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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第15章 人のいない駅‬
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4 温泉・・・アリス

 これまで:アリスがリカルドの寝相に絡め取られ朝を迎えた。畑の土の入れ替えは無事終わらせた後、アリスは野良着の綻びを見ると言って寝室に押しかけた。


*性的描写があります。不快に思われる方はご遠慮ください。

 リカルドに約束しちゃったしね。手順から行くと支店が先なんだろうけど、唯一の住民を(ないがし)ろにするのもおかしい。て言うかあたしが一緒に入りたい。

 おっと。本音が漏れると顔に火が点いちゃうよ。ふう。暑い暑い。


 まずは共同浴場。規模はそうだなー、湯船に15人くらいか?そうすると湯船は10メルの3メル半ってとこ。洗い場は半分の7つ、脱衣所はコインロッカ付きで多目に40人。トイレを付けても10メル角あれば充分。

 それが男女で倍、集会所も付けとこうか?そっちは2階でいいや。奥行き10メル、幅20メルの2階建、右側に階段があって2階が集会所っと。

 敷地は奥行き30メルに幅50メル取っておこう。河岸(かがん)通り沿いに温泉と給水配管を農家まで2ケラル引いて行くから、湯温は高い方が良いね。


 場所は畑作地の町寄り。町のこっち側の人も使いやすいように考えた結果だ。

 いつものように地面から建物を持ち上げて行く。外観は一見青い煉瓦積みにやっぱり青い寄棟(よせむね)の屋根。うーん。下流側は別の色にしよう。

 さて中央の玄関スペースで温泉探索開始だ。利用客なんてまだ誰もいないんだから、リカルドの家まで引くのが一番の目的だし。20メルで飲用水か、軟水で使いいいけどこれって川の水の浸透っぽいね。汲み上げが必要だし保留ー。

 さらに深く下げて行くと、320メルで硬水が出た。飲めないほどじゃないけど沸かした方が風味はいいかな?

 さあ次は温泉探索だ。1000より下だと思うんだけど。


 むう。当たらないね。もう2000メルだよ?おっと2300でヒット。塩泉だけど湯温は低いね、保留ー。ここ深いなー。

 3100で良さげなのがやっと出た。120デグリの炭酸泉。これ肌でパチパチはぜて気持ちいいんだ。

 こうなると全部使いたい。温度の低いやつは今のところ端っこでは使えないけど、水とお湯をそれぞれ束にして保温のハッポーを巻いて引いて行こう。


 5軒の洗い場に分岐を引き入れながらパイプを引いて行く。30メニも歩くと6軒目、リカルドの家が見えて来た。洗い場に4本の管を立ち上げそれぞれバルブを付ける。ここまでで地下配管は終了。


 戻るのは面倒だなー。そうだ。ミットに頼んじゃおう。

「ミットー。ちょっといーかなー?」

『なーに、アリスー。ちょっと疲れてないー?あんたちゃんと寝てるー?』

「いや、共同浴場作ったんだけどさー。リカルドの家まで30メニ歩いて配管引いたとこー。でねー。玄関のバルブ、開けてくんないかなー?」


 言い終わった途端に玄関にミット。

「さっさと行くよー」


 まあそうなるか。


「道沿いに2ケラル。青い建物だよ」


 パタパタッと景色が変わって共同浴場の玄関前。バルブを一つずつそーっと開けて行く。全部がシューシュー言わなくなるまで待機だ。5メニ程で音が止まったので全部全開にした。


「終わったー?じゃ戻るよー」

 リカルドの家の玄関前。


「あたいもリカルドみたいな真面目な奴にしとけば良かったよー。なんであんなふざけた奴にやらせたかなー?」


 あたしが返事できずにいるうちにミットはパッと消えてしまった。そっかー。そうだよね。できることはいろいろしてあげたいよね。

 でもまあ今更だ。ナックが独立してから次のいい男を捕まえたっていいんだし。


 あたしは洗い場の整備が先だよ。もともと広めにとってある洗い場だから、浴槽は幅1メル80セロ奥行き1メル20セロ、詰めれば4人、家族で入ってもゆったりって感じ、シャワーセットと脱衣所はちょっと狭いかな。当面使えるのは炭酸泉と硬水だけ。でもまあいい出来だ。ミットのおかげでお風呂が昼前にできちゃった。


 そーだ。お昼ご飯を作ってみよう。あんまり自信はないけど、シロルが作ってるとこはいくらも見てるから、そう無様(ぶざま)なことにもならないはず。



 いやー。見てるのと作るのってこんなに違うんだー。びっくりだよ。リカルドが帰って来てあたしが作るとこ見て、ちょっと顔(しか)めてたね。

 主婦する気はないけどやるんなら修行が要るね。できた料理はまあ美味しかった。リカルドも「あれ?普通だ?」みたいな反応だったし。


「いや、アリスさん。俺のお袋と比べたらアリスさんの料理は100倍美味しかった。シロルさんと比べるのは間違いだよ、ごめんなさい」


 おっとと?あたしで100倍ってどんなもの食って育ったんだ、コイツ。逆に心配になるぞ?

