5 休暇・・・アリス
これまで:住民の生活環境向上を名目に温泉施設を立ち上げたアリスは、河岸通り沿いに配管を伸ばしリカルドの家まで温泉を引いた。仕事が終わるとのぼせそうになるまで温泉を堪能する二人だった。
*性的描写があります。不快に思われる方はご遠慮ください。
次は真面目にお仕事しないとね。この何にもない街に住民を呼ばなくっちゃいけない。乗り場があるから、放っといてもいずれ増えるだろうけど、それじゃあまずいんだよ。
近隣の村や町にはシルバ隊の4台が道を伸ばして行ってるから、ここにドーンと一つ旗を立てないとね。それには商会の支店だよ。
ここの乗り場は降りると通路の突き当たりが川で道が左右に分かれる。
ケルヤークの開拓は右に行って山二つ先の平原で耕作していた。その平原から流れてくる川はこの乗り場の前を左へ行った山二つ分、それが大きな川に合流してたんだけど、その二つ目の山は今、台地になって街になろうとしている。
この乗り場は街からちょいと遠いんだ。山間の土地なんで広い道も作れない。でも荷の積み下ろしにバックヤードは欲しい。とうなるとどうやら、もう一つ大きな工事をしなきゃいけないようなんだ。
シルバを呼んで乗り場正面の開発計画やってもらおう。
「これが付近の地形図ですが、今のままですと6メル幅の道路一本が精一杯です。山裾を削って広げると言っても限度がありますし、とても店舗や倉庫、待機場等の付帯施設を配置するのは無理です。こう言う場合の常套は川の暗渠化、高架道路といった手法ですが、いずれも先行投資が大きくなります。この乗り場はすでに街の土地造成をやっていますので、本店の決裁を頂かないと難しいかと」
「アンキョカってなーに?」
「はい、今ある川に蓋をする事です。洪水対策に十分な流量断面を確保する必要がありますが土地を広くすることができます」
「あー。ただ蓋をしたら溢れた時に大変かー」
「それでコウカって?」
「橋の上に道路を作ります。ここですと山の中腹あたりに橋を架けると言ったことになろうかと」
「ふうん?下が川じゃなくても橋っていうのかー」
「使いやすいのはアンキョカの方だよね。平地が増えるんでしょ?それで計画してみて。ガルツさんには話は通しとくから」
「かしこまりました」
「そっかー。倉庫とか道路はないとねー」
「先にある程度のものがないといくら街だけ作っても動き出せないからね」
「ガルツさん。今いいかな?」
『おう、いいぞ。なんだか苦労してるようじゃないか?どんな塩梅だ?』
「報告にあげた通り街の土地は確保できたよ。それで改めて乗り場の出入りを考えたんだけど、こっちも土地がなくてね。どうしようかって。川に蓋して土地を広くする案が出たところだよ」
『そうか。今の道はどうなってる?』
「今は4メルしかないよ。広げるにはもう一月かかるかな。でも8メルは無理っぽいね」
『ぬう。移民を送り出すのも厳しいな。当分は近隣から人を集めるほかあるまい』
「そっちはシルバ隊が4台動き出したとこだよ。道路班の空きはあるかな?川に蓋するって結構な荒事になるからシルバ隊を呼び戻したいんだ」
『シルバ隊なら確かニーラルがそろそろ空いてくる筈だ。シルバが言ってなかったか?』
「ニーラル?ミット。なんか言ってたっけ?」
「なんかトラブルがあったようなことは言ってたねー。タイタロスの囲いはどうなったー?そろそろじゃないかってあたい、楽しみにしてたんだけどー」
『ああ、タイタロスはあと7、8日って言ってたな』
「じゃあもう少し待てば始められるね」
『ああ、すまんな。役に立てなくて』
「そんなことないよ」
『ところでアリスちゃん』
「えっ、エスクリーノさん?」
『そうよー。エスクリーノよ、ちょーっと聞いたんだけど、いい男捕まえたって?紹介しなさいよ?』
『なんだ?それ本当か?』
「いや、ちょっと待って。ミットー?」
