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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第15章 人のいない駅‬
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10 ジャスパー・・・ミット

 これまで:リカルド一家の引越しも終わり、リシャインの街をどうして行くか考え始めたリカルドは、庁舎と自宅の場所を決めた。

 リカルドが街長を引き受けてから1月、リシャインの支流整備は順調に進んでいる。


 順調と言ってもまだ出口付近に蓋した程度で、道の拡幅も物資集積所も手がついてはいない。

 リシャインの街も庁舎前に仮橋が掛かった切りで寂しいものさー。人口300足らずじゃそれで十分だけどねー。



 あたいは今巨大魚(ジャスパー)狩でタイタロスへ来てる。


 北西にある3つの小島を繋ぐ道路がついにぐるっと繋がったんだ。これでジャスパーと大タコをこの巨大な生簀から駆逐すればいい漁場になるし、海上を延々380ケラルも走るルートは観光名所としてなかなかのものだ。


 で、ジャスパー狩りだけど、支店近くの海岸をドロンで飛びながら気配を探って、見つけたらちょっと水中に跳ぶんだ。ドロンはまたアリスにわがまま言って作ってもらった。これ便利なんだもん。


 ジャスパーの鼻先と言っていい距離であたいの体を見せびらかすんだよー。空気を多めに纏って重さも調整してるから、あたしはどうってことない。

 見境のないジャスパーはすぐに食いつこうと突っ込んでくるのを、一旦空中に逃れるのが肝かなー?上だよーって感じー?


 水面近くを見え隠れするように、なるたけ一直線に跳んで追いかけっこ、あたいは餌だよー。ジャスパーが海面から食いつく気配に合わせてパッと見える範囲の先へ飛ぶ、それだけなんだけど面白いように追いかけて来るんだ。


 誘導してる途中で2匹に増えることもあるけど、やることは一緒だからねー。

 支店近くの海岸に誘導して住人たちが見えたところで、海面から飛び出した頭に遮蔽材(タングステン)爆弾を送り込んで仕留めるんだー。


 島民たちが4、50人、寄って(たか)ってロープを引いて、少しあたいが浮かせたジャスパーを岸へ引き込んでくれる。

 2匹のときは作業場が狭いんで大変だけど、1匹切り分けるのに3ハワーくらいかかるよ。

 だから1日2、3匹のペースで10日も狩るとかなり少なくなったかなー?


 ジャスパーが少なくなると次は大タコだよー。海底近くを風を纏って転移しまくる。跳んで気配探索を繰り返すと岩場で1匹見つけた。

 1トンどころじゃないねー、とても抱えて跳べる重さじゃないよ、どーしよっか?ちょっと持ち上げてみよー。

 いろいろやってみるしかない。


 ありゃりゃ。急に体が持ち上がるんで、びっくりしたのか岩に足をくっつけてしがみついてるよ。あたいと力比べしようってのかいー?

 一番太い足の根元に集中して持ち上げると、割とあっさりそこから足が千切れちゃった。

 足先に向かってゆっくりと力が抜けて行って、慌てたタコが自分の足を取り戻そうと触手を伸ばす。


 あたいはその足をヒョイっと吊り上げた。

 大タコがそれを追いかけ岩場を離れる。あたいは回りの海水ごと海の上、空中まで大タコを持ち上げてやった。

 上げるだけなら300トンでも行けるからねー。


 海水だけどんどん落として行くと、だらんと力なくぶら下がるタコだけど、上げてみたら3トン超えてるからこのままはとても跳べない。もっと水を抜いてみようか?


 頭から順にぎゅっと掴むように絞って行って、下まで行くと1トンくらい水が落ちた。でもタコは途中で死んじゃったよ。いーんだけどね。

 あと2回ぎゅうぎゅう絞ってやると足が噴き出た墨で黒くなったし、潰れた内臓でデロデロでエグいことになったけど、なんとか抱えて跳べそう?

 ザバザバと海の中で上下させて、もう一回絞るとあたいはタイタロス支店に大タコを抱えて跳んだ。


 デロンと作業場に横たわる大タコに、島民達の反応はどうやって茹でるかだった。こいつらジャスパー26匹で感覚が麻痺してるねー。

 でっかい鍋が要ると言う。そう言えばアリスが岩をくり抜いて、お風呂のおっきいのを作ってたねー。


「ここの風呂場じゃダメなのかいー?」

「塩水はどうします?それを沸かすのは?」

「海水でよければあたいが運ぶよー。沸かすのは焼いた石を放り込んだらー?」

「ああ。それしかないか。風呂場の掃除は大変なことになりそうだ」


 ぼやいてる割にみんな動きは早い。タコが待ちくたびれちゃうからねー。あたいが海水とタコを湯船に放り込む横で、大きな焚き火がいくつも作られ石が焼かれて行く。

 風呂場のすぐそばで焚き火もできないしこれは大変そーか?

 あたいはライカースの祠に行ってアカメを連れて来ることにした。

 

「アカメー。あたしとタイタロスに行ってタコ茹でてー」

「ミットか。ミットの跳びようはアカメにここち良い。どこへで連れてゆけ」


 アカメはあたいと跳ぶと言うだけであっさり了承した。洗い場に転がると、真っ赤な目で浴槽の海水を半メニほど睨む。いきなりブクブクと煮立ち始め、濛々(もうもう)と湯気が立ち登る。

 シロルから茹で時間は聞いている。熱湯で20メニ、シートで包んで40メニくらいだそうだ。余熱で調理しないとどんどん固くなるらしい。

 歯応えがあっていいんだけどねー。


 大タコは岩場だけじゃなく砂地にも隠れてたりするし、あたい達が観光道路兼用で立てた囲い杭のところもいい餌場らしい。範囲が広いのでなかなか探すのが大変だった。

 それでも1日に1頭くらいは見つけて、たまにジャスパーもいて面白かったよー。


 トリスタンから買付けトラクが直接支店に毎日来てくれるから、冷蔵庫が片付いていいねー。


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