 それを顔に出してもしょうがない。ここはにっこり笑っておこう。お姉さんを演じるのも大変だ。


 お昼の後はせっかくなので、お風呂場のお披露目をしたよ。まだお湯張りだけで相当あっついからね、目を丸くして驚いてたよ。今すぐ浸かってみたいって顔に書いてあった。リカルドは肩を落として畑に行った。


「お仕事、頑張ってねー」

 と声をかけたら途端にしゃっきりして駆けて行った。案外単純?


 夕方はシロルに拾ってもらう事にして共同浴場までお散歩だ。続きをいくらかでもやってしまおう。まずは玄関に蓋をしないとね。配管は風呂場まで伸ばしてあるから、脱衣所の床も塞いでしまう。

 さあお楽しみの浴槽だ。2つに分けて塩泉4メル炭酸泉6メルで行ってみようか。男湯は無骨に四角いお風呂。手間がなくていいね。

 女湯の方は遊んじゃう。塩泉は手前がまあるい馬蹄型。炭酸泉は丸が2つ繋がった感じのメガネ型にしてみたけど、どうだろ?メガネのくびれはもっと幅を取らないと使いにくそう。

 ちょっと修正しまーす。


 夕方近く、シロルがトラクで寄ってくれた。クロミケに頼んで木質(セルロース)を20本下ろしてもらう。明日家具や内装に使う材料だ。


「アリスさま、今日のお昼はどうされたのですか?」

「リカルドのうちであたしが作って食べたよ?シロルと比べられたからね。ちょっと落ち込んでるよ」

「まあ!それは申し訳ありませんでした。ですがあたくしはどうすればいいのでしょうか……」


 ミットがニヤニヤ笑いで割り込んだ。


「アリスがシロルと同じくらい料理上手になればいいんだよー。明日から特訓だねー」

「まあ!そうですの?」

「んなわけあるかい!」

 思わずあたしは突っ込んだよ。


 リカルドはあたしがお風呂の準備を始めるとすぐに戻って来た。どうせなのでシャワーの使い方を教えて居間に戻る。まだ湯の温度が安定していないけど急に変わるものでもないから大丈夫だろう。


 ナックが行儀良くテーブルに着いて待つ中、ミットが転移でトラクから鍋や皿を次々と持ってくる。シロルがそれを手早く配り盛り付けて行く。その手並みはいつ見ても鮮やかと言うほかない。


 リカルドが着替えて居間に入ってきた。やっぱりシロルの料理だと食い付きが違う。ミットが面白がった飲ませるもんだから食欲も倍増みたいで、どんどん食べちゃう。大丈夫かな?


「ミット。その辺にしときなよ?」

「おっと。分かったよー」


 あれ?ずいぶん素直だね。


「で、畑の方はどうなの?」

「ああ、ミットさんが入れ替えてくれたとこはまだ結果は出てないよ。豆の収穫まであと3月(みつき)、まだまだ先さ。下流側に違うものを()きたいんだけどなんか無いかな?」

「種でしたら色々ありますよ?ここの気候に合うか分かりませんが。どんなものをお考えですか?」

「生でも食べられる葉物がいいと思うんだ。あるかな?」

「そうですね。15種類ほどありますから1列ずつ蒔いてみますか?」

「そんなにあるんですか?」

「まあねー。あたいらはこー見えて、結構広く世界を回ってるからねー」

「よろしければ、明日の朝までに用意しておきます」

「シロルさん、よろしくおねがいします」


「さーて。長居すると怒られそーだから引き揚げよー」

「ちょっと!」

「あはははー。まった明日ー」

 ミットがナックをつれてさっさと消えた。

 シロルとシルバも片付けものだけは終わらせて、戻って行った。


 見送りして居間に戻るとリカルドが下を向いて何やらモジモジしている。


「どうしたの?」

「あ、いや……」

「そう?あたしはお風呂のお湯を見てくるね」

「あ、俺も行く」

「そう?いいよ、行きましょ」


 あたしが先に立って風呂場に行って湯船に手を入れた。ちょっと温いかな?水を絞ってみるか。


「どう?入れそうかな?」

「ちょっと温いけど、それでよければ入れるよ」

「そうか。じゃあ、入るよ」


 あたしが風呂場から出ようとすると、リカルドが脱衣所で抱き付いて来た。


「一緒に……」


 あたしは黙って(うなず)いた。

 リカルドがあたしの服に手をかけ脱がそうとする。脱がせやすいように手を貸しながら、あたしもリカルドのシャツのボタンを外して行った。上半身はすっかり脱ぎ終わり、あたしはリカルドのズボンに手を掛けた。だってあんまり窮屈そうなんだもの。

 上からボタンを外して行くとリカルドが腰を引くので、目を睨んでやった。ビクッとおとなしくなったところを楽しく外して行く。元気だねえ。靴下を脱がし、下着も引き抜いた。

 リカルドもお返しとばかりに、あたしのキュロットを引き下げる。


「ちょっと。ボタン外しなさいよ」


 太い指で小さなボタンを外す様子が可愛い!

