた。


整った動き。

鋭い目。


レオルド。防衛部隊の副隊長、実質的に隊を取りまとめている男だ。


一瞬で状況を把握していた。

「……誰が処置した?」


短く。


ロイが顎で示す。

「こいつ」


トンボがびくっとする。


レオルドの視線が向く。


測る目。


「名前は?」


「ト、トンボっす!」


レオルドは数秒見てから言う。


「もう一度できるか?」


「え?」


「今の処置だ」


トンボは少しだけ考える。


そして頷く。


「材料あればできます」


レオルドは即答する。

「よし、材料を確保しろ!」


周囲に指示が飛ぶ。


「同種の素材を分類」

「簡易処置手順をまとめろ」


動きが変わる。


一気に“仕組み”になる。


トンボは目を丸くする。


「……え、え?」


レオルドはトンボを見る。


「お前のそれは偶然じゃない」


断言する。


「使える」


短く。


それだけ。


だが重い。


トンボの胸が少しだけ熱くなる。


その時、後ろから声。


「調子乗るなよ」


振り返る。


グレンが立っている。


腕を組んでいる。


「今のは良かった」


一瞬、間。


「でもな」


一歩近づく。


「前に出たら死ぬのは変わらねぇ」


現実を突きつける。


トンボは一瞬だけ固まる。


でも――


頷く。


「……はい」


グレンはそれを見て、少しだけ口元を緩める。


「その代わり」


「後ろで死なせんな」


短く言う。


トンボの目が少しだけ見開かれる。


そして――


強く頷く。


「はい!」


声がはっきりしている。


さっきまでと違う。


自分の役割を、初めて掴んだ顔だった。


夕日が差し込む。


裏方の場所。


でもそこはもう、“裏”じゃなかった。


戦いを支える、もう一つの前線になっていた。

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