「あたいじゃないよー。もしかしたらジーナのとこから漏れたかなー?」
「やっぱりあんたじゃないの。えーっと、リカルドって言って田舎の村の農家の3男だよ。今の新しい街の唯一の住人」
『ほう』
『で、どうなの?いい男?』
「あたいの見立てじゃ、あのレベルはなかなかいないよー。真面目だしー。ただねー、畑にしか興味ない感じー?」
「ちょっと、ミットってば!」
「あー。18歳。アリスの2個下ー」
『おおっ!』
『アリスちゃん、やるぅー』
「もうっ!!切るよ!!」
あーもう!話がちっとも進まなかった。
「アリスー。シルバ隊来ないんなら2日3日、休みにしよーよー。ここんとこ休んでないしー。あたいも西の海でのんびりして来るよー。そしたら次はタイタロスかなー?ジャスパー、トリホーダイ!たっのっしみー!」
「好きにしてっ!」
でもそうかー。お休みかー。ちょっとかっこいい服、縫ってあげようかなー。ネドルのレストランなんかいいよね、一緒に行って来ようか。
「シルバはどうするの?計画は大丈夫?」
「アリスさま、ご心配なく。各班長と連絡をとっていますので今も解析は進行中です。私はミットさまに同行いたしますが問題なく進行させます」
「あんたも大変だね。じゃあシロル。農場に戻ろう」
「はい、アリスさま」
・ ・ ・
午後も遅い時間に農場に着いた。リカルドはトラクが早めに戻ったことに気付いて手を振ってくれたけれど、作業はそのまま続けていた。
あたしは家に入ると寝室に行ってワンピースと裁縫セットを引っ張り出した。
シルバに着せた執事服。あれもかっちりしていいんだけど、ちょっと崩した感じじゃないとリカルドには似合わないね。黒も良いけど深い青はどうだろ。帽子も被せてみたいね、どんなのが良いかな。そうだ、靴!
濃い茶色のピッカピカ?白のツヤツヤ?
両方作って選ばせよっか。
「ただいまー。早かったんだな」
「あ、おかえり。着替え出してあるよ」
「ああ。腹減ったぞ」
「そう。ちゃんと洗っといでよ」
台所へ行くとシロルはもう準備万端。リカルドの登場を待つばかりと言った風情だね。
あたしは一旦寝室に戻って描いたラフ画を持って来た。
「シロル。あさって辺り、ネドルの海底レストランにリカルドと行こうと思うんだ。
で、リカルドに着せる服なんだけど、深みのある青でこんな感じに崩して着せようと思うんだ。でもこの襟元が寂しいんだよね。なんか無いかな?」
「まあ、良いデザインですわ。リカルドさまでしたら今お育てになっているクズリマメの花を一輪なんていかがですか?
もちろんそのままではなく、少しアレンジしてバランスを取りまして。そうですね、このような感じでは?」
「虫の殻とかで作るの?」
殻は虫を狩った時に外被を採取して円筒に纏めたのがまだあったはず。
「そうですね。あれは発色がよろしいですから」
「ふうん。襟飾りかー」
シロルとそんな相談をしていると着替えてリカルドが入って来る。
あたしがふわっとしたワンピースを着ているので、じっと見てる。
「アリス?へえ。豪華だね」
「あら、リカルドさま。そういう時は綺麗だとおっしゃって下さいませ」
「あ、ああ。アリスさんは綺麗です」
「うふふ。さあ皆さま、召し上がれ」
リカルドがあたしをチラチラ見てくるのがなんか嬉しい夕食だった。
「明日から3日、休みになったよ。農場の方はどうなの?一緒に休める?」
「明日?どうしてもやんなきゃいけないのは水やりくらいだな。朝晩2回だから長く留守はできないぞ?」
「それ、クロミケに頼んだら良いよ。マノボードで指示も出せるし。あいつら器用だから大概のことはできるよ?」
「クロミケ……あのでっかいのがか?」
「明日の仕事はやってもらったら?それをボードで見てるの。家にいるんだから自分で見に行っても良いし」
「うーん」
あたしを見てどっちが素敵かって考えてる?
