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45歳。転移、若返り、強くなる!  作者: ユーマ


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1話


朝靄のような白い光が、ゆっくりと視界を満たしていた。


何も見えない。


上も下も分からない。


ただ、全身が水の中に沈んでいるような感覚だけがあった。


――死んだのか。


そんな考えが浮かぶ。


最後に覚えているのは、夜道だった。


仕事帰り、コンビニに寄って帰る途中。


道の向こう側。


空気が歪んで見えた。


まるで熱気のように、景色が揺れていた。


その中心に、小さな子供が立っていた。


信号を無視して飛び出した子供。


そして、突っ込んでくるトラック。


気づけば体が動いていた。


子供を突き飛ばし、その瞬間、目の前の空間が割れた。


耳鳴り。


浮遊感。


世界がねじれる感覚。


そこから先は覚えていない。


「……っ」


遊真は薄く目を開けた。


最初に見えたのは、青空だった。


木々の隙間から、眩しい陽光が差し込んでいる。


鳥の鳴き声。


風の音。


湿った土の匂い。


「……森か」


ゆっくりと上半身を起こす。


その瞬間、違和感に気づく。


体が軽い。


信じられないほど軽い。


腰も痛くない。


肩も重くない。


「……楽だな」


思わず漏れた。


指を握る。


関節が滑らかに動く。


立ち上がる。


膝が痛まない。


「……若い、のか?」


服を見る。


見覚えのないシャツとズボン。


靴も知らないものだった。


近くの水たまりを覗き込む。


映った顔を見て、少しだけ目を細めた。


二十歳前後。


見慣れた自分ではない。


だが――


「……悪くないな、なかなかイケメンだ」


驚きよりも、納得が先に来た。


夢にしては、風も匂いも鮮明すぎる。


なら、現実として受け入れるしかない。


「あとで考えればいいか」


そう呟いて、周囲を見る。


深い森。


見たことのない景色。


空気は澄んでいるが、どこか重い。


その時、背後で音がした。


振り返る。


大きな岩。


試しに手を置く。


力を込める。


ばきっ。


「……おいおい」


思わず苦笑した。


指がめり込んでいる。


軽く拳を当てるだけで、木が揺れる。


少し跳べば、軽く二メートル近く浮く。


「これは……やりすぎだろ」


その時――


「グルルル……」


低い唸り声。


遊真は顔を上げた。


茂みの奥。


大きな影。


現れたのは、巨大な狼だった。


普通じゃない。


明らかに異常。


「……さて」


不思議と恐怖心はなかった。


一歩だけ前に出る。


無理に構えない。


ただ、観察する。


すると見えた。


体の中を流れる、青い光。


筋肉の動きと一緒に、流れている。


胸の奥に集まる、小さな石。


「……そこが要か」


狼が飛びかかる。


速い。


だが――見える。


踏み込み。


重心。


全部分かる。


「焦るなよ」

誰に言うでもなく、ぽつりと呟く。


半歩ずれる。


牙が頬をかすめる。


風だけが通る。


近くの枝を掴む。


振る。


ごんっ!


鈍い音。


狼が吹き飛ぶ。


「……いけそうだな」

手応えを確認する。


もう一度来る。


今度は真正面。


「いいぞ」

小さく呟く。


踏み込む。


青い流れの中心へ。


叩き込む。


光が揺れる。


弱くなる。


「そこだな」


もう一撃。


光が止まる。


狼の体が崩れる。

動きが止まった。


遊真はゆっくり息を吐いた。


「……大丈夫そうだな」

自分に言うように呟く。


その時――


「うわああああっ!!」


子供の悲鳴。


遊真はすぐに顔を上げた。


走る少年。


追う魔物。


二匹。


「――間に合うか」


次の瞬間、もう走っていた。


景色が流れる。


一歩で距離が消える。


割り込む。


拳を振るう。


どんっ!


一匹を吹き飛ばす。


もう一匹。


蹴り。


宙に浮く。


「大丈夫だ、下がってろ!」

少年に声をかける。


安心させるように。


青い流れを見る。


弱い方から。


枝を叩き込む。


一匹、沈黙。


もう一匹。


避ける。


崩す。


叩きつける。


終わり。


静寂。


少年がぽかんと見ていた。


「……怪我は?」

しゃがんで目線を合わせる。


少年は慌てて首を振る。

「だ、大丈夫……!」


「そうか。よかった」

小さく頷く。


少年の顔に、少しだけ色が戻る。

「兄ちゃん、すげえな……!」


「たまたまだよ」

軽く笑う。

「それより、ここ危ないな」

周囲を見る。


「安全なところはあるのか?」


少年は大きく頷いた。

「村がある!すぐ近く!」


「じゃあ案内してくれるか」


「うん!」

少年が立ち上がる。

「オレ、トンボ!」


「ユーマだ」

短く名乗る。

「よろしくな」


トンボが嬉しそうに笑う。


遊真は森を見た。


知らない世界。


知らない力。


だが――


「まあ、なんとかなるか」

少しだけ肩の力を抜く。


「一人じゃないしな」


トンボの方を見て、そう言った。


新しい人生が、静かに動き始めていた。

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