 一番下まで律儀に外して行くリカルドを見ているのは楽しい。次はタイツ、これは一気に引き下げた。太い指に下着が絡まって引き()れる。破かれそうになるのを手を押さえて止めると

「もう1枚あるんだから。焦らないの。ね?」


 首まで真っ赤になって恐る恐る下げ始めた。

 タイツをカゴに放ると最後の下着をゆっくりと下げて行く。ゴクリと唾を飲む音が聞こえた。

 もう!なんて可愛いの!


 脱がせ終わると脇に腕を入れ膝下を抱え、あたしを抱き上げた。馬鹿ね、両手が塞がってお風呂場の戸が開けられないでしょ?あたしが左手で戸を開けると洗い場にそのまま踏み込んだ。

 あたしをぶつけないように慎重に向きを変える。あたしが戸を閉めると、そのまま湯船の縁に腰を下ろす。

 お尻に固い感触が当たって痛いくらいだ。リカルドも一緒だったらしく、あたしごと浮かせて当たりを変えた。左腕を膝下から抜いてそのまま抱き竦められる。それはもう腕の中にすっぽりと。


「湯船に浸かる前にはよく洗うのよ。あたしが洗ってあげるから降ろして」


 膝から降りると桶に湯を掬って、タオルを浸し石鹸を泡立てる。もう、たっぷりと泡を作った。椅子を出して洗い場に座らせると、後ろに回り首から背中をよく泡を(まぶ)して擦って行く。タオルで擦り、掌で擦り、肌の感触を愉しみながら。

 手を前へ回して顎から首、胸の大きな筋肉をなぞって太い腕、掌もじっくりと洗う。お腹は窮屈だけど、後ろから上体を押し付けるようにして洗うと、立ち上がってもらった。

 今度は足首から上へ。動くと足の筋肉が躍動するのでワザと押したり引いたりしながら、触りまくる。

 もうずっとこうしていたいくらい!


 椅子を左にずらし片足を上げてもらった。期待と恥ずかしさの混じった顔が可愛いい!

 お尻の筋肉に頬擦りするようにして、太い左腿を擦って行く、そのままお腹まで一気に洗う。


 両手のひらで包み込むように優しく洗うと息を呑む反応。あたしは嬉しくなって2回3回と洗ってあげる。そのまま体の裏側へ優しく手を進めて行った。これで下は全部?椅子に座らせ、残っていた足首から下を、片膝立ちになったあたしの腿に載せ、念入りに擦ってあげた。もう一方も。

 最後のお楽しみは首から上。後ろに回ると頭に軽くお湯をかけ髪で石鹸を泡立てる。


「目を開けるとしみて痛いですよー」


 一頻り頭皮を隅から隅まで指の腹でわしゃわしゃやってそのまま顔。目の周り、口の周りは外へ逃すように何度も擦る。耳も窪みが沢山あってなぞるのが楽しかった。

 ほんとにこれでもう最後。名残惜しむように桶に汲んだお湯をかけながら掌で擦って行く。もう一度(さわ)れるのがこんなに嬉しいなんて思わなかった。



 仕返しとばかりにリカルドの攻撃のターンだ。自分の攻撃の跳ね返りを受けて興奮状態のあたしはあっさり翻弄され、もう何が何だか分からないうちに洗い流され、湯船に抱き沈められてしまった。

 湯船の中でもリカルドの攻撃は続く。のぼせてしまいそうになって降参すると、脱衣所でタオルを使って丁寧に拭いてくれる。

 壁にあたしを持たせかけて自分も手早く水気を拭き取ると、あたしをベッドへ運んでくれた。


 灯りを消したベッドで、あたしは心地いい腕枕の眠りが訪れるまで、何度も小さな永遠を味わった。


   ・   ・   ・


 マノさんが音楽を流している。昨夜これは起きられそうもないと悟った時に頼んでおいた。もっとやかましいものを聞かされると思っていたあたしには、穏やかな目覚めの曲がありがたい。


 目を開けるとリカルドはまだ寝ている。頭に手をやると、髪がすごい事になっているのがわかる。洗いっぱなしでろくに手入れしなかったせいだ。こいつのせいだと言えないところが嬉しいところ。

 洗面所へ行って湿らせ何度か櫛を通すと、だんだんと収まって行く。持って来ておいた下着と着替えを着てベッドに腰掛け、リカルドの寝顔を自分の緩み切った頬を押さえながら見つめる。


 あたしはリカルドのおでこにチュッとやってお散歩に出かけた。

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