「分かったよ。明日は休みにする。そのあとはその結果で決める」
「やったー。お休みだー。かんぱーい」
「お、乾杯ー」
「では、アリスさま。お休みなさいませ」
シロルが片付けをすませて出てっちゃった。考えてみたら玄関先にクロミケを乗せた、シロル管制のトラクだよ?どっかの軍が攻めてきたって、殲滅できるような戦力が庭先にいるってどうよ?
まあ、そんなのは来ないから考えるだけ無駄なんだけど。そんなこと考えるあたし、酔っ払ってるー?
「ねー、あたし酔ったー?」
「うん。可愛いよ?」
「あんたも酔ってるねー。そんなこと言うなんて、絶対酔ってるー」
「そうか?赤い顔が可愛いぞ?」
うわー、コイツマジで言ってんのかー。あたしの顔に火が点くぞ?えーい!
「リカルドもカッコいいよ?この顎のとことか」
よーし、逆襲成功ー。真っ赤にしてやった!
酔った勢いでおちゃらけてたらガバッと抱き締められた。それが可愛くて左で抱き返し、右手で頭を撫でる。酔った頭で考えたのはそこまでだった。
・ ・ ・
カーテンの隙間から日の光が忍び込んでくる。ベッドの隣にはおっきくてあったかい生き物が、微かないびきをたて眠っていた。コイツの名前はリカルド。
顔を見ると髭が少し伸びてきてる。このザラザラはあんまり好きじゃ無い。でも時々チクリと刺激をくれる髭、あんまり嫌いじゃない。
仰向けに寝てる右腕に頭を乗せて、寄り添ってみる。大きな胸の筋肉が上下するのが見たくて肩の上に頭を乗せた。あたしは右足を大きな腿の上に乗せて脚を絡めると、大好きな胸の筋肉を端から端まで右手でなぞって行く。よく寝てるねー。
上掛け一枚で2人とも何も着てないのはもう分かっている。
腰の上に座って揺られながら、胸の大きい筋肉や腹筋の溝を指でなぞったのは楽しかった。そんなことを思い出して顔に火が点いた。
リカルドさん、少しいたずらしていいでしょうか?あたし、昨夜のことはあまり覚えてないんで、なんだかとっても損した気がするの。だから今ちょっといたずらしたい気分なんだよ?
あたしは上掛けの中に頭から潜り込んで、リカルドの3番目に好きなところを優しく撫でた。リカルドは呻き声を出して反応してくれた。もう一度、今度はちょっと強めに、大好きだよってチュっとしてあげる。腿の筋肉がビクッと震えた。
この太い筋肉さん、君は4番目。腿の筋肉も撫でながらあたしの攻撃は続く。カチコチになった肉の波を下から上へ撫で上げた。指先を這わせて愉しんでいるとリカルドが目覚めた。あたしの両足を右の片手で、じっくりゆっくり何度も撫でてくる。頭の奥で小さな火花が何度か爆ぜた。どこかへ飛んで行ってしまいそうで、あたしは必死にリカルドにしがみ付いた。あたしが降参すると持ち上げられて、キス責めにされて……あたしたちはぐったりと2度寝。
日がすっかり高くなって、お腹が空いて目が覚めるまでそのままだった。
あたしはリカルドのシャツを一枚羽織って台所へ。簡単調理できるものを探して冷蔵庫を漁るとさっすがシロル。鍋でちょっと蒸すだけの作り置きがいくつか。スープの小鍋もあっためて、遅い朝食だ。
お互いの顔を頬杖ついて見ながらの食事は楽しかった。
軽く片付けてお風呂。昨夜と朝の汗を流しっこ。でもそれだけではすまなくて、あたしもリカルドものぼせるとこだった。ベッドの上で風にあたりながら一眠りした。午後遅くシロルに起こされた。
『夕飯はしっかり食べてください』だって。
それでリカルドの服の縫いかけを思い出して続きを始めた。起き出したリカルドはボードでクロミケの活躍を見て我慢できずに畑に行った。




