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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第15章 人のいない駅‬
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12 結婚式・・・アリス

 これまで:リシャインの街は借金を背負いながらも発展している。材木確保のため林道開発を進めた。

 早いものでリシャインに来て1年ちょっと。街の人口は6000を超えた。近隣7町村、平原の方にも入植者が入って村が一つできた。

 ずいぶんといろんな面倒もあった。その度にリカルドと奔走し、ミットやシロルに何度も助けられた。


 8ヵ月目から街直営の貸し物件が相当数用意できたのと、求人が増えたので準備金の減額をしたけど、街には2億シル近い借金ができた。

 今後20年かけて返済する契約になっている。でもだんだんにあたしの出番は少なくなって、リカルドの代行みたいな仕事が多くなっていた。



 ネディア義母さんとサタナ義姉さんが、この間から何やら動いているのは気づいていた。

 ミットも何やらやっているようだとは思ってたんだよね。

 街の代議員を集めるホールが庁舎にはある。議席は最大120人まで増やせるけど、まだ議員は37人だ。

 なので壁が簡単に移動できる作りになっていて、その裏は街の住民のための催し物会場になってるんだ。幅10メル、コの字になった2階席と3階席。下層の床も緩やかな階段状に変形できる。



「アリスさま、お願いがございます。あたくし何着かお衣装を作ってみたのですが、感想などお聞きしたいのです」


 そんな風にシロルの言葉からその日は始まった。用意されていたのは4着、動き易そうな外服、おしゃれな室内着、可愛い着ぐるみまで取っ替え引っ替え着せられた。

 1着着るとその度に合わせた髪型や化粧までして、ミットが絵描きカメラで何枚も撮っている。


「顔はあたいがちゃんときれいに描くからねー」

「それなら化粧なんて要らないでしょ?」

「あら、それはいけませんわ。あたくしの衣装の良し悪しが、どこまでのものか分かりませんもの」

 それってどう言う意味なんだ?


 4着目は白いドレス。襟ぐりから胸にかけて大きく開いていて、背中にも大きな卵形の穴がある。そのくせスカートは生地が薄いとはいえ、2重になったそれぞれに大きなドレープを取り、下の生地の奥が薄い青に染められる凝りよう。

 後ろに束ねた髪にも白いレースの大きなリボンをつけられ、着ぐるみに擦れたからと言ってさらに化粧を塗り込まれてしまった。


 シロルとミットが周りを回り出来映えを確かめる。流石に4着目では抵抗する気力もない。


「アリスさま。顎をあげて胸を張ってくださいませ!」

 ミットのカメラに合わせてポーズなど取らされていたので、何も考えていないのにシロルの声に体が反応する。ミットが転移したのはその途端だった。


 わあっと言う声と耳を聾する拍手耳に飛び込んできた。大きなホールを埋め尽くすかの様なたくさんの白いテーブルを、囲んで立つ人々が目に映る。

 服装はバラバラだったが、見渡すと3階席にまでテーブルがあるようで、手摺り越しにぎっしりと立ち並び、こちらに拍手を送っている。


 やられた!?でも何が起きるの?


 右に進み出たのは着飾ったサタナ義姉さん。大きく両手を振り上げた。会場が一瞬に静まると手を振り下ろす。


「「結婚おめでとう!!」」


 呆気に取られ、ふらりと揺れるあたしの左から、腰に回した腕で支える者があった。やっぱり白い上下を着たリカルドだ。


 リカルドが大きな声で叫ぶように応えた。


「ありがとう!!」


 それで皆、満足したのか何度も練習させてあったのか、テーブルに並んだ食事に向き直る。あたし達も義母さんと義姉さんに押されるままに、壇上のテーブルを前にして並んで座らされた。

 クーロイ義父さんがカップを持って前に出ると、叫ぶようにカップを持ち上げ言った。


「俺の息子と娘の結婚を祝ってくれてありがとう。明日、リシャインはお祝いの全休と決まった!大いに飲んでくれ。乾杯!!」


 見知った顔がいくつも給仕に回っている。テーブルを見ると、エレーナやシロルの鍛えた料理人達が何人も厨房に入っているだろうと分かる、凝った料理がどのテーブルにもあった。

 こちらには寄って来たりしないけど、料理や飲み物を受け渡す合間にあたしの方を見ていたり、その眼差しがなんとなしに優しい。


 街の人達が代わる代わる挨拶に、あるいは冷やかしに来る中、ミットがあちこちでフォトーを撮りまくっていた。あれはきっと誰が来てくれてたのか記録してるのだろう。

 この宴が始まる前の着せ替えが急に腑に落ちた。あの写真は何も言わず裏方に廻ってくれた、あたしの大事な人たちに配るためだったんだ。つと頬を涙が伝い落ちた。


「アリスー。一番の笑顔を撮らせとくれよー」


 目を上げると満面を笑みにしたミットがいた。リカルドに励ますように肩を抱かれ、あたしは手元のおしぼりを目に押し当てると精一杯笑った。



 1ハワーが過ぎるとさすがにお酒が入って場も乱れてくる。あたしは緊張しっぱなし。リカルドもくたびれ顔だ。

 突然中央でテーブルの小皿を使ってジャグリングを始めた奴がいた。顔を真っ白に塗って鼻と口を赤く塗っている。あの芸は見たことがある。元ドルケルの一人、おそらくジャグだ。

 酔っ払いどもがヤンヤと囃し立てる中、一つまた一つと皿の数を増やし、さらに高く皿が舞い上がる。

 ミットが脇に現れて家まで送ると言った。

 あたしはリカルドの目を見た。

 リカルドが頷くと、次に目に飛び込んできたのはあたし達の家の居間。


 庁舎はそれほど離れてないので、囃し立てる声がここまで聞こえる。

「あたいも割り込みであれやって来るよ」


 そう言ってミットは消えた。居間のソファに二人でぐったり持たれた頃、庁舎から聞こえる歓声がさらに大きくなった。


「すごい盛り上がりだな?」

「後でシロル辺りに録画を見せてもらおうよ」

「そうだな」

「ね、急に入った明日の休みは何してよーか?」


   ・   ・   ・


 これであたしたちのトリラインの探検のお話はおしまい。

 でもこの世界(フロウラ)の1/20でしかない。あたしたちの冒険はまだまだ続くよ。


 またどこかでお会いしましょう。

 バイバーイ。

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